The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 3:30 PM - 5:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC22] 友人との相互作用および大学適応感が大学生の学習意欲に及ぼす影響

小島弥生 (埼玉学園大学)

Keywords:学習意欲, 友人との相互作用, 大学適応感

 小学生の学習意欲の形成に関する研究(真田他,2014)では,学習における積極的な相互作用(学級での友人との関わり)が児童の被受容感を高め,学級適応感,学習規律,および学習意欲に影響するというモデルを検討している。本研究ではこのモデルが大学生に適用可能かを検討する。大学生の学習意欲に友人との相互作用が及ぼす影響力については,無関連とする研究(e.g.見舘他,2008)もあれば,友人からのソーシャルサポートが学習意欲の低下を防ぐことにつながるとする研究(e.g.福岡,2007)も存在する。見舘他(2008)では相互作用を友人数の観点でのみ捉えているため,ゼミやサークルの仲間等の“友人の質”を考慮した検討が必要であるとの指摘がある。本研究では学年の違いを検討する。

方  法
調査対象者と調査時期 2017年11月に埼玉県内の私立大学において,心理学関連の3つの講義で,授業時間の一部を利用して調査を実施した。調査への参加協力は履修学生の自由意思に基づいていた。1つの講義のみ,参加経験に対する意見・感想を授業担当者に提出することで成績評価点の一部になる旨が事前に履修学生へ伝えられていた。全体で106名の参加協力が得られた。
質問紙の構成 以下の順序で質問を構成していた。(1)学習意欲尺度19項目(4件法),(2)学習規律尺度12項目(5件法),(3)友人との相互作用尺度8項目(4件法)。これら3尺度は真田他(2014)が使用した尺度項目を参考に,下位尺度ごとに選別し,一部の項目を大学生にふさわしい表現に修正して用いた。友人との相互作用尺度に関しては教示文を本研究の内容に合わせて作成した。(4)友人関係への態度尺度20項目(6件法):中園・野島(2003)から下位尺度ごとに5項目ずつ選んで使用した。(5)大学適応感尺度5項目(5件法):樋口(2007)の尺度を用いた。(6)自尊感情尺度10項目(5件法):山本他(1982)の尺度を用いた。自尊感情は真田他(2014)の“被受容感”に代わる変数として測定した。質問紙の最後に学年,性別,年齢の記入を求めた。

結果と考察
分析対象者 参加者106名のうち,不備のあった24名を分析対象から外し,82名(うち男性41名。平均年齢19.7±1.30歳)を分析対象とした(有効回答率77.3%)。学年間の比較を行うため,1,2年生を低学年(45名),3,4年生を高学年(37名)と分類した。
変数の整理 (1)~(3)の3尺度のそれぞれで因子分析を実施した。学習意欲は3下位尺度(自律的関与,学習効力感,積極的行動)に,学習規律は集中力と積極性の2下位尺度に分かれた。友人との相互作用は1因子にまとめられた。いずれも真田他(2014)より下位尺度数が少なくなった。
相関係数の確認とモデルの検討 先行研究と同様のモデルが成立するかを確認する前に,(4)を除く5尺度間の相関を学年ごとに確認した。学年間で相関関係の異なる変数対が複数存在し,特に自尊感情と他の変数との相関関係が低学年ではほとんどの対で無相関となった。そこで,モデルの検討にあたり自尊感情(被受容感)を含んだモデルと含まないモデルの両方を作り,パス解析を用いて検討した。その結果,自尊感情を含んだモデルの適合度が低かったため,本研究では自尊感情を含まないモデル(Figure 1)を検討することとした。
 多母集団同時分析の結果,等値制約をおかないモデルの方が適合度がよかった(χ2(6)=7.34,n.s., CFI=.993,RMSEA=.053)。よって,学年間で変数間の関係性が異なっていると解釈した。
高学年では,相互作用と大学適応感が独立に学習規律(集中力)を媒介して学習意欲(自律的関与)を高めていた。また大学適応感が規律(積極性)を媒介して意欲(積極的行動,学習効力感)を高めていた。一方,低学年では相互作用が規律(積極性)を媒介して意欲(積極的行動)を高める効果の他,大学適応感が意欲(学習効力感)を低める結果が得られた。友人との相互作用および大学適応感が学習意欲に及ぼす影響が学年によって異なる可能性が示唆された。

付  記
本研究は高村眞美さんが2018年1月に埼玉学園大学に提出した卒業論文を再分析・再構成したものである。