[PC60] 授業中の私語への教師の対応と生徒の反応との関連
Keywords:私語, 教師の対応, 生徒
問題と目的
授業中の私語は,様々な学校において生じている(e.g. Durmuscelebi, 2010) 。本研究では,私語への教師の対応と生徒の反応との関連を検討した。
方 法
測定した変数
私語への対応方略 生徒の不品行(misbehavior)に対する教師の対応に関する研究(e.g. Özben, 2010)等を基に,計12項目を作成した。そして,各対応を行った頻度について5段階評定で回答を求めた。
生徒の反応 上記の対応後の生徒の反応に関して,「感情的反応」(例:不安な気持ちになったようだ)や「行動的反応」(例:私語を止めて静かになった)等の観点(佐藤他, 2013)からなる項目を計8つ設定した。そして,5段階評定で回答を求めた。
普段の私語頻度 これまでに「授業と無関係の私語」で教室が騒がしくなった頻度について,5段階評定で回答を求めた。
手続き
調査会社(JMAR)に委託し中学校・高等学校教師300名(150名ずつ)を対象にWEB調査を行った。平均教職経験年数は26.42年(SD: 10.04)であった。
結果と考察
指標の算出
私語への対応方略 因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,因子の解釈可能性等から「間接的対応」(5項目,「机や黒板をたたく」「私語をしないで授業を受けている子どもを褒めた」等),「理由の説明」(3項目,「自分の学習活動の妨げとなることを説明した」等),「直接的制止」(3項目,「話をやめるように言った」等)の3因子解を選択した。各因子を構成する項目に対する回答を合計し,これを項目数で割ったものを指標とした(以下も同様。複数の項目を用いた指標については,α係数は全て.70以上であった)。なお,「間接的対応」については歪度が1を超えていたことから,ルート変換を行った。
生徒の反応 上と同様に因子分析を行い,2因子解を選択した。第1因子は「感情的反応」(4項目),第2因子は「行動的反応」と命名した(3項目)。
普段の私語頻度 1つの質問項目に対する回答を,そのまま指標とした。
私語への対応方略による教師の分類
「普段の私語頻度により,私語への対応方略の頻度が変化する」という逆因果がある可能性が考えられた。このため,普段の私語頻度を独立変数,3つの私語への対応方略の指標を従属変数とした回帰分析を校種ごと(以下も同様)に行い,標準化した残差を算出した。そして,残差を基にクラスター分析(平方ユークリッド距離,Ward法)を行い,解釈可能性等から6つのタイプに教師を分類した(Figure 1; nは中学校18~33,高等学校10~43)。
「方略のタイプ」と「生徒の反応」の関連
方略のタイプ(6水準)を独立変数,生徒の反応(2種類)を従属変数とした分散分析を行った。その結果,高等学校においては,2つの指標共に有意差は示されなかった。一方,中学校においては,「感情的反応」では,「間接的対応」のみを行ったタイプ5が最も否定的な値(ネガティブな感情を生起させる方向)であった。「行動的反応」では,全ての方略を用いたタイプ3や「理由の説明」のみを行ったタイプ1に肯定的な値(私語を抑制する方向)が見られた。また,「間接的対応」のみを行ったタイプ5は最も否定的な値であった。
以上のことから,生徒に否定的感情的を生起させることを避けつつ私語を抑制するには,3つの方略全てを用いることが重要となる可能性が示唆された。また,「間接的対応」のみを用いることは,否定的な結果をもたらしうることも示された。
付 記
本研究はJSPS科研費(JP26380885, JP18K03038)の援助を受けた。
授業中の私語は,様々な学校において生じている(e.g. Durmuscelebi, 2010) 。本研究では,私語への教師の対応と生徒の反応との関連を検討した。
方 法
測定した変数
私語への対応方略 生徒の不品行(misbehavior)に対する教師の対応に関する研究(e.g. Özben, 2010)等を基に,計12項目を作成した。そして,各対応を行った頻度について5段階評定で回答を求めた。
生徒の反応 上記の対応後の生徒の反応に関して,「感情的反応」(例:不安な気持ちになったようだ)や「行動的反応」(例:私語を止めて静かになった)等の観点(佐藤他, 2013)からなる項目を計8つ設定した。そして,5段階評定で回答を求めた。
普段の私語頻度 これまでに「授業と無関係の私語」で教室が騒がしくなった頻度について,5段階評定で回答を求めた。
手続き
調査会社(JMAR)に委託し中学校・高等学校教師300名(150名ずつ)を対象にWEB調査を行った。平均教職経験年数は26.42年(SD: 10.04)であった。
結果と考察
指標の算出
私語への対応方略 因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,因子の解釈可能性等から「間接的対応」(5項目,「机や黒板をたたく」「私語をしないで授業を受けている子どもを褒めた」等),「理由の説明」(3項目,「自分の学習活動の妨げとなることを説明した」等),「直接的制止」(3項目,「話をやめるように言った」等)の3因子解を選択した。各因子を構成する項目に対する回答を合計し,これを項目数で割ったものを指標とした(以下も同様。複数の項目を用いた指標については,α係数は全て.70以上であった)。なお,「間接的対応」については歪度が1を超えていたことから,ルート変換を行った。
生徒の反応 上と同様に因子分析を行い,2因子解を選択した。第1因子は「感情的反応」(4項目),第2因子は「行動的反応」と命名した(3項目)。
普段の私語頻度 1つの質問項目に対する回答を,そのまま指標とした。
私語への対応方略による教師の分類
「普段の私語頻度により,私語への対応方略の頻度が変化する」という逆因果がある可能性が考えられた。このため,普段の私語頻度を独立変数,3つの私語への対応方略の指標を従属変数とした回帰分析を校種ごと(以下も同様)に行い,標準化した残差を算出した。そして,残差を基にクラスター分析(平方ユークリッド距離,Ward法)を行い,解釈可能性等から6つのタイプに教師を分類した(Figure 1; nは中学校18~33,高等学校10~43)。
「方略のタイプ」と「生徒の反応」の関連
方略のタイプ(6水準)を独立変数,生徒の反応(2種類)を従属変数とした分散分析を行った。その結果,高等学校においては,2つの指標共に有意差は示されなかった。一方,中学校においては,「感情的反応」では,「間接的対応」のみを行ったタイプ5が最も否定的な値(ネガティブな感情を生起させる方向)であった。「行動的反応」では,全ての方略を用いたタイプ3や「理由の説明」のみを行ったタイプ1に肯定的な値(私語を抑制する方向)が見られた。また,「間接的対応」のみを行ったタイプ5は最も否定的な値であった。
以上のことから,生徒に否定的感情的を生起させることを避けつつ私語を抑制するには,3つの方略全てを用いることが重要となる可能性が示唆された。また,「間接的対応」のみを用いることは,否定的な結果をもたらしうることも示された。
付 記
本研究はJSPS科研費(JP26380885, JP18K03038)の援助を受けた。