The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

Sun. Sep 16, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD02] 大学生におけるキャリア発達と次世代育成意識の関連性

寺本妙子 (開智国際大学)

Keywords:キャリア発達, 養護性, 次世代育成力

問題と目的
 大学生が模索する将来のライフスタイルには,職業に関する領域と結婚や子育てといった生活に関する領域が含まれると考えられる。職業や家庭等における役割の獲得と経験はキャリア(career)という用語で捉えられるが,両者は二者択一ではなく,両者の調和(ワーク・ライフ・バランス)が昨今の重要課題とされている。本研究では,大学1年生を対象とし,進路選択に対する自己効力と家庭生活,特に子育てや次世代育成に関する意識(養護性,次世代育成力),及び自己形成の関連性について検討した。

方  法
 参加者 関東にある私立大学の教育学部に所属する1年生36名(男子18名,女子18名,平均年齢 = 19.22±0.90)。
 手続き 進路選択や次世代育成に関する意識,及び自己形成についてアンケート調査を実施した。使用した心理尺度は,進路選択に対する自己効力尺度(浦上,1995),養護性尺度(楜澤・福本・岩立, 2009),次世代育成力尺度(菱谷・落合・池田・高木,2009),アイデンティティ尺度 (下山,1992)であった。進路選択自己効力尺度は1因子構造,養護性尺度は4因子構造(幼い子どもに対する共感性,技能の認知,親への準備性,子どもの非受容性(得点を逆転化して受容性)),次世代育成力尺度は4因子構造(誕生肯定の自信,自己成長の自信,伝えるものを持っているという継承の自信,地域社会の力を借りることができるという自信),アイデンティティ尺度は2因子構造(基礎,確立)であった。いずれも,高得点ほどその程度が高いことを示した。まず,尺度得点間の相関について検討した。次に,進路選択自己効力得点の平均値(M = 79.50)で高群(17名)と低群(16名)に2群化し,性別と群別を独立変数とする二要因分散分析を行った(IBM SPSS Statistics 22使用)。
倫理的配慮 本研究は発表者の所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得て実施された。

結果と考察
 各尺度の平均得点間の相関係数をTable 1に示した。進路選択自己効力と次世代育成意識に関しては,技能を除いた全ての下位尺度間で正の有意な相関関係が認められ(rs = .49 - .69, ps < .01),進路選択における自己効力の高さと次世代育成意識の高さの関連性が示唆された。また,アイデンティティの基礎と確立の両方で正の有意な相関がみられたのは,準備性,受容性,継承においてであった(rs = .39 - .60, ps < .05)。誕生肯定と自己成長は基礎においてのみ(rs = .54 - .64, ps < .01),技能と地域社会は確立においてのみ同様の傾向が認められた(rs = .34 - .36, p < .05)。これらの結果より,自己形成の達成と次世代育成意識の高さの関連性が示唆された。
 二要因分散分析の結果,性別の主効果は受容性(F(1,29) = 9.05, p < .01,ηp2 = .19, 男子 < 女子)において,群別の主効果は継承(F(1,29) = 6.37, p < .05,ηp2 = .15, 低群 < 高群)において見られた。交互作用は,準備性(F(1,29) = 6.69, p < .05,ηp2 = .17),誕生肯定(F(1,29) = 15.14, p < .01,ηp2 = .26),自己成長(F(1,29) = 9.39, p < .01,ηp2 = .20)で認められた(Figure 1)。単純主効果の検定の結果,いずれの従属変数においても,男子では高群の得点が,低群では女子の得点が有意に高いことが示された。女子は進路選択に関する自己効力の高低に関わらず,安定した次世代育成意識の様相を呈した。一方,男子は低い自己効力と低い次世代育成意識の関連が示され,進路選択に関連する意識の高低が子育てや次世代育成に対する意識の関連要因であることが示唆された。
 以上のことから,次世代育成意識に関して,その高さは,自己形成の達成度と進路選択に関する自己効力の高さと関係すること,及び,この自己効力の影響における性差が示唆された。このような傾向が学年進行によってどのように変化するのか明らかにし,キャリア支援の在り方の模索も含めた継続的な検討が必要である。

付  記
本研究は平成28年度・29年度開智国際大学個人課題研究費の助成を得て実施された。