[PB29] キャリア教育における授業効果の検討
-資質・能力と自己効力感に着目して-
Keywords:キャリア教育, 授業効果, 資質・能力
はじめに
本研究では,本学の「キャリア形成論」の受講者を対象としてキャリア教育の授業効果を調査した。
目 的
授業の前後で学生の資質・能力(基礎力:大久保,,2006)に変化が現れるのか,また,本講義の目的である自己効力感と進路選択に対する自己効力を向上させるのか,授業効果を検証する。仮設モデルをFigure 1に示す。
方 法
時期 平成28年(2016)4月と8月の2回。
対象者 平成28年前期に本学の全学共通教養科目の「キャリア形成論」の受講学生197名の内,未提出者と内容の不備な者を除いた185名を調査対象とした。
手続 調査は授業中に実施し,調査前に調査対象者に調査の趣旨と個人情報及び結果の取り扱いに関する説明を行った。回答をもって同意が得られたと判断した。所要時間は10分~15分程度であった。回答後,回収した。
調査内容 使用した基礎力は大久保(2006)の9項目(親和力,協働力,統率力,課題発見力,計画立案力,実践力,感情抑制力,自信創出力,行動持続力),心理尺度は,一般性セルフ・エフィカシー尺度16項目(2件法),進路選択に対する自己効力尺度30項目(4件法)であった。
分析 SPSS.Vir.21を使用した。
結 果
まず,各基礎力と心理尺度の授業前後の平均値の差を調べた。授業前後の各基礎力の平均値の相関係数は.63~.79であり,0.1%有意の高い値が得られた。効果量はr=.42-.62で全項目中~大程度の効果であった。自己効力感と進路選択に対する自己効力の授業前後の相関係数は.76と.70であり,0.1%有意の高い値が得られた。効果量はr=.06-.16であり,自己効力感はほとんど効果量が得られず,進路選択に対する自己効力では小さな効果が得られた(Table 1)。次に,本研究のモデル図を確認するために,各項目の影響関係を重回帰分析にて調べたところ,仮設モデルで予想したパスが全て確認された。結果を表Table 2,Figure 2に示す。
考 察
キャリア形成論の授業は,経験によって自己効力感を向上させ,自らの発達を管理できることを目的としている。受講した学生は自身の既存の資質・能力が向上したと感じ,自己効力感の向上を通して学修後の資質・能力を高め,さらに進路選択に対する自己効力を向上させることが示唆された。この結果から,授業効果は得られたと言えよう。しかし,自己効力感の効果量はほとんどなしであった。4ケ月の体験型授業の効果は,自己理解の深まりとメタ認知育成により一時的に下がると考えられ,継続的に効果を上げるために,後期の授業やその後の活動での実践が重要な課題になることが示唆された。
本研究では,本学の「キャリア形成論」の受講者を対象としてキャリア教育の授業効果を調査した。
目 的
授業の前後で学生の資質・能力(基礎力:大久保,,2006)に変化が現れるのか,また,本講義の目的である自己効力感と進路選択に対する自己効力を向上させるのか,授業効果を検証する。仮設モデルをFigure 1に示す。
方 法
時期 平成28年(2016)4月と8月の2回。
対象者 平成28年前期に本学の全学共通教養科目の「キャリア形成論」の受講学生197名の内,未提出者と内容の不備な者を除いた185名を調査対象とした。
手続 調査は授業中に実施し,調査前に調査対象者に調査の趣旨と個人情報及び結果の取り扱いに関する説明を行った。回答をもって同意が得られたと判断した。所要時間は10分~15分程度であった。回答後,回収した。
調査内容 使用した基礎力は大久保(2006)の9項目(親和力,協働力,統率力,課題発見力,計画立案力,実践力,感情抑制力,自信創出力,行動持続力),心理尺度は,一般性セルフ・エフィカシー尺度16項目(2件法),進路選択に対する自己効力尺度30項目(4件法)であった。
分析 SPSS.Vir.21を使用した。
結 果
まず,各基礎力と心理尺度の授業前後の平均値の差を調べた。授業前後の各基礎力の平均値の相関係数は.63~.79であり,0.1%有意の高い値が得られた。効果量はr=.42-.62で全項目中~大程度の効果であった。自己効力感と進路選択に対する自己効力の授業前後の相関係数は.76と.70であり,0.1%有意の高い値が得られた。効果量はr=.06-.16であり,自己効力感はほとんど効果量が得られず,進路選択に対する自己効力では小さな効果が得られた(Table 1)。次に,本研究のモデル図を確認するために,各項目の影響関係を重回帰分析にて調べたところ,仮設モデルで予想したパスが全て確認された。結果を表Table 2,Figure 2に示す。
考 察
キャリア形成論の授業は,経験によって自己効力感を向上させ,自らの発達を管理できることを目的としている。受講した学生は自身の既存の資質・能力が向上したと感じ,自己効力感の向上を通して学修後の資質・能力を高め,さらに進路選択に対する自己効力を向上させることが示唆された。この結果から,授業効果は得られたと言えよう。しかし,自己効力感の効果量はほとんどなしであった。4ケ月の体験型授業の効果は,自己理解の深まりとメタ認知育成により一時的に下がると考えられ,継続的に効果を上げるために,後期の授業やその後の活動での実践が重要な課題になることが示唆された。