The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB54] いじめ深刻化の要因に関する研究

教師,親の要因および被害・加害経験から

太田正義1, 加藤弘通2 (1.常葉大学, 2.北海道大学)

Keywords:いじめ, 小中学生, 大規模調査

問  題
 学校におけるいじめは,不登校や自殺者が出る非常に深刻な問題である。これまで多くのいじめに関する研究が行われてきたが,その多くは,いじめの発生や介入に関する研究がほとんどであった。その一方で,どのような場合にいじめが深刻化するのかといった深刻化の要因に関する研究は少ない(Kato, Ota, Mizuno, 2017)。そこで本研究では,大規模調査に基づき,教師や親,過去の被害・加害経験という視点から,どのような要因がいじめの深刻化に寄与するのかを検討する。

方  法
1. 協力者:小学生20,232名,中学生18,172名(男子19,847名,女子19,167名)
2. 調査内容:①いじめの加害・被害経験8項目。全くない~週に何度もあるまでの5件法で回答を求めた。②教師との接触頻度,③教師との関係,④親との関係。いずれも5件法で回答を求めた。
3.調査時期:2017年11月。

結  果
1. 実態:被害に関して今の学年になって1度でも経験があるとした者の割合は,男子38.8%,女子38.5%であり,加害に関しては男子32.4%,女子31.7%であった。また被害は学年が上がるにつれて,減少する傾向が見られ,加害は男子は中学生になると学年が上がるにつれて減少し,女子は小6をピークにその後減少する傾向が見られた。
2. 被害加害の関連要因:深刻な被害と関連する要因を検討するために,1度以上の被害・加害(低頻度)と週1度以上の被害・加害(高頻度)に分け,ロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を算出した(Table 1, Table2)。
 その結果,被害については教師や親との関係が良いといじめの被害が抑制されること,一方,低頻度を含めた加害経験ある児童生徒は,自分自身が被害を受ける経験が3~5倍なることが分かる。また教師との接触頻度は,直接いじめの被害とは関連していなかった(Table 1)。
 また深刻化については,高頻度の加害が低頻度の被害よりも高頻度の被害に対して高いオッズ比を示したことから,高頻度の加害経験をもっている児童生徒のほうが,深刻ないじめの被害を受けるリスクが高いと考えられる。
また加害については,教師や親との関係の良さが加害を抑制する方向に働くこと,一方,被害の経験がある児童生徒は加害を行う可能性が高くなることが分かり,特に高頻度での被害経験は,4.8~6.6倍の高頻度の加害経験を発生させる可能性があることが分かる。
 以上のことから,被害に関しては,高頻度のいじめ加害経験がある生徒である場合,いじめが深刻化するリスクが高いことが考えられる。また加害についても同様に,加害者が深刻ないじめ被害も経験している場合,深刻ないじめを引き起こすリスクになり得ると考えられる。