[PA74] 児童における他者のポジティブ感情への共感性と主観的幸福感の関連
学級雰囲気と学級内外の他者との交流を考慮して
Keywords:共感性, 主観的幸福感, 学級雰囲気
目 的
共感性は,青少年の主観的幸福感を高める要因として注目されており,これまで多くの研究が行われてきた。近年,共感性の「感情的側面」のうち「感情の方向性(ポジティブかネガティブか)」を考慮した研究が,葉山ら(2008)や村上ら(2014)を中心に行われている。中でも,他者のポジティブな感情への共感性についてはこれまで十分に扱われておらず,また櫻井ら(2011)の研究では,ポジティブな感情への共感性のみにしか見られない対人関係への影響が存在することも示されている。これらの知見から,児童の健康や適応を高める要素として,他者のポジティブ感情への共感性を取りあげる必要があると考えられる。さらに,登張(2008)や菊池(2016)の研究では,共感の対象を区別する試みが行われており,対象との関係性によって共感の生起頻度が異なることが示唆されている。そのため,共感の対象を身近な他者(友だち)と見知らぬ他者に区別することで,健康・適応への影響の差異を明らかにすることができると考えられる。また,倉住ら(2011)の研究においては,学級内で友人や教師から承認されることにより共感性が高まる可能性も示唆されている。そのため,このような学級雰囲気への留意も重要である。
そこで本研究では,共感性に影響する要因として「認め合い」の学級雰囲気(三島ら,2004)を取りあげ,「認め合い」の高低による共感性および主観的幸福感の差を検討する。さらに,「認め合い」の高低に加え,共感対象の違いを考慮した上で,共感性から主観的幸福感への影響を検討する。
方 法
調査対象 小学校(4校)の4~6年生775名(男児367名,女児408名)を対象に実施した。欠損値を除外し,有効回答は744名(男児348名,女児396名)であった。
調査時期 2018年2月に実施された。
調査内容 以下の4つの尺度および項目を用いた。(a)主観的幸福感の認知的側面として「生活満足度」に着目し,The Satisfaction With Life Scale(Diener et al., 1985)を用いて測定した。日本語に訳され,児童にとって分かりやすい表現に改められたものを用いた(5項目5件法)。(b)主観的幸福感の感情的側面として「正感情」と「負感情」を取りあげ,日本語版児童用正負感情尺度(Yamasaki et al., 2006)を用いて測定した(24項目5件法)。(c)認め合いの学級雰囲気を測定するため,学級雰囲気尺度(三島ら, 2004)のうち「認め合い」に関する項目を用いた(6項目4件法)。(d)ポジティブ感情への共感性を測定するため,ビニエット法を用いた測定法を開発した。「友だちに対する共感性」と「見知らぬ人に対する共感性」について,各3場面それぞれ4項目5件法で回答を求めた。
結果と考察
学級雰囲気「認め合い」高低群の違いによって各変数の平均得点に差があるかどうかを検証するため,各変数を従属変数,認め合い高低群×性(男女)を独立変数においた2要因の分散分析を行った。結果,生活満足度(F(1 / 740) = 8.45, p < .01)などで群の主効果が有意となり,「認め合い」高群の得点が高かった(Table1)。また,共感性の各要素(認知,エンパシー,シンパシー,行動)が児童の主観的幸福感におよぼす影響について検討するため,主観的幸福感に関する変数(生活満足度,正感情,負感情)を従属変数,共感性の各要素を説明変数とし,認め合い高低群および男女別の4群に分け重回帰分析を行った。結果,認め合い高低群の男女とも,「友だちに対する共感性」の方が,共感の各要素が主観的幸福感を高める傾向にあった。また,認め合い高群ほど上記の傾向が強いことが分かった。
共感性は,青少年の主観的幸福感を高める要因として注目されており,これまで多くの研究が行われてきた。近年,共感性の「感情的側面」のうち「感情の方向性(ポジティブかネガティブか)」を考慮した研究が,葉山ら(2008)や村上ら(2014)を中心に行われている。中でも,他者のポジティブな感情への共感性についてはこれまで十分に扱われておらず,また櫻井ら(2011)の研究では,ポジティブな感情への共感性のみにしか見られない対人関係への影響が存在することも示されている。これらの知見から,児童の健康や適応を高める要素として,他者のポジティブ感情への共感性を取りあげる必要があると考えられる。さらに,登張(2008)や菊池(2016)の研究では,共感の対象を区別する試みが行われており,対象との関係性によって共感の生起頻度が異なることが示唆されている。そのため,共感の対象を身近な他者(友だち)と見知らぬ他者に区別することで,健康・適応への影響の差異を明らかにすることができると考えられる。また,倉住ら(2011)の研究においては,学級内で友人や教師から承認されることにより共感性が高まる可能性も示唆されている。そのため,このような学級雰囲気への留意も重要である。
そこで本研究では,共感性に影響する要因として「認め合い」の学級雰囲気(三島ら,2004)を取りあげ,「認め合い」の高低による共感性および主観的幸福感の差を検討する。さらに,「認め合い」の高低に加え,共感対象の違いを考慮した上で,共感性から主観的幸福感への影響を検討する。
方 法
調査対象 小学校(4校)の4~6年生775名(男児367名,女児408名)を対象に実施した。欠損値を除外し,有効回答は744名(男児348名,女児396名)であった。
調査時期 2018年2月に実施された。
調査内容 以下の4つの尺度および項目を用いた。(a)主観的幸福感の認知的側面として「生活満足度」に着目し,The Satisfaction With Life Scale(Diener et al., 1985)を用いて測定した。日本語に訳され,児童にとって分かりやすい表現に改められたものを用いた(5項目5件法)。(b)主観的幸福感の感情的側面として「正感情」と「負感情」を取りあげ,日本語版児童用正負感情尺度(Yamasaki et al., 2006)を用いて測定した(24項目5件法)。(c)認め合いの学級雰囲気を測定するため,学級雰囲気尺度(三島ら, 2004)のうち「認め合い」に関する項目を用いた(6項目4件法)。(d)ポジティブ感情への共感性を測定するため,ビニエット法を用いた測定法を開発した。「友だちに対する共感性」と「見知らぬ人に対する共感性」について,各3場面それぞれ4項目5件法で回答を求めた。
結果と考察
学級雰囲気「認め合い」高低群の違いによって各変数の平均得点に差があるかどうかを検証するため,各変数を従属変数,認め合い高低群×性(男女)を独立変数においた2要因の分散分析を行った。結果,生活満足度(F(1 / 740) = 8.45, p < .01)などで群の主効果が有意となり,「認め合い」高群の得点が高かった(Table1)。また,共感性の各要素(認知,エンパシー,シンパシー,行動)が児童の主観的幸福感におよぼす影響について検討するため,主観的幸福感に関する変数(生活満足度,正感情,負感情)を従属変数,共感性の各要素を説明変数とし,認め合い高低群および男女別の4群に分け重回帰分析を行った。結果,認め合い高低群の男女とも,「友だちに対する共感性」の方が,共感の各要素が主観的幸福感を高める傾向にあった。また,認め合い高群ほど上記の傾向が強いことが分かった。