[PC35] リマインダの内容が授業中の私語抑制に与える効果
Keywords:私語, メタ認知, 大学教育
本研究の目的は,授業中の私語を抑制するために,どのような内容のリマインダを呈示すればよいのか検討することである。3クラスを,私語という行為を禁じるリマインダを呈示する群(私語禁止群),私語が他の学生に迷惑であるというリマインダを呈示する群(迷惑呈示群),リマインダを呈示しない群(非呈示群)に設定し,各群の私語を計測する。中田(2017)は,授業中に私語禁止というリマインダを黒板に呈示して,私語の多いクラスでも私語の少ないクラスと同程度に私語を抑制した。私語禁止というリマインダが私語に関するメタ認知的知識を活性化し,それが私語を抑制したと解釈された。しかし,どのような内容のリマインダが私語抑制に効果的であるかは明らかでない。私語の意識調査では,私語が他の学生に迷惑であると回答した学生が89.1%と最多であったことから(藤川, 1995),学生は私語が他の学生に迷惑であるというメタ認知的知識を有すると推察される。迷惑呈示のリマインダが私語のメタ認知的知識を活性化できるのであれば,私語の最も多いクラスでも私語の少ないクラスや私語禁止群と同程度まで,私語を抑制できると予測された。
ベースラインセッション
質問項目 私語に関する計7項目(出口・吉田, 2005)を用いた。回答は各項目につき3つの観点から((a)自分がどれぐらい私語を行ったか,(b)周りの人がどれぐらい私語を行ったか,(c)項目のような私語を耳にしたとき,あなたはどの程度“迷惑だ”と感じるか),5件法で行うよう求めた((a)(b)1=ぜんぜんしなかった-5=たくさんした,(c)1=感じない-5=非常に感じる)。実験参加者と手続き 3クラスで実施した。Aクラス計169名(M=18.71, SD=1.15),Bクラス計169名(M=19.60, SD=6.26),Cクラス計115名(M=19.39, SD=4.00)。3クラスすべて同様の手続きを用いた。授業開始時,授業終了後に私語に関する調査を実施すると告げ,通常どおり授業を行った。授業終了後,私語に関する質問項目に回答するよう求めた。結果と考察 各項目の評定値につき1要因3水準(Aクラス,Bクラス,Cクラス)の分散分析を行ったところ,表1上段の項目につきクラス間で有意差が見られた。
介入セッション
質問項目 ベースラインセッションで用いた私語についての質問項目と回答形式,私語に関するメタ認知的知識についてたずねる項目(授業中の私語は他の学生に迷惑をかけていると思う(2=はい-0=いいえ)),調査目的への気づきについての項目,これまでの設問以外でこの調査について気になったことをたずねる項目であった。実験参加者と手続き ベースラインセッションで私語の多いAクラスを迷惑呈示群(計80名, M=19.41, SD=2.12),Bクラスを私語禁止群(計80名, M=20.01, SD=0.94),私語の少ないCクラスをリマインダ非呈示群とした(計91名, M=19.01, SD=2.10)。迷惑呈示群や私語禁止群と,リマインダ非呈示群とではリマインダ呈示の有無以外すべて同じ手続きを用いた。授業開始時に黒板の隅にリマインダを書いておき,授業終了時に私語に関する調査を実施すると告げ,通常どおり授業を行なった。授業終了後に質問項目へ回答させた。結果と考察 私語に関するメタ認知的知識の有無を確認するために,“授業中の私語は,他の学生に迷惑となる”という問いに,“はい”と回答した参加者のみを抽出し,その参加者は,私語が他の学生の迷惑になるというメタ認知的知識を有するとみなして,各項目の評定値につき1要因3水準(迷惑呈示群,私語禁止群,非呈示群)の分散分析を行った(表1下段)。その結果,(a)(2)と(b)(2)においてのみ群間に有意差が見られた(F(2, 349)=0.44, 4.62, p < .05)。多重比較の結果,それぞれ私語禁止群が迷惑呈示群や非呈示群より有意に下回っていた。以上から,ベースラインセッションでは3クラス間で私語の程度に差が見られたが,迷惑呈示や私語禁止というリマインダによって,私語の少ないクラスとほぼ同程度まで,私語を抑制できることが示された。今後は私語を抑制するリマインダの効果を持続させるために,リマインダを授業期間中のどのタイミングで何回呈示すればよいのか検討を要する。
ベースラインセッション
質問項目 私語に関する計7項目(出口・吉田, 2005)を用いた。回答は各項目につき3つの観点から((a)自分がどれぐらい私語を行ったか,(b)周りの人がどれぐらい私語を行ったか,(c)項目のような私語を耳にしたとき,あなたはどの程度“迷惑だ”と感じるか),5件法で行うよう求めた((a)(b)1=ぜんぜんしなかった-5=たくさんした,(c)1=感じない-5=非常に感じる)。実験参加者と手続き 3クラスで実施した。Aクラス計169名(M=18.71, SD=1.15),Bクラス計169名(M=19.60, SD=6.26),Cクラス計115名(M=19.39, SD=4.00)。3クラスすべて同様の手続きを用いた。授業開始時,授業終了後に私語に関する調査を実施すると告げ,通常どおり授業を行った。授業終了後,私語に関する質問項目に回答するよう求めた。結果と考察 各項目の評定値につき1要因3水準(Aクラス,Bクラス,Cクラス)の分散分析を行ったところ,表1上段の項目につきクラス間で有意差が見られた。
介入セッション
質問項目 ベースラインセッションで用いた私語についての質問項目と回答形式,私語に関するメタ認知的知識についてたずねる項目(授業中の私語は他の学生に迷惑をかけていると思う(2=はい-0=いいえ)),調査目的への気づきについての項目,これまでの設問以外でこの調査について気になったことをたずねる項目であった。実験参加者と手続き ベースラインセッションで私語の多いAクラスを迷惑呈示群(計80名, M=19.41, SD=2.12),Bクラスを私語禁止群(計80名, M=20.01, SD=0.94),私語の少ないCクラスをリマインダ非呈示群とした(計91名, M=19.01, SD=2.10)。迷惑呈示群や私語禁止群と,リマインダ非呈示群とではリマインダ呈示の有無以外すべて同じ手続きを用いた。授業開始時に黒板の隅にリマインダを書いておき,授業終了時に私語に関する調査を実施すると告げ,通常どおり授業を行なった。授業終了後に質問項目へ回答させた。結果と考察 私語に関するメタ認知的知識の有無を確認するために,“授業中の私語は,他の学生に迷惑となる”という問いに,“はい”と回答した参加者のみを抽出し,その参加者は,私語が他の学生の迷惑になるというメタ認知的知識を有するとみなして,各項目の評定値につき1要因3水準(迷惑呈示群,私語禁止群,非呈示群)の分散分析を行った(表1下段)。その結果,(a)(2)と(b)(2)においてのみ群間に有意差が見られた(F(2, 349)=0.44, 4.62, p < .05)。多重比較の結果,それぞれ私語禁止群が迷惑呈示群や非呈示群より有意に下回っていた。以上から,ベースラインセッションでは3クラス間で私語の程度に差が見られたが,迷惑呈示や私語禁止というリマインダによって,私語の少ないクラスとほぼ同程度まで,私語を抑制できることが示された。今後は私語を抑制するリマインダの効果を持続させるために,リマインダを授業期間中のどのタイミングで何回呈示すればよいのか検討を要する。