The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB27] 小学生に求められる英語の要素

話せることに執着することへの疑問

柿原直美 (法政大学)

Keywords:小学生, 英語, 枠組み

はじめに
 小学校で英語が教科化される時期を前に,授業でどのような活動を実施するのかについての関心はさらに高まっている。ところで,授業の案を生み出す枠組みが共有されていなければ,授業は主張する人によって異なる可能性は大である。したがって,アイディアの妥当性をどのようにして示すのかが課題となる。焦点を当てなければならないのは,アイディアを生み出す枠組みであろう。そこで,ここでは枠組みを認識するために必要な要素とその関連をFigure 1で示す。そして,それが実践における考えの基礎となることを目的としたい。

発達心理学
 たとえ外国語の習得であっても,母語獲得のメカニズムを無視することはできない。当然のことながら,そのメカニズムは認知発達に依拠する。母語の習得の過程は言語にかかわらず共通であるという。耳が聞こえれば,膨大な言語に触れた後,おおむね1歳頃に初語を発する。また幼児が母語以外の言語に触れた場合も,その言語を発する前には沈黙の時期があることは知られている。語の産出には必要な時間を要する。したがって,現状では日本の小学生に英語で話すことを求めるのには疑問がある。

第2習得理論
 第2言語習得理論は教授法を支える理論である。これまでの多くの年齢に関する研究から,早期学習者の明らかな利点は発音の習得であるという結果がある。モデルの英語に数多く触れ,真似をして,英語らしい発音を身につける過程において,発音のみならず,学習者の中に多くの英語という言語が持つ様々な要素を取り込むとこにもなるという事実を無視できない。

学習と環境
 様々な要素が関連した結果の一端はつぎのグラフで示されている。アルファベットの大文字・小文字の変換に関して同じ問題を,授業数があまり変わらないある私立小学校の5,6年生に実施した結果である。
それぞれのグラフは正解した人数を示している。5は満点の人数である。比べてみると6年生の結果の方が良い。特に小文字を大文字に変換する問題において,6年生は正解した人数が多い。これは教授の時間数だけでは説明が難しい。子どもの内部でルール化がなされているという解釈も可能である。

おわりに
 発達心理学と第2言語習得理論を基にして,初めて教科書や指導法の検討が可能となる。散見するモデルで示した英文を個人の状況に置き換えるのは従来の置き換え練習と変わらない。学習者が発した英語は語の産出ではなく,練習の賜物という認識が必要である。適切な指導で学習者は話せるようになる。それは現状において小学生ではない。