The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

Sat. Sep 15, 2018 3:30 PM - 5:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC70] 中学校・高等学校におけるストレス・マネジメント教育の現状

養護教諭に対するアンケート調査から

日下虎太朗1, 橋本創一2, 三浦巧也3, 山中小枝子#4 (1.東京学芸大学大学院, 2.東京学芸大学, 3.東京農工大学, 4.東京学芸大学大学院)

Keywords:高校生, ストレス, ストレス・マネジメント

問題と目的
 平成28年度の文部科学省の調査(文部科学省, 2018)によると,中学校・高等学校における暴力行為の発生件数は約3万7,000件,いじめの認知件数は約8万4,000件,不登校生徒数は約15万2,000人となっており,中学・高校生の問題行動・学校不適応の問題は依然として深刻な状況にある。これらの背後には,ストレスや感情制御などの心理的な要因が潜んでいると考えられている(岡田, 2002)。したがって,このような問題行動や学校不適応は心理的な問題と捉えることができる。中学・高校生の心理的な問題に対する取り組みは,スクールカウンセラーの活用や担任をはじめとする教員との面談などを主として学校現場の様々な場面で行われているが,いずれも個別的な対応が多く,集団に対して開発的・予防的な取り組みの効果を期待して実施された実践は少ない。学校現場におけるストレス・マネジメント教育(以下SME)をはじめとする一次予防的プログラムの開発は急務であると考える。そこで,現況について明らかにする。

方  法
調査対象:一都三県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)の公私立中学・高等学校500校(養護教諭)。
調査時期:2017年7~8月。
調査方法:下記質問紙を郵送にて配布・回収。
質問紙内容:(1)最近の生徒のストレスに関する認識(増減,ストレッサー,ストレス反応,適切なコーピングができているか,SMEを実施しているか),(2)SMEを実施している学校における「内容及び効果・課題」,未実施校も含めた「SMEに期待する効果」,を(1)は単一選択式,(2)は自由記述で回答依頼した。
分析方法:(1)は単純集計し,(2)についてはKJ法を用いて,カテゴリー化を行った。
なお,本研究の調査協力及び発表について了解を得た上で,個人情報には十分に留意し,倫理的配慮を行った。

結  果
 返送された272校(回収率54%)を分析対象とした。 各校の回答者の平均教員年数は17.4年(SD:11.3),校種は中学校12.9%,高等学校72.1%,中等教育学校3.3%,中高併設9.6%,その他1.8%であった. 最近の生徒のストレスについての認識は,増加傾向にある64.9%,あまり変わらない32.1%,その他3.1%であり,減少傾向にあると答えた教員は見られなかった。最も多いと思われるストレッサーとしては,教師との関係0.6%,友人との関係50.6%,部活動1.1%,学業15.5%,家族との関係31%,その他1.1%であった。最も多いと思われるストレス反応としては,感情的反応11.7%,気分的反応41.1%,身体的反応35.6%,行動的反応11.1%,その他0.6%であった。適切なコーピング方略については,全く身につけていない7.6%,あまり身につけていない69.1%,ある程度身につけている19.1%,身につけている0.8%,その他2.7%であった。
 SME実施校における実施内容及び効果・課題については,Table 1 のように,それぞれ「実施内容について(3つの大カテゴリーと7つの中カテゴリー,7つの小カテゴリー)」,「実施効果について(4つの大カテゴリー,10個の小カテゴリー)」,「実施課題について(3つの大カテゴリー,8つの小カテゴリー)」に整理された。
 SMEに期待する効果については,Table 2 のように4つの大カテゴリー,10個の中カテゴリー,21個の小カテゴリーに整理された。

考  察
 中学・高校生のストレスの状況については,65%の養護教諭が「増加傾向にある」と回答しており,多くの先生が,中高生を取り巻く状況は厳しくなっていると認識していることが窺える。その一方で,コーピング習得については,約8割の先生が不十分であると考えていることがわかった。最も多いストレッサーについては,約半数が友人関係であると考えており,続いて家族との関係,学業,部活動,教師との関係となった。最も多いと思われるストレス反応については,気分的反応に続いて身体的反応,感情的反応,行動的反応,その他という結果になった。SMEを実施している学校はまだ少ないものの,そこで得られている効果は期待されているものと,そぐわないことが示唆された。
本研究の結果を生徒指導担当教諭を対象とした調査(日下ら, 2018)と照らして,学校現場にSMEを取り入れていくにあたっての課題を詳しく検討していく必要がある。