The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 3:30 PM - 5:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC45] 自律的協同学級集団形成を促す学級の多様性の特徴と課題に関する探索的調査

自由記述の分析を通して

弓削洋子 (愛知教育大学)

Keywords:学級集団, 多様性, 学級経営

目  的
 自律的協同学級集団形成の規定因として,学級の児童生徒のどのような多様性が促進あるいは抑制要因であるか,その心理的メカニズムは何かを検討する。今回は,教師にとって多様な学級・一様な学級の特徴・課題と,学級の自律性・協同性との関連を分析する。

方  法
調査協力者 小・中学校教諭45名(教歴M11.7年,3-25)
質問紙調査 担任した学級のうち,いろいろな子どもがいる印象の学級(多様学級)と,似通った子どもがいる印象の学級(一様学級)について,自由記述(学級の特徴,学級課題,学級経営)と項目評定(指導行動,学級ルール,教師への態度,学習意欲,個人の自律性,同級生との協同性)を実施した。

結果と考察
 評定項目「自律性」と「協同性」の得点の高低(HL)の組み合わせで学級を3群に分けて,KHCoderを使用して,学級の特徴と課題に関する対応分析を実施した。特徴に関しては,一様学級の場合,自律H協同H学級は「良い」「素直」,自律L協同L学級は,「障害(児が多い)」であった。多様学級では(Figure 1),自律H協同H学級は,「学力格差」,「(多様な中に)発達障害児」,「自閉症児(ASD)」の存在,自律L協同L学級は「家庭環境」「生活習慣」の多様性,「多動」児の存在,「特別支援学校」のなかの様々な「障害」特性であった。学級の課題については,一様学級はいずれの学級群も児童生徒の受け身な面が課題であった。一方,多様学級は(Figure 2),自律H協同H学級は「全員(で)」「(学級)目標(に向かう)」と「それぞれ(に応じる)」ことが課題目標であるが,自律L協同L学級は個々の「学力」「暴力」「一人(でいる)」を課題としていた。
 教師と児童生徒が納得できる能力差や補い合えばコントロール可能な差(学力差,コミュニケーション能力差)による多様性は,学級全員で向かう目標共有と関連し,自律的協同学級集団形成の契機となるが,教師や児童生徒が納得や理解ができない違いやコントロールできない特徴の違い(家庭環境や生活習慣)による多様性は,児童生徒個々の課題のみ浮き彫りになり,自律的協同学級形成が難しいことが示唆される。このような多様性と課題との関連にみられるメカニズムを検討するために,さらに分析する必要がある。

付  記
本研究は科研費番号16K04299の助成を受けた