[PC39] 科学技術リテラシーと批判的思考態度が防災・減災の学習活動に及ぼす影響
オンライン・ディスカッション環境での検討
Keywords:批判的思考, オンライン討論, 学習者特性
目 的
高等教育における批判的思考教育では,討議(ディスカッション)の果たす役割が重要視される。このアプローチが教室での対面討議だけでなく,e-Learningシステム上でのオンライン・ディスカッションにおいても有効であるとすれば(楠見・田中,2008),批判的思考態度のどのような側面がオンライン・ディスカッションの特徴と関連づけられるのかを明らかにしたい。
方 法
大学学部1年生(215名)を対象にした防災・減災に関する正規授業で,以下の調査を行った。
学習者属性:Big Five尺度短縮版(並川ほか,2012), 批判的思考態度尺度(4因子:平山・楠見,2004),科学技術リテラシー尺度(4因子:川本ほか,2008),情報処理スタイル尺度(2因子:内藤ほか,2004)。
また,授業ではオンライン討議ができる掲示板をLMS(Moodle)上に提供し,その発言を記録した。さらに,授業内で与えた12課題の評価点を分析した。課題は事前に示したルーブリックに従って,授業担当教員が評価した。掲示板の発言については,発言回数,発言文字数を抽出,分析した。
結果と考察
調査した主要な指標間の相関関係をTable.1に示す。批判的思考態度の4因子(「論理的思考への自覚」,「探求心」,「客観性」,「証拠の重視」)は,性格の「外向性」や「開放性」との正の相関関係が認められた。また,科学技術リテラシーのうち「論理重視」,「科学肯定」とは批判的思考態度の全因子とも正の相関関係が認められた。情報処理スタイル尺度の「合理性」との間でも顕著な相関関係が認められた。
次にオンライン討議に参加した学生数を調べたところ,発言が確認できた学生数は全体の31%で,発言者の平均発言回数は2.4回(SD=2.4)であった。
発言の有無による調査項目を比較した結果,発言者では情報処理スタイル尺度「直観性」が有意に高いことがわかった(p<0.05)。また,授業内の課題合計点数は,発言者の方が有意に高かった(p<0.01)。
最終的な学習成果を,調査レポート課題の評価得点や授業理解得点とすることで,学習者属性やオンライン掲示板での発言との関係を,発言者について因果分析した。Figure.1に結果を示す。相反関係と思われる「情緒不安定性」や「証拠の重視」が発言回数に影響を及ぼし,「調和性」や「証拠の重視」も調査レポート課題点にはネガティブに影響した。一方,「科学肯定」や発言回数,調査レポート課題点は,授業理解点に効果があることがわかった。
参考文献
楠見・田中 (2008) 日本教育心理学会50回総会,PF2-35.
並川ほか (2012) 心理学研究,83(2) 91-99.
平山・楠見 (2004) 教育心理学研究,52, 186-198.
川本ほか (2008) 日本心理学会72回大会,2AM151.
内藤ほか (2004) パーソナリティ研究, 13(1) 67-78.
高等教育における批判的思考教育では,討議(ディスカッション)の果たす役割が重要視される。このアプローチが教室での対面討議だけでなく,e-Learningシステム上でのオンライン・ディスカッションにおいても有効であるとすれば(楠見・田中,2008),批判的思考態度のどのような側面がオンライン・ディスカッションの特徴と関連づけられるのかを明らかにしたい。
方 法
大学学部1年生(215名)を対象にした防災・減災に関する正規授業で,以下の調査を行った。
学習者属性:Big Five尺度短縮版(並川ほか,2012), 批判的思考態度尺度(4因子:平山・楠見,2004),科学技術リテラシー尺度(4因子:川本ほか,2008),情報処理スタイル尺度(2因子:内藤ほか,2004)。
また,授業ではオンライン討議ができる掲示板をLMS(Moodle)上に提供し,その発言を記録した。さらに,授業内で与えた12課題の評価点を分析した。課題は事前に示したルーブリックに従って,授業担当教員が評価した。掲示板の発言については,発言回数,発言文字数を抽出,分析した。
結果と考察
調査した主要な指標間の相関関係をTable.1に示す。批判的思考態度の4因子(「論理的思考への自覚」,「探求心」,「客観性」,「証拠の重視」)は,性格の「外向性」や「開放性」との正の相関関係が認められた。また,科学技術リテラシーのうち「論理重視」,「科学肯定」とは批判的思考態度の全因子とも正の相関関係が認められた。情報処理スタイル尺度の「合理性」との間でも顕著な相関関係が認められた。
次にオンライン討議に参加した学生数を調べたところ,発言が確認できた学生数は全体の31%で,発言者の平均発言回数は2.4回(SD=2.4)であった。
発言の有無による調査項目を比較した結果,発言者では情報処理スタイル尺度「直観性」が有意に高いことがわかった(p<0.05)。また,授業内の課題合計点数は,発言者の方が有意に高かった(p<0.01)。
最終的な学習成果を,調査レポート課題の評価得点や授業理解得点とすることで,学習者属性やオンライン掲示板での発言との関係を,発言者について因果分析した。Figure.1に結果を示す。相反関係と思われる「情緒不安定性」や「証拠の重視」が発言回数に影響を及ぼし,「調和性」や「証拠の重視」も調査レポート課題点にはネガティブに影響した。一方,「科学肯定」や発言回数,調査レポート課題点は,授業理解点に効果があることがわかった。
参考文献
楠見・田中 (2008) 日本教育心理学会50回総会,PF2-35.
並川ほか (2012) 心理学研究,83(2) 91-99.
平山・楠見 (2004) 教育心理学研究,52, 186-198.
川本ほか (2008) 日本心理学会72回大会,2AM151.
内藤ほか (2004) パーソナリティ研究, 13(1) 67-78.