[PC31] 潜在曲線モデル分析によるアクティブ・ラーニング型授業の効果測定(1)
アサーションスキルがグループワーク活動に及ぼす影響
Keywords:アクティブ・ラーニング, アサーションスキル, 潜在曲線モデル分析
教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学修法は,アクティブ・ラーニングと呼ばれている(中央教育審議会, 2012)。近年,大学教育の中で,このようなアクティブ・ラーニング型授業の試みが増えているが,その教育上の成否は授業内で行われる個人のアウトプットの内容に依存することが指摘されている(溝上, 2014)。そしてアクティブ・ラーニング型授業はグループワーク形式を取ることが多いが,グループワーク内で実際にどの種類のアウトプットがどの程度行われ,それが時間の経過に伴いどのように変化していくのかについては十分な検討が行われていない。
そこで本稿では,半期の授業の中で毎回実施されたグループワーク内の活動内容に着目し,そこでみられた個人の発言および協同活動の変化の平均的な軌跡を検討する。また,そのようなグループワーク活動に影響を与える可能性がある個人差変数として「アサーションスキル」を取り上げ,個人のスキルとグループワーク活動との関係を,条件付き潜在曲線モデルで検討する。
方 法
調査対象者 大学生295名(女性109名,男性186名)。半期の必修科目で,オリジナルの心理尺度を作成するグループワークを,4~8 名 の固定メンバーから成る 46グループで実施した。
調査内容 (1)グループワーク活動:杉本(2017) のグループワーク活動尺度(発言活動・協同活動)を使用した。(2)アサーションスキル: 金子ら(2010)のアサーション行動尺度を使用した。
手続き (1)は第 2 回から第 14 回の授業終了時 に毎回測定した。(2)は第 1 回授業開始前に測定した。本研究の手続きは,中部大学倫理委員会の審査を受け承認された(承認番号290076)。
結果と考察
13時点で測定した発言および協同活動得点(各1~4点)の切片および傾きの個人差を説明するものとして,アサーションスキルの4因子(自己主張,他者尊重,自己統制,説得交渉)を説明変数とした条件付き潜在曲線モデルで分析を行った(Figure 1)。説明変数はあらかじめ中心化を行った。
発言活動については,切片平均の推定値は2.900点であった(p<.001)。傾き平均の推定値は0.003点であり有意には達しなかった (p=.308)。切片平均と傾き平均間には有意な負の共分散がみられた (ψαβ=-0.004, p=.027)。また,切片の分散は主張スキル(b=0.301, p<.001)と統制スキル(b=0.152, p=.008)により有意に説明されていた。また,傾きの分散は主張スキル(b=-0.003, p<.001)に有意に説明されていた。以上の結果から,グループワーク内の発言活動については,半期間で有意な変化はなかったが,発言活動が最初の時点で低い学生ほど発言活動の増加量が大きかった。また,発言活動の初期値と変化量には個人差が見られ,主張および統制スキルが低い学生ほど,最初の時点の発言活動量も低かった。そして,主張スキルが低い学生ほど,その後の発言活動の増加量が大きく,グループ活動を通して成長が見られた。
協同活動については,切片平均の推定値は3.152点であった(p<.001)。傾き平均の推定値は-.008点であった(p=.018)。切片平均と傾き平均間には有意傾向の負の共分散がみられた(ψαβ=-0.004, p=.052)。なお,切片の分散は主張スキル(b=0.090, p=.042)と統制スキル(b=0.146, p=.025),傾きの分散は主張スキル(b=-0.024, p<.001)により有意に説明されていた。以上の結果から,グループワーク内の協同活動量は,半期間でいくぶん減少していることが示された。そして,協同活動量が元から高い学生ほど協同活動の減少量が大きい傾向がみられた。また,協同活動の初期値と変化量には個人差が見られ,主張および統制スキルが低い学生ほど,最初の時点の協同活動量も低かった。一方,主張スキルが高い学生ほど,その後の協同活動の減少量が大きく,グループ活動を進める中で協同活動が生じにくくなる様子が伺えた。
そこで本稿では,半期の授業の中で毎回実施されたグループワーク内の活動内容に着目し,そこでみられた個人の発言および協同活動の変化の平均的な軌跡を検討する。また,そのようなグループワーク活動に影響を与える可能性がある個人差変数として「アサーションスキル」を取り上げ,個人のスキルとグループワーク活動との関係を,条件付き潜在曲線モデルで検討する。
方 法
調査対象者 大学生295名(女性109名,男性186名)。半期の必修科目で,オリジナルの心理尺度を作成するグループワークを,4~8 名 の固定メンバーから成る 46グループで実施した。
調査内容 (1)グループワーク活動:杉本(2017) のグループワーク活動尺度(発言活動・協同活動)を使用した。(2)アサーションスキル: 金子ら(2010)のアサーション行動尺度を使用した。
手続き (1)は第 2 回から第 14 回の授業終了時 に毎回測定した。(2)は第 1 回授業開始前に測定した。本研究の手続きは,中部大学倫理委員会の審査を受け承認された(承認番号290076)。
結果と考察
13時点で測定した発言および協同活動得点(各1~4点)の切片および傾きの個人差を説明するものとして,アサーションスキルの4因子(自己主張,他者尊重,自己統制,説得交渉)を説明変数とした条件付き潜在曲線モデルで分析を行った(Figure 1)。説明変数はあらかじめ中心化を行った。
発言活動については,切片平均の推定値は2.900点であった(p<.001)。傾き平均の推定値は0.003点であり有意には達しなかった (p=.308)。切片平均と傾き平均間には有意な負の共分散がみられた (ψαβ=-0.004, p=.027)。また,切片の分散は主張スキル(b=0.301, p<.001)と統制スキル(b=0.152, p=.008)により有意に説明されていた。また,傾きの分散は主張スキル(b=-0.003, p<.001)に有意に説明されていた。以上の結果から,グループワーク内の発言活動については,半期間で有意な変化はなかったが,発言活動が最初の時点で低い学生ほど発言活動の増加量が大きかった。また,発言活動の初期値と変化量には個人差が見られ,主張および統制スキルが低い学生ほど,最初の時点の発言活動量も低かった。そして,主張スキルが低い学生ほど,その後の発言活動の増加量が大きく,グループ活動を通して成長が見られた。
協同活動については,切片平均の推定値は3.152点であった(p<.001)。傾き平均の推定値は-.008点であった(p=.018)。切片平均と傾き平均間には有意傾向の負の共分散がみられた(ψαβ=-0.004, p=.052)。なお,切片の分散は主張スキル(b=0.090, p=.042)と統制スキル(b=0.146, p=.025),傾きの分散は主張スキル(b=-0.024, p<.001)により有意に説明されていた。以上の結果から,グループワーク内の協同活動量は,半期間でいくぶん減少していることが示された。そして,協同活動量が元から高い学生ほど協同活動の減少量が大きい傾向がみられた。また,協同活動の初期値と変化量には個人差が見られ,主張および統制スキルが低い学生ほど,最初の時点の協同活動量も低かった。一方,主張スキルが高い学生ほど,その後の協同活動の減少量が大きく,グループ活動を進める中で協同活動が生じにくくなる様子が伺えた。