The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB08] 習い事場面における子どもの動機づけの過程

TEM分析による検討

油川さゆり (慶應義塾大学)

Keywords:習い事, 動機づけ, TEM

研究の背景・目的
 動機づけ(モチベーション)は「行動の生起,維持,方向づけの過程」であり(鹿毛,2013),動機づけは何らかの行動を起こす根源となるため,あらゆる場面,分野で研究が進められている。
 本研究では,習い事に焦点を当てる。習い事を続けることによりポジティブな影響が得られることは明らかになっているものの(Simoncini & Caltabiono,2012他),習い事の過程において,どのような要素や取組が子どもを動機づけているのかについて明らかになっていない。そこで本研究では,習い事の先生を対象にインタビュー調査を行い,習い事を始めてから終えるまでの過程で,先生が子どもをどのように動機づけているのかを明らかにした上で,子どもの動機づけに変化を与えるターニングポイントを明らかにする。

方  法
対象:習い事(ピアノ・たいこ・英会話・学習塾)の先生4名。全員女性,30代~50代。指導歴は11~24年である。
調査内容:調査時期は,平成29年5~6月。半構造化面接(インタビュー調査)を行った。習い事の先生に,それぞれ2~3人ずつ,幼児,小学生から習い事を始めすでにやめた(定期的に通えなくなった)生徒の中で,動機づけに変化があった子どもを具体的に思い浮かべてもらった後,動機づけの変化の過程,習い事をやめた理由について尋ねた。最終的に,計10名分のデータが得られた。
 分析には,時間を捨象しないTrajectory Equifinality Modeling(複線経路等至性モデリング,以下TEM)を用いた。

結果・考察
 生徒が習い事を始めてからやめるまでの過程は,Figure 1のように区分できた。
 開始期,適応期は比較的安定して活動に取り組むものの,なれあい期に入ると,一部集中力がなくなる生徒も見られる。そこで,向安定期において,先生は動機づけを高めるために生徒に発表会や検定を薦めていた。また,教室によっては発表会の時期が決まっており,そこに向けて動機づけを高める取り組みを行っていた。先生達は発表会や検定等のイベントが生徒の成長に繋がっていると感じており,イベントが動機づけを高めるターニングポイントであることが明らかになった。
 先生の様々な取り組みを経て,高い動機づけを維持できるが(安定期),習い事終了期では,受験,学校でのトラブル,家庭の経済状況等,習い事に通えなくなるような要因が発生する。そのような状況の中,動機づけの変化とは関係なく,自分の意思,あるいは親からの説得によって,最終的に習い事をやめていることが明らかになった。