The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 3:30 PM - 5:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC46] 中学生のパーソナリティと政治的関心

主体的な学習に着目して

川本哲也1, 唐音啓2 (1.東京大学, 2.東京大学)

Keywords:パーソナリティ, 政治的関心, 主体的な学習

問題・目的
 近年,シティズンシップ教育の重要性が国内外で指摘されている。特に青年期における政治的関心は,成人してからの政治的活動や市民活動と関連し (Verba, Schlozman, & Brady, 1995),シティズンシップを育むうえで重要な要因といえる。これまでの青年を対象とした政治的関心に関する研究では,政治的関心を喚起するような日常生活での出来事を経験すると政治的関心が高まったり (Stattin, Hussein, Özdemir, & Russo, 2017),政治的関心がその後の自律性などを高めたりすることなどが示されている (Russo & Stattin, 2017)。しかし,学校教育が青年の政治的関心にいかなる影響を与えうるのかを実証的に検討した研究はあまり見られない。そこで本研究は,近年学校現場で急速に広まっている主体的な学習 (アクティブラーニング) に着目し,生徒のパーソナリティが主体的な学習を通じて政治的関心にいかに影響しうるのかを検討することを目的とした。

方  法
調査協力者・手続き: 2018年1—2月,東京都内の公立中学校1校にて質問紙調査を行った。調査票は学校にて配布され,自宅にて回答し,再び学校にて提出された。調査票への回答は,生徒ならびにその保護者の同意を得た上で行った。中学1年生,2年生の計180名から回答が得られ,そのうち回答に不備のあるものを除いた175名 (中学1年生男子 = 40; 中学1年生女子 = 42; 中学1年生性別不明 = 3; 中学2年生男子 = 38; 中学2年生女子 = 48; 中学2年生性別不明 = 4) から回答を得た。
分析対象項目: A) 日本語版Ten Item Personality Inventory (TIPI-J; 小塩・阿部・カトローニ, 2012)
B) 政治的関心尺度 (原田 (1985) を改変・抜粋して利用)
C) アクティブラーニング尺度 (溝上ら, 2016) 
D) 性別 (0 = male; 1 = female)
分析方法: パーソナリティはアルファ (調和性・誠実性・情緒安定性) とベータ (外向性・開放性) に縮約した。主体的な学習を媒介変数として設定し,2つのパーソナリティ得点から主体的な学習を介して政治的関心を予測する媒介モデルを作成し,共分散構造分析によって分析した。なお,全変数において性別は統制した。

結  果
 パーソナリティが主体的な学習を通じて政治的関心に与える影響: パーソナリティが主体的な学習を通じて政治的関心に与える影響を検討するために媒介分析を行った。その結果,モデルはデータに対して良好なあてはまりを見せた (χ2 = 2.01, df = 1, p = .16; CFI =. 977; RMSEA =. 076; SRMR = .027)。パーソナリティから政治的関心への間接効果は,アルファパーソナリティ→主体的な学習→政治的関心 (B = 2.499, p = .012, 95%CI = [0.025, 0.149]) と,ベータパーソナリティ→主体的な学習→政治的関心 (B = 2.040, p = .041, 95%CI = [0.013, 0.136]) の2つの媒介プロセスがともに統計的に有意となった。また,両パーソナリティから政治的関心への直接効果は有意とならなかった。

考  察
 本研究は,アルファパーソナリティとベータパーソナリティが政治的関心にいかに影響を与えるかを検討した。アルファはそれが高いほど安定的なパーソナリティであることを意味し,ベータはより柔軟なパーソナリティであることを意味する。本研究の結果は,両パーソナリティが学校内での主体的な学習を促進し,それが政治的関心を高める可能性があることを示唆するものである。今後は縦断的な研究を進めることで,本研究で示唆された媒介メカニズムをより精緻に検討する必要があると考えられる。

付  記
 本研究は,公益財団法人 前川財団平成29年度助成を受けた。