The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB12] 年長児のことば遊びとひらがな単語読み能力との関連

丹治敬之1, 横山萌#2 (1.岡山大学, 2.福山市立東小学校)

Keywords:ひらがな単語読み, ことば遊び, 年長児

はじめに
 ことば遊びとひらがな読み能力との関連については,高橋(1997)が幼児を対象として,“しりとり”と音韻意識やかな文字読みの習得との間には密接な関係があることを明らかにしている。しかし,“しりとり”をはじめとすることば遊びは,ひらがな読みの初期発達との関連を調べた研究が多い。ひらがな読み中後期の発達課題である,「長音単語の表記知識」や「ひらがな単語の読みの流暢性」とことば遊びの関係を報告した先行研究は少ない。そこで,文字を使ったことば遊びである“ことばのかくれんぼゲーム”を取り上げ,ことば遊びとひらがな単語の表記知識や読みの流暢性との関連について分析することを本研究の目的とする。

方  法
参加児と研究期間
 O県内の保育園5-6歳児(平均月齢72.0カ月.範囲5歳6カ月-6歳6カ月)40名(男児19名,女児21名)を対象とした。調査は201X年10月に実施した。個室にて15分間程度で実施した。
手続き
 ことばのかくれんぼゲーム 提示される単語(刺激語)に含まれる文字(音)を自由に組み合わせて,有意味語を制限時間内にできるだけ多く見つける遊びである(国吉,2010)。2つの刺激語(①「あめりかざりがに」,②「くりすますかい」)を本試行で使用した。なお,ルールの教示(「にわとり」)と練習試行(「おやすみなさい」)の後,本試行を実施した。刺激語毎に正答を記録し,「並び替え」「部分文字列」の回答に分けて分析した。
 長音表記選択課題 垣花ら(2009)と同一の課題を用い,分析方法も同様とした。絵とともに音声提示された長音単語(例えば,/satoː/)に対応する表記を4つの選択肢から選ぶというものである(例えば,/satoː/に対し,さとう,さと,さう,さとお)。本試行の前に,基本音節語(いぬ)を用いて,1問の練習試行を行い,続けて6問の本試行を行った。反応を「長音正答」,文字数は正しいが表記誤りのある「分節回答」に分けて分析した。
 ひらがな単語速読課題 縦書きのひらがな単語を速読する課題である。春原ら(2011)と同一の単語を用いた。ひらがな2~5文字各7語,計28語からなる有意味単語のリストを使用した。稲垣(2010)の単語速読検査の実施手順と同様に行ったが,主に「音読秒数」を分析対象とした。

結  果
長音表記知識,及びことば遊びと単語速読の関連
 単語速読課題の音読秒数の中央値67秒を境に,上位群と下位群で分類した。Mann-WhitneyのU検定を実施した結果,成績上位群と下位群で,ことばのかくれんぼゲーム刺激語②における「部分文字列」(例えば,「くり」,「りす」等の回答)の正答数(p=.025, p<.05),および長音表記の分節回答の得点(p =.034, p<.05)において有意差があった。
ひらがな単語の読みの流暢性の影響因
 単語速読課題の音読秒数を従属変数とし,「月齢」,ことばのかくれんぼゲームにおける各刺激語の「並び替え」(例えば,いか,くすり等の回答)正答数,同ゲームの「部分文字列」の正答数,長音表記選択課題の「長音正答」数,「分節回答」数を独立変数として,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。その結果,「月齢」,刺激語②の「部分文字列」の正答数が有意な予測変数として抽出された(Table 1)。

考  察
 本研究の結果から,ひらがな読み中後期の発達課題のうち,単語速読と長音表記選択課題の分節回答の成績において有意な関連が認められた。また単語速読とは,かくれんぼゲームにおける「部分文字列」の成績との関連も示唆された。その背景として,かくれんぼゲームでは,音韻操作力を駆使して言葉を見つけること,有意味な文字列の固まりを見つけることが求められる点が影響している可能性がある。つまり,読みの流暢性との深い関連が認められている音韻操作能力や,語を視覚的なまとまりとして素早く認識する「視覚性語彙」力との関連が考えられる。今後は,他の音韻操作能力や視覚性語彙の課題との関連,他の刺激語,他の年齢群での詳細な調査が必要だろう。