[PD19] 児童のセルフマネジメントとグループディスカッションでの発言との関連
小学校3年生の道徳授業からの分析
Keywords:グループディスカッション, セルフマネジメント, 小学生
問題と目的
小学校の「特別の教科 道徳」では,その指導にあたり「『児童が多様な感じ方や考え方に接する中で,考えを深め,判断し,表現する力などを育むことができる』よう,自分の考えを基に話し合ったり書いたりするなどの言語活動を充実すること」(文部科学省,2017)への配慮が求められる。その手立てとしてグループディスカッションの機会を取り入れることは,少なくとも「自分の考えを基に話し合う」ことに資するだろう。ただし,授業でのグループディスカッションが,ただちに『児童が多様な感じ方や考え方に接する中で,考えを深め,判断し,表現する力を育むことができる』かについては,実証的に検討する余地はある。
本研究では,上述のことを考える目安として,児童の道徳的な態度に通じる心理的特性と考えられる「セルフマネジメント(日常生活の中で多様な人々とともに活動していくために必要な行動を適切に選択し実践する行動)の行動意図」に着目する。同時にグループディスカッションでの児童の発言は,他の児童の思考を深める情報源であるとみなす。その上で,本研究の目的は,児童のセルフマネジメントの行動意図が,当該児童のグループディスカッションでの発言のあり方と関連しているかについて検討することである。
方 法
対象児童:愛知県公立小学校3年生の学級に在籍する児童28名(男児11名,女児17名)であった。
質問紙:大学生を対象とした「社会人基礎力に通じるセルフマネジメントの行動意図」尺度(西口・定金・谷田・塩見,2018)の項目をもとに,小学生の「セルフマネジメントの行動意図」を測定するための36項目を用意した。各項目に対して,「1.あまりあてはまらない」「2.すこしあてはまる」「3.まあまああてはまる」「4.ひじょうにあてはまる」の4件法で回答を求める形式とした。
対象児童への実施後,回答の因子分析(最尤法,プロマックス回転)をした結果,西口他(2018)の分析で示された因子の一部に内容が類似した2因子を抽出した。各々に負荷量が高い項目をもとに,「開発マネジメント」,「予防マネジメント」という下位尺度を設けた(Table 1)。
道徳でのグループディスカッションの発言:対象児童の学級を対象に,4回の道徳の授業の中で行われた3~4名1組のグループディスカッションでの発言を,ボイスレコーダーとビデオカメラにより記録した。いずれの授業回でも,物語教材の登場人物等の心情や行動意図,さらには授業全体を踏まえた上で人間として大切なことについて話し合う機会が計3回(全体で計12回)設けられた。そのうち,「登場人物等の行動意図」および「人間として大切なこと」について話し合われた7回分の話し合いでの発言内容を,「開発マネジメント」に関する発言,「予防マネジメント」に関する発言に分類し,各々の発言数を導いた。ただし同じ内容の発言の繰り返しは,1回の発言数とみなした。
結果と考察
分析の結果,児童たちが回答した質問紙における「開発マネジメント」の尺度得点と,彼らのグループディスカッションのもとでの「開発マネジメント」に関する発言数との間に,有意な相関(r=.43,p<.05)がみられた(Table 2)。
児童が自らの生活の中で重視する行動意図が,道徳の授業でのグループディスカッションでの発言に反映しうることを確認した。『児童の多様な感じ方や考え方に接する』道徳の授業において,グループディスカッションを取れ入れる際に,児童の心理的特性を踏まえたグループ編成を留意することには意義があると言えるだろう。
小学校の「特別の教科 道徳」では,その指導にあたり「『児童が多様な感じ方や考え方に接する中で,考えを深め,判断し,表現する力などを育むことができる』よう,自分の考えを基に話し合ったり書いたりするなどの言語活動を充実すること」(文部科学省,2017)への配慮が求められる。その手立てとしてグループディスカッションの機会を取り入れることは,少なくとも「自分の考えを基に話し合う」ことに資するだろう。ただし,授業でのグループディスカッションが,ただちに『児童が多様な感じ方や考え方に接する中で,考えを深め,判断し,表現する力を育むことができる』かについては,実証的に検討する余地はある。
本研究では,上述のことを考える目安として,児童の道徳的な態度に通じる心理的特性と考えられる「セルフマネジメント(日常生活の中で多様な人々とともに活動していくために必要な行動を適切に選択し実践する行動)の行動意図」に着目する。同時にグループディスカッションでの児童の発言は,他の児童の思考を深める情報源であるとみなす。その上で,本研究の目的は,児童のセルフマネジメントの行動意図が,当該児童のグループディスカッションでの発言のあり方と関連しているかについて検討することである。
方 法
対象児童:愛知県公立小学校3年生の学級に在籍する児童28名(男児11名,女児17名)であった。
質問紙:大学生を対象とした「社会人基礎力に通じるセルフマネジメントの行動意図」尺度(西口・定金・谷田・塩見,2018)の項目をもとに,小学生の「セルフマネジメントの行動意図」を測定するための36項目を用意した。各項目に対して,「1.あまりあてはまらない」「2.すこしあてはまる」「3.まあまああてはまる」「4.ひじょうにあてはまる」の4件法で回答を求める形式とした。
対象児童への実施後,回答の因子分析(最尤法,プロマックス回転)をした結果,西口他(2018)の分析で示された因子の一部に内容が類似した2因子を抽出した。各々に負荷量が高い項目をもとに,「開発マネジメント」,「予防マネジメント」という下位尺度を設けた(Table 1)。
道徳でのグループディスカッションの発言:対象児童の学級を対象に,4回の道徳の授業の中で行われた3~4名1組のグループディスカッションでの発言を,ボイスレコーダーとビデオカメラにより記録した。いずれの授業回でも,物語教材の登場人物等の心情や行動意図,さらには授業全体を踏まえた上で人間として大切なことについて話し合う機会が計3回(全体で計12回)設けられた。そのうち,「登場人物等の行動意図」および「人間として大切なこと」について話し合われた7回分の話し合いでの発言内容を,「開発マネジメント」に関する発言,「予防マネジメント」に関する発言に分類し,各々の発言数を導いた。ただし同じ内容の発言の繰り返しは,1回の発言数とみなした。
結果と考察
分析の結果,児童たちが回答した質問紙における「開発マネジメント」の尺度得点と,彼らのグループディスカッションのもとでの「開発マネジメント」に関する発言数との間に,有意な相関(r=.43,p<.05)がみられた(Table 2)。
児童が自らの生活の中で重視する行動意図が,道徳の授業でのグループディスカッションでの発言に反映しうることを確認した。『児童の多様な感じ方や考え方に接する』道徳の授業において,グループディスカッションを取れ入れる際に,児童の心理的特性を踏まえたグループ編成を留意することには意義があると言えるだろう。