The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB38] こどもの自転車運転技能習得に対する非接触的指導の効果

主に小学校低学年までを対象とした自転車初乗り教室における集団学習

中路将徳1, 松永猛#2 (1.株式会社セントルラボ, 2.一般社団法人アジアニューブランド協会)

Keywords:児童教育, コーチング, 教授法

 近年,こどもの自転車運転技能習得が以前よりも困難な環境となっている。その理由は,家族環境の変化により父母等がこどもに自転車を教える時間が取れないこと,社会環境の変化により自転車を教える適当な場所を確保できないことがある。また,自転車運転を教える際においても,父母等は自分自身が幼少期に習得した過程の記憶に基づき,こどもの体や自転車を支えるなど身体的に接触して指導をすることが多いが,理論ではなく経験に基づく方法であるため,技能習得に時間を要したり,指導を諦めたりする傾向がある。このような状況を鑑み,松永は2017年より自転車技能習得を目的とした教室を開始した。指導の最も特徴的な事は,こどもに対する身体接触をほとんど伴わない点である。1年以上にわたる教室開催の結果,複数のこどもが操縦技能を獲得することが確認できていたが,これまで習熟度や参加背景などを定量的に評価したことはなかった。本研究では,指導の効果を定量的に評価し,結果に及ぼしている影響について考察した。

方  法
(1) 自転車運転技能習得の指導法
 自転車初乗り教室として,最低年齢4歳以上を対象に,商業施設の駐車場などで指導した。教室1回あたりの定員は10名とした。教室では,自転車の名称や交通ルールの講義を最初に行い,その後ペダルを外した自転車を用いて跨り歩行と人工坂道から下るバランス走行を練習させた。次にペダルを付け,坂道から下る途中に両足をペダルに乗せる練習実施後,最後にペダルを漕いで前進ならびに曲がる練習をさせた。指導時間は2時間とし,習得状況に関わらず時間の到来により指導を終了した。指導はコーチ2名以上で行い,口頭での非接触的指導とし,転倒など緊急時を除き,同伴する父母等およびコーチのいずれも原則としてこどもに身体接触は行わなかった。
(2) 調査の方法
 2018年に実施した自転車初乗り教室において,参加したこども41名(男子23名,女子18名)に同伴した父母等に対し,質問紙法ならびにヒアリングにより調査を実施した。調査項目は年齢,性別,教室参加前の事前練習の回数,時間,指導者ならびに補助輪使用の有無,初乗り教室受講前後の習熟度の5段階評価(段階1「全く練習していない」,段階2「サドルに跨って歩く事ができる」,段階3「地面を蹴って前進できる」,段階4「ペダルを漕いで直進が出来る」および段階5「ペダルを漕いで曲がる事も出来る」),ならびに受講後の満足度3段階評価(他のこどもにも「強く薦める」,「薦める」および「薦めない」)とした。

結果と考察
 参加者の平均年齢は6.8歳,95%が初参加であった。参加前の平均練習時間は2.6時間,中央値は1時間で,練習時間0が42%であった。受講前の習得度は段階1が31%,段階2が39%,段階3が28%,段階4が3%であり,段階5は0%であった。受講後の習得度は段階2が2%,段階3が51%,段階4が7%,段階5が39%であった。満足度は「強く薦める」が59%であった。
 初乗り教室参加前の習得度段階4以上は1名のみであったが,指導を終えた時点で,半数近くの46%が段階4以上に到達し,バランスを取って前進できる事が明らかとなった。2時間で習得できる理由として,(i)非接触指導をすることによって,子ども自身が周囲に依存することなく自立して練習している事,(ii)指導を第三者が行う事によってこどもが適度な緊張感を持ち,練習に対する集中力を維持しやすい事,(iii)集団で指導することによって,こどもに適度な競争心を与えている事が考えられる。身体接触を伴わなくても,コーチの適切な声がけや指導環境の設定によって短時間での自転車技能習得が可能であることは,スキーなどの他の協調運動の習得においても応用できる事が期待できる。
 46%のこどもが「ペダルを漕いで直進が出来る」の段階4以上に達した。