[PD21] 高校初年次生における構造方略の持続的使用が学習適応と学業達成に及ぼす影響(1)
説明文の理解過程を通じた構造同定がもたらす影響
Keywords:構造方略, 学習適応, 学業達成
目 的
高校初年次の学習適応を支援するために,山本・織田(2018)は,高1の構造方略を使用した説明文理解が学習適応や学業達成に及ぼす影響過程を示した。ただ主観的評定法で構造方略の影響がみられたものの,説明文理解過程の最中で実際にどれくらい持続的に構造方略が使用されたかは不明であった。そこで,本研究では, 山本・織田・島田(2017)の文配列課題を用いて,体制化過程の最中でどれくらい持続的に構造の同定がされているかを評価し,この構造同定の持続性が学習適応と学業達成に及ぼす影響を検証した。
方 法
実施日:2017年8月2日。
参加者:SSHに指定されている公立高校1年生の2クラス。76人(男34人,女42人)。
手続き:以下を実施した。
理解過程時の構造同定率:山本・織田(2015)に基づき,参加者にPC上で12の説明文からなる文配列課題を実施し,最上位構造に即して3つの配列位置(ランク)に分け,各文が適切なランクに配列された割合(構造同定率)を,試行毎に求めた。第1~6試行(前半)および第7~12試行(後半)で,構造同定率の平均値を算出した。」
説明文理解度:正しい順序で説明文を提示し,よく読んで理解・記憶させ,計算課題の後に,再生課題を実施した。連得点法で再生連得点を求めた。
学習適応度:4因子からなる教研式「学習適応性検査」(AAI)。76項目を4段階で評定させた。
学業達成:5教科(英語,数学,国語,理科,社会)の理解度を7段階で評定させた。
構造方略の使用傾向:犬塚(2002)の構造注目方略の使用傾向尺度を用いた。項目は,「意味段落に分けて考える」等の7項目。7段階で評定させた。
結果と考察
1) 構造方略の使用傾向がもたらす影響過程
山本・織田(2018)のモデルを用いてパス解析を行った。分析ツールにはAMOS 21.0を用い,係数の推定には最尤法を用いた。適合度指標は,χ2= 0.99 (df = 1, p = .32), GFI=.993, AGFI=.929, CFI=1.000, RMSEA=.000, となり,適合度は高いと判断した。ここから,構造方略の使用傾向が学習適応に直接的な影響を及ぼし,説明文理解と学業達成のいずれかを介して学業達成に影響を及ぼすことが確認された。
2) 構造方略の使用傾向と持続的な構造同定
構造方略の使用傾向(2: 下位群/上位群)×構造同定率 (2:前半/後半)の2要因分散分析を行ったところ,構造同定率の主効果が有意となり,Figure 1のように交互作用が有意となった(F(1, 74)=4.05, p<.05)。単純主効果の分析から,上位群に比べて下位群で前半から後半にかけて構造同定率が落ち込むことが示された。
3) 持続的な構造同定がもたらす影響過程
Figure 2のモデルに基づき,多母集団同時分析を行った。適合度指標は,χ2= 3.82 (df = 4, p = .43), GFI=.999, AGFI=.994, CFI=1.000, RMSEA=.000,となり,高いと判断した。上位群は下位群と異なり,体制化過程の全般を通じて構造同定を高めるため説明文理が促され,結果として5教科の学業達成が促された。
4) 総括
構造方略の使用が高い高1は理解過程を通じて構造方略を持続的に使用することで学習適応や学業達成を高めていく一方で,低い高1は構造方略の使用を前半のみに止め,学習適応や学業達成を低めることになったと解釈できる。
高校初年次の学習適応を支援するために,山本・織田(2018)は,高1の構造方略を使用した説明文理解が学習適応や学業達成に及ぼす影響過程を示した。ただ主観的評定法で構造方略の影響がみられたものの,説明文理解過程の最中で実際にどれくらい持続的に構造方略が使用されたかは不明であった。そこで,本研究では, 山本・織田・島田(2017)の文配列課題を用いて,体制化過程の最中でどれくらい持続的に構造の同定がされているかを評価し,この構造同定の持続性が学習適応と学業達成に及ぼす影響を検証した。
方 法
実施日:2017年8月2日。
参加者:SSHに指定されている公立高校1年生の2クラス。76人(男34人,女42人)。
手続き:以下を実施した。
理解過程時の構造同定率:山本・織田(2015)に基づき,参加者にPC上で12の説明文からなる文配列課題を実施し,最上位構造に即して3つの配列位置(ランク)に分け,各文が適切なランクに配列された割合(構造同定率)を,試行毎に求めた。第1~6試行(前半)および第7~12試行(後半)で,構造同定率の平均値を算出した。」
説明文理解度:正しい順序で説明文を提示し,よく読んで理解・記憶させ,計算課題の後に,再生課題を実施した。連得点法で再生連得点を求めた。
学習適応度:4因子からなる教研式「学習適応性検査」(AAI)。76項目を4段階で評定させた。
学業達成:5教科(英語,数学,国語,理科,社会)の理解度を7段階で評定させた。
構造方略の使用傾向:犬塚(2002)の構造注目方略の使用傾向尺度を用いた。項目は,「意味段落に分けて考える」等の7項目。7段階で評定させた。
結果と考察
1) 構造方略の使用傾向がもたらす影響過程
山本・織田(2018)のモデルを用いてパス解析を行った。分析ツールにはAMOS 21.0を用い,係数の推定には最尤法を用いた。適合度指標は,χ2= 0.99 (df = 1, p = .32), GFI=.993, AGFI=.929, CFI=1.000, RMSEA=.000, となり,適合度は高いと判断した。ここから,構造方略の使用傾向が学習適応に直接的な影響を及ぼし,説明文理解と学業達成のいずれかを介して学業達成に影響を及ぼすことが確認された。
2) 構造方略の使用傾向と持続的な構造同定
構造方略の使用傾向(2: 下位群/上位群)×構造同定率 (2:前半/後半)の2要因分散分析を行ったところ,構造同定率の主効果が有意となり,Figure 1のように交互作用が有意となった(F(1, 74)=4.05, p<.05)。単純主効果の分析から,上位群に比べて下位群で前半から後半にかけて構造同定率が落ち込むことが示された。
3) 持続的な構造同定がもたらす影響過程
Figure 2のモデルに基づき,多母集団同時分析を行った。適合度指標は,χ2= 3.82 (df = 4, p = .43), GFI=.999, AGFI=.994, CFI=1.000, RMSEA=.000,となり,高いと判断した。上位群は下位群と異なり,体制化過程の全般を通じて構造同定を高めるため説明文理が促され,結果として5教科の学業達成が促された。
4) 総括
構造方略の使用が高い高1は理解過程を通じて構造方略を持続的に使用することで学習適応や学業達成を高めていく一方で,低い高1は構造方略の使用を前半のみに止め,学習適応や学業達成を低めることになったと解釈できる。