The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 3:30 PM - 5:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC14] 郊外部・都市部生活者の自然体験の質的差異(1)

記憶イメージマップの比較検討の試み

橋本憲尚1, 上原知里#2 (1.佛教大学, 2.高島市立マキノこども園)

Keywords:自然体験, 郊外・都市, 記憶イメージ

目  的
 子どもたちの戸外遊びが減少し,中でも日常的に自然に触れて遊ぶ機会が乏しくなったと言われて久しい。近年,それを補い「生きる力」を育む方策として,野外教育・余暇活動として自然体験活動の促進が図られてきた。だが,そうした活動は,学校・NPO・保護者などによって計画された「非日常的な体験」であり,特定の時間・場所・材料・道具などセッティングの制約を受ける。他方,「日常的な遊び体験」では,自発的な行為に伴う偶発的な契機を利用し,主体的な活動を展開していくことができる。このような幼少期からの自然体験の質が人格形成に影響すると考えられ,「愛着ある遊び場での原体験」(寺本,1990)「心象風景を形成する日常的生活空間体験」(塚本ら,2001)の重要性が指摘されてきた。本研究では農村部・都市部生活者の自然体験についての記憶イメージを比較し,両者の自然体験の質的差異について具体的な証左を得ることを目的とする。

方  法
参加者: 佛教大学教育学科4回生のうち,これまでずっと生活拠点としてきた実家が人口密度500人/km2以下の市区町村にある学生3名(郊外群),2000人/km2以上の市区町村にある学生3名(都市群)を抽出した。後述のイメージマップ作成とインタヴュー終了後の質問に対し,郊外群学生全員が自宅と最寄り駅の間に畦道のある田畑があると答え,地元の行事名を春夏秋冬1つずつ挙げることができ,幼少期の自然の楽しみ方は日常的な活動と捉えていた。都市群学生も行事名は最低2以上挙げることができたが,田畑はなく,自然体験は,特別な活動という認識だった。
調査手続き: それぞれ「山」「川」「田・畑」「海・湖」と書かれたカード片4枚とA3白紙1枚を渡し,カード片を項目間の親近性に従って白紙上に一時的に配置してもらう。次に,各項目についての体験の記憶をたどりながら,連想される事物を示すキーワードを放射状に繋げて記していくよう求める(Figure 1 参照)。
マップの外観が確定したら,カード片を糊づけする。続いて,完成したマップを見ながら特徴的なキーワードについてインタヴューを行い,質問者が新たに得られた詳細な情報をマップにメモしていく。

結果・考察
再生されたキーワード: キーワードの合計数に郊外群・都市群間差はなかったが,前者では「日常的な体験」,後者では「非日常的な体験」に関する想起がより多かった。このことは,都市内部より都市周辺の幼稚園に通う親子の方が日常的に自然に触れている割合が多いという報告(石井ら,2002)と合致する。
キーワード間の繋がり:「日常的な体験」に関する想起では,事物名称の後に関連エピソードが複数想起された。他方,「非日常的な体験」については,行事等の名称が先行し,それに関わる事物名称が連なっていた。以上より,自然事物自体の印象は,雑多な関わりの継続経験をもつ郊外部居住者にとっては強いが,都市部居住者では行事等の経験事実の枠内でしか把握されていないと言えよう。