[PB53] 反応スタイルに対するメタ受容尺度の信頼性と妥当性の検討
Keywords:抑うつ, 受容
問題と目的
抑うつの予防や治療の介入要因を決める際に役立つ可能性が指摘されている要因に反応スタイルがあり(伊藤・竹中・上里,2002),抑うつ気分時に考え込み反応をとると抑うつは持続し重症化し,抑うつ気分時に気そらし反応をとると抑うつはより短くなり軽減するとされる。
日本語版の反応スタイルを測定する尺度としては,日本語改訂版反応スタイル尺度(日本語版RSS-R;島津,2005)があり,下位尺度には否定的考え込み反応,問題解決的考え込み反応,回避的気そらし反応,気分転換的気そらし反応がある。日本語版RSS-Rは,抑うつに関わる変数として,メタ受容尺度も併せて測定することができるようになっている。メタ受容は「反応スタイルを用いている自分を,善悪という点から離れて,一つ次元をあげたところで,そのままの姿を許容すること」と定義されている(島津,2018)。しかし,メタ受容尺度の信頼性および妥当性の検討は十分とはいえない。そこで本研究は,反応スタイルに対するメタ受容尺度の信頼性と妥当性の検討を行うことを目的とする。
方 法
信頼性の検討
都内某私立大学の学生302名(男性119名,女性183名,平均年齢21.9歳,SD=6.53)を対象とし内的整合性と因子構造の確認を行った。また,再検査信頼性の確認には,都内某私立大学の学生92名(男性29名,女性63名,平均年齢20.71歳,SD=4.83)を対象とし,4週間の間隔をあけて2回同一の調査を行った。査定尺度には,日本語版RSS-Rおよびメタ受尺度を用いた。
妥当性の検討
都内某私立大学の学生82名(男性27名,女性54名,平均年齢20.1歳,SD=2.43)を対象とし妥当性の確認を行った。査定尺度には日本語版RSS-Rとメタ受容尺度,宮沢(1980,1988)が作成した自己受容性測定スケール(SAI)の下位尺度である自己理解尺度を使用した。宮沢(1988)は自己理解を「自己の諸側面をあるがままに受け入れようとすることであり,自己に冷静な目を向け,自分のことがよくわかっていると自己認識していること」と定義している。自己理解尺度はメタ受容尺度と「自己をあるがままに受け入れる」という要素に関して共通していると考え,併存的妥当性の検討に用いた。
結果と考察
信頼性の検討
内的整合性を検討したところ,メタ受容尺度の各下位尺度に含まれる7項目のCronbachのα係数は,否定的考え込み反応に対する受容が.91,回避的気そらし反応に対する受容が.91,問題解決的考え込み反応に対する受容が.89,気分転換的気そらし反応に対する受容が.87と高い値を示した。
次に,テスト間のpearsonの相関係数を算出し再検査信頼性を検討した結果,否定的考え込み反応に対する受容はr=.78,回避的気そらし反応に対する受容がr=.72,問題解決的考え込み反応に対する受容がr=.78,気分転換的気そらし反応に対する受容がr=.74となった。
妥当性の検討
まず,因子構造の検討を行った。Amosを用いた確認的因子分析を行った結果, GFI,AGFI,CFI,および2因子モデルのRMSEAの値は悪いものであった。4因子モデルのRMSEAは0.07であった。田部井(2001)によると,RMSEAの値が0.05から0.1の範囲は棄却するまでではないものの,グレーゾーンとされており,今回の結果もこのグレーゾーンと言える。AICは4因子モデルの方が値が低かった(4因子:GFI=0.82,AGFI=0.79,CFI=0.89,RMSEA=0.07, AIC=1012.285,2因子:GFI=0.56,AGFI=0.49,CFI=0.68,RMSEA=0.12,AIC=2077.32)。
次に,SAIの下位尺度「自己理解」とメタ受容尺度の下位尺度について,pearsonの相関係数を算出し,併存的妥当性を検討した。その結果,「自己理解」と否定的考え込み反応に対する受容がr=.46,回避的気そらし反応に対する受容がr=.41.,問題解決的考え込み反応に対する受容がr=.22,気分転換的気そらし反応に対する受容がr=.26.と,中程度の相関と弱い相関がみられた。
以上の結果より,メタ受容尺度の信頼性は十分に高いことが確認されたが妥当性は十分な値とは言えず,今後改良の余地を残すものとなった。
抑うつの予防や治療の介入要因を決める際に役立つ可能性が指摘されている要因に反応スタイルがあり(伊藤・竹中・上里,2002),抑うつ気分時に考え込み反応をとると抑うつは持続し重症化し,抑うつ気分時に気そらし反応をとると抑うつはより短くなり軽減するとされる。
日本語版の反応スタイルを測定する尺度としては,日本語改訂版反応スタイル尺度(日本語版RSS-R;島津,2005)があり,下位尺度には否定的考え込み反応,問題解決的考え込み反応,回避的気そらし反応,気分転換的気そらし反応がある。日本語版RSS-Rは,抑うつに関わる変数として,メタ受容尺度も併せて測定することができるようになっている。メタ受容は「反応スタイルを用いている自分を,善悪という点から離れて,一つ次元をあげたところで,そのままの姿を許容すること」と定義されている(島津,2018)。しかし,メタ受容尺度の信頼性および妥当性の検討は十分とはいえない。そこで本研究は,反応スタイルに対するメタ受容尺度の信頼性と妥当性の検討を行うことを目的とする。
方 法
信頼性の検討
都内某私立大学の学生302名(男性119名,女性183名,平均年齢21.9歳,SD=6.53)を対象とし内的整合性と因子構造の確認を行った。また,再検査信頼性の確認には,都内某私立大学の学生92名(男性29名,女性63名,平均年齢20.71歳,SD=4.83)を対象とし,4週間の間隔をあけて2回同一の調査を行った。査定尺度には,日本語版RSS-Rおよびメタ受尺度を用いた。
妥当性の検討
都内某私立大学の学生82名(男性27名,女性54名,平均年齢20.1歳,SD=2.43)を対象とし妥当性の確認を行った。査定尺度には日本語版RSS-Rとメタ受容尺度,宮沢(1980,1988)が作成した自己受容性測定スケール(SAI)の下位尺度である自己理解尺度を使用した。宮沢(1988)は自己理解を「自己の諸側面をあるがままに受け入れようとすることであり,自己に冷静な目を向け,自分のことがよくわかっていると自己認識していること」と定義している。自己理解尺度はメタ受容尺度と「自己をあるがままに受け入れる」という要素に関して共通していると考え,併存的妥当性の検討に用いた。
結果と考察
信頼性の検討
内的整合性を検討したところ,メタ受容尺度の各下位尺度に含まれる7項目のCronbachのα係数は,否定的考え込み反応に対する受容が.91,回避的気そらし反応に対する受容が.91,問題解決的考え込み反応に対する受容が.89,気分転換的気そらし反応に対する受容が.87と高い値を示した。
次に,テスト間のpearsonの相関係数を算出し再検査信頼性を検討した結果,否定的考え込み反応に対する受容はr=.78,回避的気そらし反応に対する受容がr=.72,問題解決的考え込み反応に対する受容がr=.78,気分転換的気そらし反応に対する受容がr=.74となった。
妥当性の検討
まず,因子構造の検討を行った。Amosを用いた確認的因子分析を行った結果, GFI,AGFI,CFI,および2因子モデルのRMSEAの値は悪いものであった。4因子モデルのRMSEAは0.07であった。田部井(2001)によると,RMSEAの値が0.05から0.1の範囲は棄却するまでではないものの,グレーゾーンとされており,今回の結果もこのグレーゾーンと言える。AICは4因子モデルの方が値が低かった(4因子:GFI=0.82,AGFI=0.79,CFI=0.89,RMSEA=0.07, AIC=1012.285,2因子:GFI=0.56,AGFI=0.49,CFI=0.68,RMSEA=0.12,AIC=2077.32)。
次に,SAIの下位尺度「自己理解」とメタ受容尺度の下位尺度について,pearsonの相関係数を算出し,併存的妥当性を検討した。その結果,「自己理解」と否定的考え込み反応に対する受容がr=.46,回避的気そらし反応に対する受容がr=.41.,問題解決的考え込み反応に対する受容がr=.22,気分転換的気そらし反応に対する受容がr=.26.と,中程度の相関と弱い相関がみられた。
以上の結果より,メタ受容尺度の信頼性は十分に高いことが確認されたが妥当性は十分な値とは言えず,今後改良の余地を残すものとなった。