[PB62] 小学校3年生を対象としたピア・サポートトレーニングの効果の検討
Keywords:ピア・サポート, 社会的スキル, サポート授受
児童の不適応の予防や対人関係能力の向上を目指した予防的・開発的な教育活動として,小学校3年生を対象としたピア・サポートトレーニングを立案,実施し,その効果を検討した。対象となった小学校では,全校で協同学習の取組みを実施しており,ピア・サポートトレーニングが協同学習のための下地づくりの一環として役立つことも期待されていた。
方 法
参加者 実施群は,公立小学校Y校3年A組の35名(男子19名,女子16名),統制群は,同校3年B組の34名(男子19名,女子15名)であった。担任教諭へのインタビューや児童の観察から,実施群の実態として,話の聞き方や生活場面での援助要請でより向上が見込めること等が挙げられた。
実施者 地方に所在する総合大学の教育学部所属の4年生2名(いずれも男性),3年生3名(女性2名,男性1名)であった。大学教員の指導のもと,ピア・サポートトレーニングを実施した。
トレーニングと効果測定の実施スケジュール ピア・サポートトレーニングは,20XX年11月に2週間に1回のペースで計3回実施した(1回あたり45分)。その後,約3週間の般化期間を設け,実施者のうち1名がインターンシップ生として週に一度学級を訪れ,児童の学習活動等の中で機会を捉えて,学習内容を想起できるよう呼び掛けを行うなど,学習内容やスキルの定着を図った。
トレーニング内容は,実施群の実態を踏まえるとともに,今後青年期を迎える児童には,いらいら感情について理解しうまく付き合う方法を考える機会が有用との考え,および協同学習の下地づくりをとのねらいから,第1回はピア・サポートについての説明と上手な話の聞き方,第2回は上手な頼り方・頼られ方,第3回はいらいら感情とのつきあい方とした。各回のトレーニングの終わりには,「ふりかえりシート」に活動の自己評価や気づきの記入を求めた。
効果測定は,トレーニング前後にプレテスト(10月下旬)とポストテスト(12月上旬)を行い,フォローアップテストを般化期間終了後に行った(12月中旬)。
効果測定の内容 プレテスト,ポストテスト,フォローアップテストにおける測定内容は,「聞き方」,「サポート入手可能性」,「サポート提供可能性」,「援助要請行動」,「攻撃性」であった。「聞き方」は,小関・蓑崎・細谷・百瀬・東谷・山本・佐々木(2007)の「友人関係場面における児童用社会的スキル尺度」の「聞き方」因子6項目を用いた。「サポート入手可能性」,「サポート提供可能性」に関する尺度は,三宅(2011)の「サポートの入手可能性測定項目」6項目,「サポートの提供可能性測定項目」6項目を用いた。「援助要請行動」に関する尺度は,藤原・村上・西谷(鈴木)・櫻井(2016)の「児童用援助要請行動尺度」9項目を用いた。「攻撃性」に関する尺度は,桜井(1991)の「児童用攻撃性尺度」16項目を用いた。
結果と考察
ふりかえりシートの自己評価の平均値は,どの回も4.2以上で(1~5の5件法),児童の参加姿勢は良好で,内容も児童にとって無理のないものであったと考えられる。
各尺度得点について,群(実施群,統制群)×測定時期(プレ,ポスト,フォローアップ)×性の3要因の分散分析を実施した。その結果,実施群と統制群との間に変化傾向の違いがみられたのは,以下の部分であった。
「聞き方」では,統制群のみ,測定時期の単純主効果が有意で,プレテストからポストテストにかけて一度下降した後,ポストテストからフォローアップテストにかけて上昇し,フォローアップテストでは,プレテストと差のない状態に回復していた。実施群では大きな変動はなく,ほぼ一定水準を保っていた。
「サポート入手可能性」では,実施群のみ,プレテストからフォローアップテストにかけて上昇がみられた。
「攻撃性」では,実施群においてプレテストからフォローアップテストにかけて上昇がみられ,フォローアップテストでは,統制群の評定値より有意に高かった。
これより,短期間のトレーニングと般化期間ではあったが,話の聞き方スキルやサポート入手可能性を高める効果が認められた。しかし,攻撃性に関しては,自己のイライラ感情に目を向ける傾向は高まったものの,それにうまく対処する方法を身につける段階までは至らなかったものと考えられ,イライラ感情への対処能力を向上させるためには,トレーニング内容の充実と般化の方法や期間の見直しが必要と考えられる。
方 法
参加者 実施群は,公立小学校Y校3年A組の35名(男子19名,女子16名),統制群は,同校3年B組の34名(男子19名,女子15名)であった。担任教諭へのインタビューや児童の観察から,実施群の実態として,話の聞き方や生活場面での援助要請でより向上が見込めること等が挙げられた。
実施者 地方に所在する総合大学の教育学部所属の4年生2名(いずれも男性),3年生3名(女性2名,男性1名)であった。大学教員の指導のもと,ピア・サポートトレーニングを実施した。
トレーニングと効果測定の実施スケジュール ピア・サポートトレーニングは,20XX年11月に2週間に1回のペースで計3回実施した(1回あたり45分)。その後,約3週間の般化期間を設け,実施者のうち1名がインターンシップ生として週に一度学級を訪れ,児童の学習活動等の中で機会を捉えて,学習内容を想起できるよう呼び掛けを行うなど,学習内容やスキルの定着を図った。
トレーニング内容は,実施群の実態を踏まえるとともに,今後青年期を迎える児童には,いらいら感情について理解しうまく付き合う方法を考える機会が有用との考え,および協同学習の下地づくりをとのねらいから,第1回はピア・サポートについての説明と上手な話の聞き方,第2回は上手な頼り方・頼られ方,第3回はいらいら感情とのつきあい方とした。各回のトレーニングの終わりには,「ふりかえりシート」に活動の自己評価や気づきの記入を求めた。
効果測定は,トレーニング前後にプレテスト(10月下旬)とポストテスト(12月上旬)を行い,フォローアップテストを般化期間終了後に行った(12月中旬)。
効果測定の内容 プレテスト,ポストテスト,フォローアップテストにおける測定内容は,「聞き方」,「サポート入手可能性」,「サポート提供可能性」,「援助要請行動」,「攻撃性」であった。「聞き方」は,小関・蓑崎・細谷・百瀬・東谷・山本・佐々木(2007)の「友人関係場面における児童用社会的スキル尺度」の「聞き方」因子6項目を用いた。「サポート入手可能性」,「サポート提供可能性」に関する尺度は,三宅(2011)の「サポートの入手可能性測定項目」6項目,「サポートの提供可能性測定項目」6項目を用いた。「援助要請行動」に関する尺度は,藤原・村上・西谷(鈴木)・櫻井(2016)の「児童用援助要請行動尺度」9項目を用いた。「攻撃性」に関する尺度は,桜井(1991)の「児童用攻撃性尺度」16項目を用いた。
結果と考察
ふりかえりシートの自己評価の平均値は,どの回も4.2以上で(1~5の5件法),児童の参加姿勢は良好で,内容も児童にとって無理のないものであったと考えられる。
各尺度得点について,群(実施群,統制群)×測定時期(プレ,ポスト,フォローアップ)×性の3要因の分散分析を実施した。その結果,実施群と統制群との間に変化傾向の違いがみられたのは,以下の部分であった。
「聞き方」では,統制群のみ,測定時期の単純主効果が有意で,プレテストからポストテストにかけて一度下降した後,ポストテストからフォローアップテストにかけて上昇し,フォローアップテストでは,プレテストと差のない状態に回復していた。実施群では大きな変動はなく,ほぼ一定水準を保っていた。
「サポート入手可能性」では,実施群のみ,プレテストからフォローアップテストにかけて上昇がみられた。
「攻撃性」では,実施群においてプレテストからフォローアップテストにかけて上昇がみられ,フォローアップテストでは,統制群の評定値より有意に高かった。
これより,短期間のトレーニングと般化期間ではあったが,話の聞き方スキルやサポート入手可能性を高める効果が認められた。しかし,攻撃性に関しては,自己のイライラ感情に目を向ける傾向は高まったものの,それにうまく対処する方法を身につける段階までは至らなかったものと考えられ,イライラ感情への対処能力を向上させるためには,トレーニング内容の充実と般化の方法や期間の見直しが必要と考えられる。