The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

Sun. Sep 16, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD07] 児童の自尊感情,セルフ・モニタリングおよびセルフ・コントロールの関連

大嶽さと子1, 吉橋由香2, 谷伊織3, 永田雅子4 (1.名古屋女子大学短期大学部, 2.ならい心療内科, 3.愛知淑徳大学, 4.名古屋大学)

Keywords:自尊感情, セルフ・モニタリング, セルフ・コントロール

問題と目的
 現代の日本の子どもは諸外国よりも自尊感情が低いとされ(速水,2014),人間関係や学業成績の良好さ,問題行動の起こりにくさなどとの関連もみられる(田中・上地・市村,2003)。そのため学校現場でも自尊感情の高まりを目的とした取り組みがなされるようになってきた。
 自尊感情を高めるために前田(2011)は,セルフ・モニタリングによって自分の長所を自己観察させ,肯定的な自己概念を形成する必要があると述べている。セルフ・モニタリングについては,小原・上淵(2001)が小学生の学習場面に関する実験を行っている。その中で,学習の始発時に遊びたいという気持ちを制御し,学習に向かうような情動をコントロールするプロセスにおいて,自己の情動に関するモニタリング操作を取り入れることで,情動制御のスムーズさやレパートリー数に変化がみられることが示されている。このように考えると,生活場面でも,状況に応じたセルフ・モニタリングを行うことで,情動をコントロールし望ましい行動が生起する可能性がある。自尊感情は自らをコントロールしようとする力や向上心が支えているという指摘もあることから(永田,2007),セルフ・モニタリングやセルフ・コントロールなどの概念も,これらを伸ばすことで自尊感情の高まりにつなげることができると考えられる。
 そこで本研究では,小学生を対象とした質問紙調査を実施し,自尊感情とセルフ・モニタリングおよびセルフ・コントロールの関連について検討する。

方  法
調査対象者 公立A小学校に在籍する4年生から6年生までのうち,保護者より研究の趣旨に同意が得られた児童432名(4年生140名,5年生150名,6年生142名)を調査対象者とした。調査は学級ごとに各担任教諭によって実施された。
調査内容 (1)自尊感情:青島(2008)で作成された「自尊感情尺度」を使用した。9項目4件法。(2)セルフ・モニタリング:谷・吉橋・大嶽・永田(2017)で作成された「小中学生臨床用セルフ・モニタリング尺度」を使用した。「気づき・観察」「評価・分析」「対処行動」の3段階からなり,全36項目4件法。(3)セルフ・コントロール:庄司(1993)で作成された「児童のself-control尺度」を使用した。セルフ・コントロールを動機,行動,価値の組み合わせとして捉え,「個人的抑制(PI)」「個人的促進(PF)」「社会的抑制(SI)」「社会的促進(SF)」の4カテゴリーからなる。全20項目4件法。

結果と考察
 3つの尺度について尺度得点を算出し,尺度間の相関係数を求めた(Table 1)。その結果,全ての尺度間において,正の相関が認められ,3つの尺度は関連が強いということがわかった。自尊感情については,特にセルフ・モニタリングの「対処行動」と,セルフ・コントロールの「総合計」「個人的促進」において,.40以上の比較的強い相関がみられた。セルフ・モニタリングによって,その状況において望まれている適切な対処行動が実際にとれることで,親や教師などの周囲の大人から褒められることとなる。そのことが,自尊感情の高さにつながるのかもしれない。セルフ・コントロールについては,自らの欲求とは異なる目標が求められる場面において個人的な欲求を抑え我慢をし,状況に即した望ましい行動を起こせることが自尊感情の高さと比較的強く関連していることがわかった。このことは,小原・上淵(2007)の学習場面における実験と同様の結果が得られたといえる。また,セルフ・モニタリングのうち,「評価分析」と「対処行動」が,いずれもセルフ・コントロールの「総合計」「個人的促進」「社会的促進」においても.40以上の比較的強い相関がみられた。自らの行動を客観的に捉えて分析し,自己規範や社会規範に即した望ましい行動を起こせる力を育むことが必要であると考えられた。