The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB73] 大学入試における英語認定試験の利用に対する高校側の意見

主として賛否の根拠をめぐって

倉元直樹1, 宮本友弘2 (1.東北大学, 2.東北大学)

Keywords:英語認定試験, 大学入試, 公平性

問  題
 高大接続答申(中央教育審議会,2014)による大学入試改革が具体化してきた。高大接続システム改革会議最終報告(同会議,2016)で改革の中心が英語4技能の測定を目的とした民間の資格・検定試験(「英語認定試験」と表記)の活用とセンター試験に代わる共通テストへの記述式問題の導入に据えられた。詳細不明のまま国大協は基本方針を発表し,国立大学は「一般選抜」の全受験生に新共通テストの英語と英語認定試験の双方,記述式問題を含む国語及び数学を課すこととされた。
 経緯には不審な点が多い。記述式も英語認定試験も技術的な問題が多く,入試に耐えられる水準か疑問だ(例えば,南風原,2017)。決定も遅く,当事者の意見や事情が反映される機会もない。
東北大学入試センターでは,東北大学に志願者・合格者を多数送り出す高校を対象に改革への対応に関する調査を行った。本発表はその中で英語認定試験に関わる項目への賛否とその根拠について,自由記述部分を分析した結果を報告する。

方  法
 調査は東北大学入試センター長が倫理審査委員会の対象ではないことを確認し,教育担当理事の承認の下実施した。対象は過去4年間に8名以上の合格者を輩出した高校等269校。2018年1月29日に校長宛にA4判両面1枚の質問票を郵送した。東北大学のAO入試に関わる項目が4項目,英語認定試験,記述式の利用が1項目である。高校名を明示し,詳しい教員に記入を求めた。3月29日までに返送された回答が分析の対象である。
 英語認定試験に関わる設問は国大協の基本方針に「賛成」「やむをえない」「反対」の三者択一に自由記述欄を加えた。本発表では自由記述の内容から賛否に関して責任発表者が9段階に分類,さらに自由記述に記載された記述を要素に分解,連名発表者とともに合議の上でその有無を評定した。

結  果
 回収率は単純集計で79.9%であった。高校全体を母集団とした場合に被覆率は4.3%だが,4年間の合格者数を母集団とした場合には返送率で88.9%,被覆率でも73.2%に及ぶ。
 国大協方針に「賛成」は8.5%,「やむをえない」が49.8%,「反対」が41.8%。自由記述欄への有効回答数は196,選択回答とは独立に評価した自由記述の段階評価結果の分布はTable1の通りである。
 自由記述に記載された要素を分類し,対応分析を行った。結果はTable2の通りである。

考  察
 国大協方針への賛成は僅かしかない。「やむをえない」の多くも「決まったから仕方がない」というものである。対応分析の結果から,「賛成」の根拠は「理念」,反対は各種の「公平性」に対する疑念に集中する傾向があった。大学の意思決定に資する参考資料の一つとして有効と思われる。