[PC23] 技能五輪チームにおける短期的技能熟達プロセス
Keywords:技能熟達, 指導, 質的研究
問題と目的
ブルームの高等教育目標分類(1956;1964)は,認知・情意・精神運動の3領域(KSAともいう)で構成されたルーブリックを提示している。しかし,このうち精神運動領域については,体育・技術・職業訓練等の教育現場から「試験問題」を収拾することが困難だったため,僅かの例外(Simpson, 1966)を除き,体系化されていない(鈴木・渡邊,2007)。
そこで本研究は,企業の「技能五輪」チーム(通常10年程度を要する工業的技能の熟達過程を数年に短縮する)から質的データを収集することにより,短期的な技能の熟達プロセスを説明・予測できる理論を提示する。これにより高等教育や企業内専門校等における運動・技能等幅広い領域における技能の教育・指導に資することが目的である。
方 法
調査協力者 2017年9月から2018年2月にかけて,過去「電気溶接」職種における入賞経験があり,社内に技能五輪チームを設置している企業5社19名からデータを収集した。
調査内容 「技能五輪全国大会前1年間の準備状況」及び「当日のパフォーマンス」について,身体(得意苦手・練習方法等/作業・成否等)・頭(練習への考え方等/考え・注意・判断等)・心(やる気・楽しさ等/緊張・焦り・不安等)のガイドラインを準備,半構造化面接を実施した。
分析方法 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下M-GTA)を用いた。
結 果
技能五輪(電気溶接)選手の競技前1年間の準備は「2面的な発達」,当日のパフォーマンスは「3要素の相互作用」という現象特性を有していた。
準備段階では,選手は「指示された動作(作業要素)の習得」段階から,「動作の定着と精緻化」および「新しい動作の開発」段階に進んで行く。
技能五輪当日は,「環境(製作物の出来や身体の状態等)からの断続的反応」「感情バランスの揺れ」「絶え間ない認知的処理」が相互に影響していた。
考 察
従来実践では「暗黙知」「無心」と単純化されてきたが,熟達者は作業中絶え間なく頭を使っていた。ここに着目することで,新たな指導法が開発できる。例えば,Figure 1は選手の自己評価と指導者の介入に活用できる。準備段階では,左半分を用いて選手の発達段階を評価しそれに応じた訓練を設定できる。右半分を本番に準じた環境(他社との交流試合等)で用いることで,選手と指導者が一緒にすべきことを確認できるだろう。
出来栄えだけで評価したり,ひたすら反復練習するのではなく,心理的な発達段階に応じた練習設計が技能熟達に有効であることが示唆された。
ブルームの高等教育目標分類(1956;1964)は,認知・情意・精神運動の3領域(KSAともいう)で構成されたルーブリックを提示している。しかし,このうち精神運動領域については,体育・技術・職業訓練等の教育現場から「試験問題」を収拾することが困難だったため,僅かの例外(Simpson, 1966)を除き,体系化されていない(鈴木・渡邊,2007)。
そこで本研究は,企業の「技能五輪」チーム(通常10年程度を要する工業的技能の熟達過程を数年に短縮する)から質的データを収集することにより,短期的な技能の熟達プロセスを説明・予測できる理論を提示する。これにより高等教育や企業内専門校等における運動・技能等幅広い領域における技能の教育・指導に資することが目的である。
方 法
調査協力者 2017年9月から2018年2月にかけて,過去「電気溶接」職種における入賞経験があり,社内に技能五輪チームを設置している企業5社19名からデータを収集した。
調査内容 「技能五輪全国大会前1年間の準備状況」及び「当日のパフォーマンス」について,身体(得意苦手・練習方法等/作業・成否等)・頭(練習への考え方等/考え・注意・判断等)・心(やる気・楽しさ等/緊張・焦り・不安等)のガイドラインを準備,半構造化面接を実施した。
分析方法 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下M-GTA)を用いた。
結 果
技能五輪(電気溶接)選手の競技前1年間の準備は「2面的な発達」,当日のパフォーマンスは「3要素の相互作用」という現象特性を有していた。
準備段階では,選手は「指示された動作(作業要素)の習得」段階から,「動作の定着と精緻化」および「新しい動作の開発」段階に進んで行く。
技能五輪当日は,「環境(製作物の出来や身体の状態等)からの断続的反応」「感情バランスの揺れ」「絶え間ない認知的処理」が相互に影響していた。
考 察
従来実践では「暗黙知」「無心」と単純化されてきたが,熟達者は作業中絶え間なく頭を使っていた。ここに着目することで,新たな指導法が開発できる。例えば,Figure 1は選手の自己評価と指導者の介入に活用できる。準備段階では,左半分を用いて選手の発達段階を評価しそれに応じた訓練を設定できる。右半分を本番に準じた環境(他社との交流試合等)で用いることで,選手と指導者が一緒にすべきことを確認できるだろう。
出来栄えだけで評価したり,ひたすら反復練習するのではなく,心理的な発達段階に応じた練習設計が技能熟達に有効であることが示唆された。