The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB43] 若年就労者の職場適応を規定する在学中の要因(1)

就職不安と職場における効力期待が就職前の高揚感に及ぼす影響

風間文明1, 山下倫実2 (1.十文字学園女子大学, 2.十文字学園女子大学)

Keywords:就職不安, 女子大学生, 職場適応

 大学生にとって就職は不安を伴いながらも喜ばしいことである。できれば前向きな気持ちでその時期を迎えられることが望ましい。本研究では,就職を楽しみに感じる感情に着目し,就職前の高揚感としてとらえる。大学生の就職不安は内定を得ることで解消されるわけではなく,実際に就職するまで長期にわたって経験される(矢崎・斎藤,2014;石本・逸見・齊籐,2010)。就職不安は大学生の精神的健康を損なう危険性があると示唆されている(藤井,1999)ことから,就職前の高揚感も低下させることが予想される。他方,積極的な就職活動を促進する要因として自己効力感の効果が指摘されている(下村,2009)。実際の就職が近づいた時期にも,就職後の職場で自分には様々なことが「できるだろう」と効力期待を高く評価することが就職前の高揚感を高めると予想される。
 以上のことから,本研究では,就職を前にした女子大学生を対象に,就職に関する不安と就職してからの職場での効力期待が,就職前の高揚感に及ぼす影響を明らかにする。

方  法
調査対象者 埼玉県内の私立女子大学4年81名。平均年齢21.9歳(SD=0.8)。2017年1月下旬に集団実施。既に就職先が決定済みの70名(86.4%)の内,回答に不備のない67名を分析対象とした。
質問紙の内容 1)就職に関する不安:石本・逸身・齋藤(2010)及び松田・永作・新井(2008)を基に30項目を作成した(4件法)。2)職場における効力期待:寿山(2012)を参考に,内定先の職場でどのようなことが「できそうだ」と思うかについて24項目を作成した(5件法)。3)就職前の高揚感:著者らの合議により「4月から就職するのが楽しみだ」,「社会人になることで親から自由になれて嬉しい」など12項目を作成した(5件法)。

結  果
就職に関する不安 因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い項目削除後の20項目について固有値1.0を基準に6因子を抽出した。第1因子から順に「人間関係への不安」,「能力・適性への不安」,「社会人としての不安」,「配属への不安」,「進路決定に関する不安」,「収入への不安」とした。
職場における効力期待 同様の因子分析を行い,項目削除後の20項目について固有値1.0を基準に6因子を抽出した。第1因子から順に「専門性への期待」,「待遇面での期待」,「自律性への期待」,「社会的貢献への期待」,「ワークライフバランスへの期待」,「達成への期待」と解釈した。
就職前の高揚感 同様の因子分析を行い,項目削除後の11項目について「就職に向けての高揚感」,「自立の嬉しさ」の2因子を抽出した。
就職不安,職場での効力期待が就職前の高揚感に及ぼす影響 就職不安6因子,職場での効力期待6因子を説明変数,就職前の高揚感2因子をそれぞれ目的変数にした,ステップワイズ法による重回帰分析を行った(Table 1)。その結果,就職に向けての高揚感に対しては自律性への期待,社会的貢献への期待から正の影響が,進路決定に関する不安から負の影響が見られた。また自立への嬉しさに対しては,収入への不安,専門性への期待,自律性への期待から正の影響が見られた。

考  察
 職場での自律性,社会的貢献への効力期待が高いほど就職に向けての高揚感が高まるが,進路決定に不安を感じているほど高揚感は低下すること,職場での専門性,自律性への効力期待が高いほど,また収入に不安を感じているほど,自立の嬉しさが高まることが示された。大学時代のアルバイトに比べて,就職後には仕事における自己裁量の範囲も広がり,社会への貢献を実感できることも増えるだろう。そうした期待が就職を楽しみにさせていると考えられる。しかし,自分の就職先決定に確信が持てずにいると就職前の高揚感が阻害されるといえる。

付  記
本研究は平成29年度十文字学園女子大学プロジェクト研究費の助成を受けた