The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 3:30 PM - 5:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC25] 科学的な知識の伝達に関する 効果的なアプローチ法の探索

五十嵐寿子1, 鈴木美香#2, 佐藤恵子#3, 松田恭幸#4 (1.東京工業大学附属科学技術高等学校, 2.京都大学iPS細胞研究所, 3.京都大学ウイルス・再生医科学研究所, 4.東京大学大学院)

Keywords:認知, 学習

問題と目的
 近年「読解力」の必要性があちらこちらで取りざたされている。2015年度のPISA型学力調査結果によると,読解力は2012年度調査の4位から8位に転落した。このことと関係しているのかもしれないが,数学や理科の教員から,「単純計算なら解けるのだが,文章問題になると途端に正答率が下がる」といった話をよく聞く。野田・若杉(2014)によると,理系の高校生の8割近くが「国語」に苦手意識を持っていることが指摘されている。
 では理系の高校生は「理系の内容の文章」をきちんと「読めて」いるのだろうか。そこで,京都大学再生医科学研究所が一般の人向けに書いた幹細胞研究についての解説用小冊子を用いて,1.高校生は本当に文章を「読めて」いるのか,2.文章をより正確に「読解」するために必要なものはなにか,3.対話形式,イラストや写真の使用など,読みやすさのために工夫したことは,彼らの読解にどのように寄与しているのか ,の3点について検証し,科学的な知識の伝達についての効果的なアプローチ法を探ると共に,「読解力」に求められる要因について考察することにした。

研究の方法
時期:2016年2月下旬から3月中旬
対象:対象:都内A高等学校(普通高校),B高
等学校(工業高校)に通う高校1年生446名
(有効回答数:358名)
方法:質問紙(事前と事後)と小冊子の読解
〈事前アンケート〉所要時間:10分
(内容) フェイスシート ,科学についての関心を問うもの,知識問題等 計8問
〈小冊子の読解〉 25分
〈事後アンケート〉15分
(内容)科学についての関心を問うもの,知識問題,小冊子 について等 計11問

結  果
1.再生医療についての知識の正誤問題について
小冊子読解前と後との得点の差について対応のあるt検定を用いて検証してみたところ,有意であった(t(357)=28.89,p<.05)。
2. 読解後の点数があがった背景について,共分散構造分析を用いて分析した(Figure.1参照)。
3. 対話形式,イラストや写真の使用などの工夫が「読解力」に影響をもたらしたかどうかという点においては,「対話形式は役に立つ」(p<.01)と「フォント」(p<.01)が有意になるという結果になった。
 読解の過程においてその領域に関する語彙や知識の多少が関わってくることが指摘されている(高橋,1996)が,今回の研究結果において,ある程度の長い文章を根気強く読ませるのには,「その領域への関心」が必要であることが分かった。また,読書量は直接には「読解力」には関わらなかったが,「好みのジャンル」が興味・関心に影響を与え,それが「読解力」につながるというモデルが確認できた。また,分からない語句についてみてみると,A高校は「臍帯血(12%)」,B高校は「矜恃(22%)」というように,校種によって異なっていた。表現においては両校とも比喩を用いたものがわかりにくいと感じていることが分かった。

考察と今後の展望
 説明的文章の読解パターンについては小学生の段階で修得し終えていることが分かっている(岸,2016)。新井(2018)でも,高校受験段階での読解力と偏差値に正の相関があることが述べられていることから,いわゆる構造的に「読み取る力」の訓練は,中学段階で終わっているものといえよう。よって,高校においてそれを鍛えるには,様々な領域への興味・関心の幅を広げることに重点を置く必要があると考えられる。では興味を持ってもらうにはどうしたらよいのか。今回の調査では「マンガの方が良かった」という意見も寄せられているので,マンガ形式と文章形式における読解の差についても検討してゆきたい。