The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 3:30 PM - 5:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC62] 高校生の部活動の特徴と活動経験がライフスキルに与える影響

石田靖彦1, 佐治公規2 (1.愛知教育大学, 2.南陽小学校)

Keywords:部活動, 活動経験, ライフスキル

問題と目的
 ライフスキルとは「日常生活で生じるさまざまな問題や要求に対して,建設的かつ効果的に対処するための必要な能力」であり(WHO, 1997),生涯を通じて必要とされる。
 本研究は,高校生の部活動に着目し,部活動での経験や活動,部活動の特徴やそこでの人間関係が,ライフスキルに与える影響について検討する。

方  法
1.調査対象と調査時期
 4つの公立高校に通う高校3年生1,063名(男子434名,女子629名)を分析対象者とした。調査時期は2017年9月~10月であった。
2.調査内容
1)フェイスシート:性別,所属していた部活動,活動期間,活動実績,部活内での地位・役職
2)部活動の活動内容・特徴:小野・庄司(2015)の尺度を使用した。「部の方針・性格」「顧問の関わり」「部員間の雰囲気の良さ」「部員の主体的な関わり」の4つの下位尺度で構成される。回答は4件法であった。
3)部活における先輩後輩関係:小野・庄司(2015)の尺度を使用した。「リーダーシップとフォロワーシップ」「先輩後輩関係における規律」「先輩・後輩間のコミュニケーション」の3つの下位尺度で構成される。回答は4件法であった。
4)部活動経験評価:島本・石井(2008)の尺度を文化部でも使用できるように表現を変えて使用した。「自己開示」「指導者からの生活指導」「挑戦達成」「周囲からのサポート」「努力忍耐」の5つの下位尺度で構成される。回答は4件法であった。
5)日常生活スキル尺度(大学生版):島本・石井(2006)の尺度を使用した。「計画性」「情報要約力」「自尊心」「前向きな思考」「親和性」「リーダーシップ」「感受性」,「対人マナー」の8下位尺度で構成される。回答は4件法であった。なお,「親和性」「リーダーシップ」「感受性」「対人マナー」は「対人スキル」としてまとめられ,「計画性」「情報要約力」「自尊心」「前向きな思考」は「個人的スキル」としてまとめられる。本研究では,「対人スキル」「個人的スキル」にまとめた得点について分析した。

結果と考察
1.部活動所属の有無とライフスキル
 「対人スキル」「個人的スキル」を従属変数,性別と部活動の所属(運動部n = 677,文化部n = 306,無所属n = 80)を独立変数とする2要因分散分析を行った。その結果,対人スキルについて,運動部は無所属にくらべて有意に高いこと(F(2, 1057)= 5.65, p <.01, 編η2=.01),女子の方が男子よりも高いこと(F(1, 1057)= 22.33,p <.001,偏η²=.02)が示された。下位尺度の分析でもおおよそ同様の結果が示された。
2.部活動の特徴・活動経験がライフスキルに与える影響
 運動部,部活動に所属している生徒を対象として,ライフスキル(対人スキル,個人的スキル)を説明変数とするステップワイズ法の重回帰分析を行った。説明変数は,部活動の活動内容・特徴の4つの下位尺度得点,部活における先輩後輩関係の3つの下位尺度得点,部活動経験評価の5つの下位尺度得点であった。なお,別の分析で性別,活動実績がライフスキルに影響することが示されたため,この2つの変数は統制変数として最初に投入した。運動部,文化部の結果をTable1に示す。部員に対する自己開示や周囲からのサポートは,対人スキルと個人スキルの双方を高める一方,運動部では挑戦達成や努力忍耐が個人的スキルを高めることが示された。さらに部活動での経験だけでなく,活動内容や先輩後輩関係などもライフスキルに影響することが示唆された。