[PC65] 中学校教員のユーモア表出に対する生徒の認知とスクール・モラールとの関連
Keywords:教員の指導行動, 教員のユーモア表出, 中学生
問題と目的
現在,教育現場で表出する諸問題に対処するため,文部科学省(2008)は教員のコミュニケーション能力の向上の必要性を指摘している。学級集団づくりを含めた学級経営,授業の展開,児童生徒への対応など,教員の指導行動の問題を中心に,何を行ったのかという内容だけではなく,どのようにそれがなされたのかという質の問題をも含んでいると考えられる。教員の指導行動がどのようになされたのかという質を捉える試みも,児童生徒に教員の指導行動に付随する雰囲気などを問い,それを整理する形で積み重ねられてきた(e.g., 塙,2013)。例えば,河村・田上(1997)は教員の勢力資源をもとに,児童生徒が教員の指導行動に「罰・強制性」の勢力資源を感じてやらされている状況よりも,「親近・受容性」や「準拠性」,「熟練度」の勢力資源を感じて自ら取り組んでいる状況の方が,スクール・モラールが高くなると指摘している。Cornett(1986)はユーモアを教員のもっとも強力な教育資源であるとし,難読を矯正したり,行動的な問題を抑制したりと,様々な目的に使用することができると指摘しており,大学生に回答させた教員イメージに関する研究では,時代を超えて「おもしろさ(ユーモアがある)」「明るい」が小中高生の共通して,好きだった教員の特徴の上位に位置していることが示されている(e. g., 豊田,1994,1996,2000)。児童生徒の教員認知の先行研究を概観・統括した瀧野(1995)も,「好きな教員・嫌いな教員」について,小学生にはやさしくてユーモアがあり一緒に遊んでくれる親和的な教員が好まれ,中学生になっても,指導的側面が強調されていながら,やはりユーモアのある教員が好まれていると指摘している。児童生徒にとって教員の表出するユーモアと指導行動には関連があることが想定される。つまり,教員の指導行動の中にユーモアを適切に取り入れることは,教育実践の向上につながる可能性が推測できる。本研究は,特に中学校生徒が認知する教員の指導行動の中でのユーモア表出と生徒のスクール・モラールとの関連を検討することを目的とした。
方 法
調査時期 2013年12月に調査を実施した。
調査対象 首都圏の公立中学校2 校570名(男子295,女子275名)を調査の対象とした。
使用尺度 2種類の質問紙による調査を行った。
1)河村・武蔵・河村(2015)の教員のユーモア行動測定尺度24項目。評定は「5:よくある」から「1:まったくない」の5件法である。
2)河村(1999)の学校生活意欲尺度20項目。評定は「5:とてもそう思う」から「1:全くそう思わない」の5 件法である。測定する領域は,友人との関係,学習意欲,教師との関係,学級との関係,進路意識の5領域であり,各下位尺度の加算平均によって得点化される。
結果と考察
教員のユーモア行動測定尺度をもとに,生徒が認知する教員のユーモア行動を3因子ごとに集計し,各平均値と標準偏差をもとに高い群から低い群へとH,M,L群の3群に分類した。そして3群ごとの生徒のSMSの友人との関係, 学習意欲,教師との関係,学級との関係,進路意識の各得点,全ての意欲得点の合計(SMS合計)を集計し,3群間で分散分析を行い,有意差が認められた場合はTukey法による多重比較を行った。その結果,教員の「楽しさ喚起ユーモア」と「元気づけユーモア」を高く認知しているほど,友人との関係,学習意欲,教師との関係,学級との関係,進路意識およびSMS合計の得点全てにおいて,プラスの関連があることが認められた。一方,「皮肉・風刺ユーモア」の認知が低いほど,教師との関係においてプラスの関連があることが認められた。よって,教員が指導行動に「楽しさ喚起ユーモア」と「元気づけユーモア」を取り入れることで,また「皮肉・風刺ユーモア」を控えることで,生徒のスクール・モラールを高める可能性が示唆された。
現在,教育現場で表出する諸問題に対処するため,文部科学省(2008)は教員のコミュニケーション能力の向上の必要性を指摘している。学級集団づくりを含めた学級経営,授業の展開,児童生徒への対応など,教員の指導行動の問題を中心に,何を行ったのかという内容だけではなく,どのようにそれがなされたのかという質の問題をも含んでいると考えられる。教員の指導行動がどのようになされたのかという質を捉える試みも,児童生徒に教員の指導行動に付随する雰囲気などを問い,それを整理する形で積み重ねられてきた(e.g., 塙,2013)。例えば,河村・田上(1997)は教員の勢力資源をもとに,児童生徒が教員の指導行動に「罰・強制性」の勢力資源を感じてやらされている状況よりも,「親近・受容性」や「準拠性」,「熟練度」の勢力資源を感じて自ら取り組んでいる状況の方が,スクール・モラールが高くなると指摘している。Cornett(1986)はユーモアを教員のもっとも強力な教育資源であるとし,難読を矯正したり,行動的な問題を抑制したりと,様々な目的に使用することができると指摘しており,大学生に回答させた教員イメージに関する研究では,時代を超えて「おもしろさ(ユーモアがある)」「明るい」が小中高生の共通して,好きだった教員の特徴の上位に位置していることが示されている(e. g., 豊田,1994,1996,2000)。児童生徒の教員認知の先行研究を概観・統括した瀧野(1995)も,「好きな教員・嫌いな教員」について,小学生にはやさしくてユーモアがあり一緒に遊んでくれる親和的な教員が好まれ,中学生になっても,指導的側面が強調されていながら,やはりユーモアのある教員が好まれていると指摘している。児童生徒にとって教員の表出するユーモアと指導行動には関連があることが想定される。つまり,教員の指導行動の中にユーモアを適切に取り入れることは,教育実践の向上につながる可能性が推測できる。本研究は,特に中学校生徒が認知する教員の指導行動の中でのユーモア表出と生徒のスクール・モラールとの関連を検討することを目的とした。
方 法
調査時期 2013年12月に調査を実施した。
調査対象 首都圏の公立中学校2 校570名(男子295,女子275名)を調査の対象とした。
使用尺度 2種類の質問紙による調査を行った。
1)河村・武蔵・河村(2015)の教員のユーモア行動測定尺度24項目。評定は「5:よくある」から「1:まったくない」の5件法である。
2)河村(1999)の学校生活意欲尺度20項目。評定は「5:とてもそう思う」から「1:全くそう思わない」の5 件法である。測定する領域は,友人との関係,学習意欲,教師との関係,学級との関係,進路意識の5領域であり,各下位尺度の加算平均によって得点化される。
結果と考察
教員のユーモア行動測定尺度をもとに,生徒が認知する教員のユーモア行動を3因子ごとに集計し,各平均値と標準偏差をもとに高い群から低い群へとH,M,L群の3群に分類した。そして3群ごとの生徒のSMSの友人との関係, 学習意欲,教師との関係,学級との関係,進路意識の各得点,全ての意欲得点の合計(SMS合計)を集計し,3群間で分散分析を行い,有意差が認められた場合はTukey法による多重比較を行った。その結果,教員の「楽しさ喚起ユーモア」と「元気づけユーモア」を高く認知しているほど,友人との関係,学習意欲,教師との関係,学級との関係,進路意識およびSMS合計の得点全てにおいて,プラスの関連があることが認められた。一方,「皮肉・風刺ユーモア」の認知が低いほど,教師との関係においてプラスの関連があることが認められた。よって,教員が指導行動に「楽しさ喚起ユーモア」と「元気づけユーモア」を取り入れることで,また「皮肉・風刺ユーモア」を控えることで,生徒のスクール・モラールを高める可能性が示唆された。