The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 3:30 PM - 5:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC21] 大学生の時間管理をサポートするアプリケーションの基礎的調査

濱田里羽 (金沢大学)

Keywords:時間管理, 大学生, アプリケーション

問題と目的
 大学生は個々が異なる履修計画を立てたり,ひとり暮らしをしたり,高校時以上に自律的,計画的な学生生活を送ることが求められるが,一方で時間管理に苦慮している学生は多い。都筑ら(2010)においては,大学生484名のおよそ19.6%の学生が時間の使い方に低い満足感であり,横田(2012)の調査では大学2,3年生93名のおよそ35.5%が時間管理ができていないと感じていた。
 大学生1010人を対象にした「マイナビ学生の窓口調べ」(2017)によると,スケジュール管理に用いるツールとして35.8%が「スマートフォンのカレンダーやアプリ」であった。株式会社リクルートキャリアの就職みらい研究所による「大学生の実態調査2016」で明らかになった,大学1~4年生4000名のうち94.8%が自分専用のスマートフォンを保有している現状を鑑みると,デジタル機器によるアプリケーション(以下,「アプリ」)を利用した時間管理はますます普及すると予想される。そこで本研究では,大学生の時間管理をサポートするアプリには現在どのような機能を有したものがあるのか調査する。

方  法
 本研究ではApple社製のデジタル機器に対応しているアプリのダウンロードサイトiTunesにて2018年1月11日に検索を行った。検索の際に使用したキーワードは「“大学生”and“時間”」「“大学生”and“計画”」「“大学生”and“スケジュール”」「“大学生”and“ToDo”」であった。検索結果の中から日本語対応していないアプリ,大学生もしくは学習がターゲットではないもの,ゲームなど時間管理に資するものではないと判断されたもの,長らく更新されておらずiOS11に未対応なものは本研究の調査対象から省いた。収集されたアプリについて,同年3月31日までの間に順次iTunesの機能説明と実際にダウンロードすることで機能について調査した。課金により機能が追加される場合は,課金を行い調査した。

結果と考察
 本調査では,62のアプリが収集された。このうち同一シリーズによるものを1つとして数えると44のアプリが調査対象となった(Table1)。
「単位管理」「授業レビュー」「大学生活全般の情報」は履修計画の立案段階で特定の大学に特化した重要な情報を収集できるものであった。
 「時間割」「就活スケジュール」「単位管理」は計画や予定を記録する機能を持ち,この機能をもつアプリが最も多く収集された。特に「時間割」の中には課題やToDoの一覧を有していたり,特定の大学の学生を対象とし,シラバスや教務情報とリンクしながら学修に関する情報を包括的にサポートしているものもあった。また,「時間割」や「学習記録」の中には,予定の取りこぼし防止に有用でデジタル機器特有の機能であるリマインダーを持つものもあった。こうしたことから大学生の時間管理調査で収集したアプリは計画の記録や管理に重点が置かれている現状がうかがえる。
 計画の実行において,岡崎(2012)も目標達成のための動機づけが時間管理に影響を及ぼす可能性を指摘している。「学習記録」による学習内容や時間の記録,設定された学習時間のカウントダウンにより集中を促す「タイマー」は動機づけを助けると考えられる。さらに,「時間割」「学習記録」「大学生活全般の情報」のアプリには,「友達機能」や「クラス機能」等独自の他者とつながる機能を有しているものがあり,学習状況の共有や仲間とのコミュニケーションは,課題への取り組みや目標達成への動機づけにも資するであろう。
 一方,Macan(1994)や井邑ら(2016)は時間管理の技術や行動の中に「時間の見積り」や「優先順位」も挙げている。課題にかかる時間を見積ったり,複数の課題の優先順位を決めたりすることが苦手な学生もしばしば見受けられ,今後は新たなサポート機能の開発を試みたい。さらに横田(2012)の調査では,時間管理において「直観に頼る」「周りの人に聞く」「時間の意識がない」といった学生も把握されており,自律的な時間管理の習慣化を助けるアプリの開発にも着手したい。

付  記
本研究は,JSPS科研費(課題番号17K14061)の助成を受けたものである。