[PC33] 潜在曲線モデル分析によるアクティブ・ラーニング型授業の効果測定(3)
学校適応感がグループワーク活動に及ぼす影響
Keywords:アクティブ・ラーニング, 学校適応感, 潜在曲線モデル分析
近年大学教育において,対話を重視したグループワークといった,アクティブ・ラーニング型授業が導入されてきている。協同学習は,競争学習や個別学習に比べ,心理的適応や大学への態度などの改善において優れている (Johnson et al., 1998) が,これらの効果は互恵的相互依存や対面的交流といった,協同的な学習環境が整ってこそ実現される (Johnson et al., 1991)。実際,グループで行われる発言活動や協同活動は,それぞれ自己志向的,他者志向的な汎用的能力,態度,および適応感を促進し (佐藤他, 2016),個人及びグループ全体の成績も向上させる(佐藤他, 2017)。それでは,このようなグループ活動は,どのような個人要因によって促進されるのだろうか。
本研究では,グループ活動の促進におよぼす個人要因として大学への適応感に焦点を当て,条件付き潜在曲線モデルによって検討を行う。
方 法
調査対象者 大学1年生295名 (女性109名,男性186名) で,4~8名の固定メンバーから成る46グループを対象とした。
調査内容 (1) グループワーク中の活動:杉本(2017) のグループワーク活動尺度11項目で構成される「発言活動」「協同活動」2因子を使用した。 (2) 大学への適応感:大久保・青柳 (2003) の大学環境への適応感尺度29項目から,「居心地の良さの感覚」「被信頼感・受容感」「課題・目的の存在」「拒絶感のなさ」の4因子を使用した。
手続き (1) は第2回から第14回の授業終了時に毎回測定し (2) は第1回授業開始前に測定した。
結果と考察
13時点で測定した発言および協同活動得点(各1~4点)の切片および傾きの個人差を説明するものとして,大学への適応感の4因子を説明変数に仮定した条件付き潜在曲線モデルで分析を行った。説明変数はあらかじめ中心化を行った (Figure 1.)。
その結果,発言活動においては,切片の推定値は2.897 (p < .001),傾きの推定値は0.003 (p = .395) であった。また,切片と傾きに有意な負の共分散がみられ (ψ = -0.007, p < .001),もともと発言活動を行っている学生ほど,発言活動の伸びは小さかった。切片の分散に対しては,被信頼感・受容感のパスが有意であった (b = 0.175, p = .012)。傾きの分散に対しては,課題・目的の存在 (b = -0.018, p = .023) および拒絶感のなさのパス (b = 0.022, p = .002) が有意であった。したがって,被信頼感・受容感が高い学生は,グループワーク開始時から発言活動を良く行っていた。また,課題・目的の存在が低く,拒絶感のなさが高い学生ほど発言活動の伸びが大きかった。
また,協同活動においては,切片の推定値は3.154 (p < .001),傾きの推定値は-0.008 (p = .023) であった。つまり,授業を通して協同活動は低減していくことが明らかになった。また,切片と傾きに有意な負の共分散がみられ (ψ = -0.006, p = .008),もともと協同活動を行っている学生ほど,協同活動の低減が大きかった。切片の分散に対しては,課題・目的の存在のパスが有意傾向であった (b = 0.121, p = .058)。傾きの分散に対しては,課題・目的の存在 (b = -0.018 p = .025) および拒絶感のなさのパス (b = 0.016 p = .024) が有意であった。つまり,課題・目的の存在が高い学生は,グループワーク開始時から協同活動を良く行う傾向があるが,課題・目的の存在が高く拒絶感のなさが低い学生ほど,協同活動の低減が大きかった。
以上の結果から,被信頼感・受容感や拒絶感のなさが高い学生は,周りから受け入れられている感覚があることで,安心して自分の意見を発言できるようになり,周りとの協同の低減も抑制できることが示唆された。また,課題・目的の存在が低い学生は,発言できるようになるが,課題・目的の存在が高い,目標や熱意を持って大学生活を送っている学生は,はじめは協同活動を多く行うが,グループワークを行うことで協同に否定的になっていく可能性が示唆された。さらに,はじめに協同活動を多く行う学生の協同活動の低減が大きいことから,グループワークにおける協同活動を促進することの難しさが示唆された。
本研究では,グループ活動の促進におよぼす個人要因として大学への適応感に焦点を当て,条件付き潜在曲線モデルによって検討を行う。
方 法
調査対象者 大学1年生295名 (女性109名,男性186名) で,4~8名の固定メンバーから成る46グループを対象とした。
調査内容 (1) グループワーク中の活動:杉本(2017) のグループワーク活動尺度11項目で構成される「発言活動」「協同活動」2因子を使用した。 (2) 大学への適応感:大久保・青柳 (2003) の大学環境への適応感尺度29項目から,「居心地の良さの感覚」「被信頼感・受容感」「課題・目的の存在」「拒絶感のなさ」の4因子を使用した。
手続き (1) は第2回から第14回の授業終了時に毎回測定し (2) は第1回授業開始前に測定した。
結果と考察
13時点で測定した発言および協同活動得点(各1~4点)の切片および傾きの個人差を説明するものとして,大学への適応感の4因子を説明変数に仮定した条件付き潜在曲線モデルで分析を行った。説明変数はあらかじめ中心化を行った (Figure 1.)。
その結果,発言活動においては,切片の推定値は2.897 (p < .001),傾きの推定値は0.003 (p = .395) であった。また,切片と傾きに有意な負の共分散がみられ (ψ = -0.007, p < .001),もともと発言活動を行っている学生ほど,発言活動の伸びは小さかった。切片の分散に対しては,被信頼感・受容感のパスが有意であった (b = 0.175, p = .012)。傾きの分散に対しては,課題・目的の存在 (b = -0.018, p = .023) および拒絶感のなさのパス (b = 0.022, p = .002) が有意であった。したがって,被信頼感・受容感が高い学生は,グループワーク開始時から発言活動を良く行っていた。また,課題・目的の存在が低く,拒絶感のなさが高い学生ほど発言活動の伸びが大きかった。
また,協同活動においては,切片の推定値は3.154 (p < .001),傾きの推定値は-0.008 (p = .023) であった。つまり,授業を通して協同活動は低減していくことが明らかになった。また,切片と傾きに有意な負の共分散がみられ (ψ = -0.006, p = .008),もともと協同活動を行っている学生ほど,協同活動の低減が大きかった。切片の分散に対しては,課題・目的の存在のパスが有意傾向であった (b = 0.121, p = .058)。傾きの分散に対しては,課題・目的の存在 (b = -0.018 p = .025) および拒絶感のなさのパス (b = 0.016 p = .024) が有意であった。つまり,課題・目的の存在が高い学生は,グループワーク開始時から協同活動を良く行う傾向があるが,課題・目的の存在が高く拒絶感のなさが低い学生ほど,協同活動の低減が大きかった。
以上の結果から,被信頼感・受容感や拒絶感のなさが高い学生は,周りから受け入れられている感覚があることで,安心して自分の意見を発言できるようになり,周りとの協同の低減も抑制できることが示唆された。また,課題・目的の存在が低い学生は,発言できるようになるが,課題・目的の存在が高い,目標や熱意を持って大学生活を送っている学生は,はじめは協同活動を多く行うが,グループワークを行うことで協同に否定的になっていく可能性が示唆された。さらに,はじめに協同活動を多く行う学生の協同活動の低減が大きいことから,グループワークにおける協同活動を促進することの難しさが示唆された。