[PC69] 協働学習の認識,学校適応感,生活要因が批判的思考態度,ソーシャルスキルに及ぼす影響
中学生と高校生への調査から
Keywords:協働学習, 批判的思考態度, 学校生活要因
問題と目的
批判的思考は長年欧米で注目されてきた思考であり,近年多くの分野で批判的思考の重要性が主張されている(田中・楠見,2007)。一方,ソーシャルスキルとは,対人場面において適切かつ効果的に反応するために用いられる言語的・非言語的な対人行動と,そのような対人行動の発現を可能にする認知過程との両方を包含する概念である(相川,1996)。どちらの考え方も,これからの社会に必要な汎用性の高い資質・能力の一つと考えられている。子どもたちが積極的にお互いの考えを出し合い,吟味・検討し主体的に学び合う,協働学習を取り入れた授業が熱心に行われるようになっていて(松尾・丸野,2007),中等教育の生徒が協働学習を取り組むことで,他者との協働の中で多様な考え方に触れ,考えることが出来る(石橋ら,2014)などの利点も報告されるようになってきた。文部科学省は新学習指導要領において,主体的・対話的で深い学びを掲げている。それゆえこうした協働的な学びがどのような効果をもたらすのか,どのような資質を育むのかを検討することは研究意義が高いと考えられる。本研究の目的は,協働学習を全授業で取り入れている学校において,生徒が認識する協働学習の認識と学校への適応感と学校生活要因が,批判的思考態度とソーシャルスキルにどのような影響を及ぼすのかを検討することである。
方 法
(1)調査対象者 本調査は都内A大学附属中学校・高校を調査対象とした。中学生は,中学1年生から中学3年生までの312名(男子156名,女子156名)のデータを収集した。なお,欠席者欠損値があったデータは分析から削除し,最終的な分析対象者数は267名(男子126名,女子141名)となった。高校生は,高校1年生から高校3年生までの345名(男子175名,女子170名)のデータを収集した。欠席者および欠損値があったデータは分析から削除し,最終的な分析対象者数は301名(男子153名,女子148名)となった。なお90%以上の生徒が四年制大学に進学する高校であり,落ち着いた学校である。
(2)質問紙の構成①学校への適応感尺度:学校への適応感尺度(大久保,2005)を用いた。大久保(2005)は,「居心地の良さの感覚」,「課題・目的の存在」,「被信頼・受容感」,「劣等感の無さ」の4因子30項目。②生活要因:学校生活要因尺度(水津・児玉,2016)を用いた。水津・児玉(2016)は,「教師との関係」,「友人との関係」,「学業」3因子12項目。③協働学習の認識:石橋他(2016)で用いた協働学習における認識尺度を用いた。「協働効用感」,「協働不満足感」,「協働不必要感」,「協働期待感」の4因子18項目。④ソーシャルスキル:相川・藤田(2005)のソーシャルスキル自己評定尺度を用いた。「関係開始」,「解読」,「主張性」,「感情統制」,「関係維持」,「記号化」の6因子28項目。(3)手続きと実施時期 実施時期は2016年12月であった。(4)倫理上の配慮:本研究は東京大学倫理審査委員会より承認を得た(承認番号16-240)。
結 果
批判的思考態度とソーシャルスキルの各側面を目的変数,その他の尺度を説明変数としてステップワイズ法で重回帰分析を行った。
考 察
教師との関係と友人との関係の影響の及ぼし方の違いについて検討が必要であると考える。
批判的思考は長年欧米で注目されてきた思考であり,近年多くの分野で批判的思考の重要性が主張されている(田中・楠見,2007)。一方,ソーシャルスキルとは,対人場面において適切かつ効果的に反応するために用いられる言語的・非言語的な対人行動と,そのような対人行動の発現を可能にする認知過程との両方を包含する概念である(相川,1996)。どちらの考え方も,これからの社会に必要な汎用性の高い資質・能力の一つと考えられている。子どもたちが積極的にお互いの考えを出し合い,吟味・検討し主体的に学び合う,協働学習を取り入れた授業が熱心に行われるようになっていて(松尾・丸野,2007),中等教育の生徒が協働学習を取り組むことで,他者との協働の中で多様な考え方に触れ,考えることが出来る(石橋ら,2014)などの利点も報告されるようになってきた。文部科学省は新学習指導要領において,主体的・対話的で深い学びを掲げている。それゆえこうした協働的な学びがどのような効果をもたらすのか,どのような資質を育むのかを検討することは研究意義が高いと考えられる。本研究の目的は,協働学習を全授業で取り入れている学校において,生徒が認識する協働学習の認識と学校への適応感と学校生活要因が,批判的思考態度とソーシャルスキルにどのような影響を及ぼすのかを検討することである。
方 法
(1)調査対象者 本調査は都内A大学附属中学校・高校を調査対象とした。中学生は,中学1年生から中学3年生までの312名(男子156名,女子156名)のデータを収集した。なお,欠席者欠損値があったデータは分析から削除し,最終的な分析対象者数は267名(男子126名,女子141名)となった。高校生は,高校1年生から高校3年生までの345名(男子175名,女子170名)のデータを収集した。欠席者および欠損値があったデータは分析から削除し,最終的な分析対象者数は301名(男子153名,女子148名)となった。なお90%以上の生徒が四年制大学に進学する高校であり,落ち着いた学校である。
(2)質問紙の構成①学校への適応感尺度:学校への適応感尺度(大久保,2005)を用いた。大久保(2005)は,「居心地の良さの感覚」,「課題・目的の存在」,「被信頼・受容感」,「劣等感の無さ」の4因子30項目。②生活要因:学校生活要因尺度(水津・児玉,2016)を用いた。水津・児玉(2016)は,「教師との関係」,「友人との関係」,「学業」3因子12項目。③協働学習の認識:石橋他(2016)で用いた協働学習における認識尺度を用いた。「協働効用感」,「協働不満足感」,「協働不必要感」,「協働期待感」の4因子18項目。④ソーシャルスキル:相川・藤田(2005)のソーシャルスキル自己評定尺度を用いた。「関係開始」,「解読」,「主張性」,「感情統制」,「関係維持」,「記号化」の6因子28項目。(3)手続きと実施時期 実施時期は2016年12月であった。(4)倫理上の配慮:本研究は東京大学倫理審査委員会より承認を得た(承認番号16-240)。
結 果
批判的思考態度とソーシャルスキルの各側面を目的変数,その他の尺度を説明変数としてステップワイズ法で重回帰分析を行った。
考 察
教師との関係と友人との関係の影響の及ぼし方の違いについて検討が必要であると考える。