[PB30] ほめへの態度が「ほめに値する」という判断に与える影響について
Keywords:ほめへの態度, ほめの対象, ほめの判断
問題と目的
同じ状況,同じ対象,同じ成果に対しても,それをほめるという選択をする人とそうしない人がいる。一方で同じようにほめられても,ポジティブに反応する人とそうでない人がいる。このようなほめへの対応の違いを生むのは,ほめの機能や効果をどのようにとらえているか,何をほめるべき/ほめられるはずととらえ,行動や反応しているかという「ほめへの態度」の個人差ではないかと考えられる。
そこで本研究では,個人の持つほめへの態度のタイプによって“ほめに値する”と判断する対象が異なるのかを検証することで,ほめについての考え方の特徴を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査協力者:4年制大学の学生238名
手続き:何をほめに値すると判断するかを調べるために,「授業である学生が発表後に教師にほめられた」という仮想場面を用い質問紙調査を行った。そのほめ状況に対して,提示した8つの理由がほめの理由だと思う程度について5件法で評定させた。提示した理由は,「内容が優れていた(優秀)」「ある程度のレベルに達していた(基準)」「発表の仕方がよかった(態度)」「努力のあとが見られた(努力)」「普段から意欲的(人格)」「今後も積極的に発表してほしい(継続)」「自信になる(自信)」「信頼関係を作りたい(関係)」であった。各理由の評定値が高いほど,その理由は“ほめに値する”と判断されたと考えられる。評定は一般的立場/ほめる側(教師)/ほめられる側(学生)の3つの異なる立場から行われた。
さらにほめへの態度を調べるために,「ほめへの態度尺度」(高崎,2015)への回答を求めた。
結 果
「ほめへの態度尺度」を下位尺度ごとに集計し,「承認重視」「基準重視」「用い方重視」の各態度得点の標準得点を算出した。個人の態度の特徴を示すためクラスタ分析を行ったところ,「用い方重視(承認Hタイプ)」群(74名),「用い方重視(承認Lタイプ)」群(50名),「承認重視」群(77名),「基準重視」群(37名),の4群が見いだされた。
8つのほめの理由評定値について,一般的立場/ほめる側/ほめられる側別に4群の平均値を算出し,態度(4)×理由(8)の2要因の分散分析を行った。その結果,一般的立場,ほめる側,ほめられる側の全立場で,態度の主効果と理由の主効果が有意であり,交互作用は有意ではなかった。下位検定の結果,一般的立場においては「努力」と「関係」の理由で,ほめる側の立場においては「努力」「人格」「継続」「自信」「関係」の理由で,ほめられる側の立場においては「態度」「努力」「自信」「関係」の理由において,「用い方重視(承認Hタイプ)」群よりも「用い方重視(承認Lタイプ)」群でほめの理由評定値(ほめに値するという判断)が高かった。
全ての立場に共通していたのは,「優秀」「基準」という理由は態度によって“ほめに値する”という判断に違いは見られないことであった。また,“ほめに値する”判断に差が出た場合は,いずれの理由でもその差は「用い方重視(承認H)」と「用い方重視(承認L)」の間にみられた。このことから,ほめへの態度のタイプが特定の“ほめに値する”対象を好むというような特徴があるわけではないこと,何を“ほめに値する”ととらえるかは,ほめへの態度のタイプよりも立場によって異なる可能性があると考えられた。
また,用い方重視の態度に承認重視の態度が加わることが“ほめに値する”という判断を促進することが示されたが,“ほめに値する”という判断は,ほめ行動の選択に影響を与えると考えられる。用い方重視の態度は,望ましい方向に相手をコントロールするために道具的にほめを用いようとする態度であるが,それだけではなく,よいところを認めようとする承認重視の考え方が伴うことによって,ほめる/ほめられる時のポジティブな反応に結びつくのではないかと推測される。
同じ状況,同じ対象,同じ成果に対しても,それをほめるという選択をする人とそうしない人がいる。一方で同じようにほめられても,ポジティブに反応する人とそうでない人がいる。このようなほめへの対応の違いを生むのは,ほめの機能や効果をどのようにとらえているか,何をほめるべき/ほめられるはずととらえ,行動や反応しているかという「ほめへの態度」の個人差ではないかと考えられる。
そこで本研究では,個人の持つほめへの態度のタイプによって“ほめに値する”と判断する対象が異なるのかを検証することで,ほめについての考え方の特徴を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査協力者:4年制大学の学生238名
手続き:何をほめに値すると判断するかを調べるために,「授業である学生が発表後に教師にほめられた」という仮想場面を用い質問紙調査を行った。そのほめ状況に対して,提示した8つの理由がほめの理由だと思う程度について5件法で評定させた。提示した理由は,「内容が優れていた(優秀)」「ある程度のレベルに達していた(基準)」「発表の仕方がよかった(態度)」「努力のあとが見られた(努力)」「普段から意欲的(人格)」「今後も積極的に発表してほしい(継続)」「自信になる(自信)」「信頼関係を作りたい(関係)」であった。各理由の評定値が高いほど,その理由は“ほめに値する”と判断されたと考えられる。評定は一般的立場/ほめる側(教師)/ほめられる側(学生)の3つの異なる立場から行われた。
さらにほめへの態度を調べるために,「ほめへの態度尺度」(高崎,2015)への回答を求めた。
結 果
「ほめへの態度尺度」を下位尺度ごとに集計し,「承認重視」「基準重視」「用い方重視」の各態度得点の標準得点を算出した。個人の態度の特徴を示すためクラスタ分析を行ったところ,「用い方重視(承認Hタイプ)」群(74名),「用い方重視(承認Lタイプ)」群(50名),「承認重視」群(77名),「基準重視」群(37名),の4群が見いだされた。
8つのほめの理由評定値について,一般的立場/ほめる側/ほめられる側別に4群の平均値を算出し,態度(4)×理由(8)の2要因の分散分析を行った。その結果,一般的立場,ほめる側,ほめられる側の全立場で,態度の主効果と理由の主効果が有意であり,交互作用は有意ではなかった。下位検定の結果,一般的立場においては「努力」と「関係」の理由で,ほめる側の立場においては「努力」「人格」「継続」「自信」「関係」の理由で,ほめられる側の立場においては「態度」「努力」「自信」「関係」の理由において,「用い方重視(承認Hタイプ)」群よりも「用い方重視(承認Lタイプ)」群でほめの理由評定値(ほめに値するという判断)が高かった。
全ての立場に共通していたのは,「優秀」「基準」という理由は態度によって“ほめに値する”という判断に違いは見られないことであった。また,“ほめに値する”判断に差が出た場合は,いずれの理由でもその差は「用い方重視(承認H)」と「用い方重視(承認L)」の間にみられた。このことから,ほめへの態度のタイプが特定の“ほめに値する”対象を好むというような特徴があるわけではないこと,何を“ほめに値する”ととらえるかは,ほめへの態度のタイプよりも立場によって異なる可能性があると考えられた。
また,用い方重視の態度に承認重視の態度が加わることが“ほめに値する”という判断を促進することが示されたが,“ほめに値する”という判断は,ほめ行動の選択に影響を与えると考えられる。用い方重視の態度は,望ましい方向に相手をコントロールするために道具的にほめを用いようとする態度であるが,それだけではなく,よいところを認めようとする承認重視の考え方が伴うことによって,ほめる/ほめられる時のポジティブな反応に結びつくのではないかと推測される。