The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB26] 教職課程履修学生の講義前後における生徒指導イメージの変容の検討

三島知剛 (岡山大学)

Keywords:生徒指導イメージ, 教職課程履修学生, 大学講義

問題と目的
 本研究の目的は,教職課程履修学生の生徒指導に関する講義前後における生徒指導イメージの変容を検討することであった。
 生徒指導力は学習指導力と車の両輪に喩えられるように,生徒指導に関する力量が教師としての重要な力量の一つであることは周知の事実である。学生は養成段階において力量形成をはかっていくが,養成段階における力量形成の主要な場として考えられるのが大学における講義である。例えば,田村・神谷(2015)は,ファシリテーションの手法を活用した授業が学生の生徒指導力を高める一つの手段としてある程度有効に作用することを示している。また,関口(2016)において,「生徒指導論」の受講生の授業前と授業後の調査によって生徒指導のイメージが変化することが自由記述の結果から明らかにされている。また,生徒指導に関連する講義の授業改善の取り組みや実践的,効果的な講義内容の検討が城戸(2017)や南場(2017)においてなされている。
 このように学生の生徒指導力やイメージの変容に大学の授業が有用である可能性と共に授業改善や充実化に対する重要性が高いことが窺えるが,先行研究では自由記述や少数の項目から成果が検討されたものが多い。複数の項目等から多面的に検討し,生徒指導イメージの変容や講義の効果について知見を蓄積していく必要が考えられる。
 そこで,本研究では複数の因子から生徒指導イメージを測定できる尺度を用い,大学の生徒指導に関する講義前後における学生の生徒指導イメージの変容を検討することとした。

方  法
(1)調査対象及び時期
 教育学部以外に所属し教職課程を履修する学生を対象に開講されている教職に関する科目のうち,生徒指導,教育相談及び進路指導等に関する科目の一つとして開講されている生徒指導に関する科目の受講生を対象に,2016年度の講義開始時の10月と終了時の2月に調査を行った。調査協力者の大学生の大半は2年生であった。
(2)調査内容
 生徒指導イメージについて,三島(2017)より「指導の難しさ」「一方的な指導」「個に応じたきめ細かな指導」など8因子からなる計33項目を用いた。回答は5件法であった。また,生徒指導イメージの変容について考察する補足データとして,講義終了時のみ,講義全体の充実度や,講義目標達成度,該当学生の大学で設定されている生徒指導力の高まり度について回答を求めた。また,講義の充実度については,全体に加え,講義内容のどの部分が充実していたのかを複数選択式で回答を求めた。115名の回答が得られた。

結果と考察
 生徒指導イメージの各因子について講義開始時と終了時の得点について対応のあるt検定を行った。その結果,「指導の難しさ」「一方的な指導」「個に応じたきめ細かな指導」「間違いを正す」「やりがい」について有意な結果が得られ(p<.01),終了時の得点が高いという結果であった。変容の見られた因子には積極的生徒指導や消極的生徒指導の両側面が含まれていると考えられることから,学生が生徒指導理解を深めていることが示唆された。一方で,生徒指導の難しさなどネガティブイメージについての高まりも同時に示唆された。全体として多くの因子の得点が高まっていること,さらには得点が下がることはないという点から,講義を通して学生の生徒指導イメージは様々に変容しうることや学生の生徒指導イメージが明確化した可能性が改めて示唆されたと考えられる。
 また,講義全体の充実度,講義目標達成度,生徒指導力の高まり度についてみると,どの項目も平均値が中央値である3以上であった。これらの結果から講義目標がある程度達成でき講義が充実していたこと,生徒指導力が高まったと学生が感じていたことが示唆された。ゆえに生徒指導イメージも様々に変容していったのであろう。また,講義内容については,「生徒理解の手法」への充実度が最も高く次いで「問題行動の理解」「問題行動の予防」であった。生徒理解の手法に充実感を感じるということは,一人一人に応じた生徒指導を行うことすなわち「個に応じたきめ細かな指導」の必要性をよりイメージさせた可能性が考えられる。このように生徒理解の手法や問題行動の理解や予防について充実感をもつ一方で,実際に生徒指導を行うことの難しさについても意識が強まったことが推察される。
 本研究により,大学の講義を通して学生の生徒指導イメージが様々に変容しうること,またイメージが明確化していくことが改めて示唆されたと言えよう。