The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

Sun. Sep 16, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD26] 中学生における学習先延ばし行動と学級の雰囲気

松本瑠蘭1, 相良順子2 (1.聖徳大学大学院, 2.聖徳大学)

Keywords:中学生, 学習先延ばし行動, 学級の雰囲気

問題と目的
 学習先延ばし行動については,おもに大学生を対象に研究されている(藤田,2005;龍・小川内,2013)が,児童期から成人期にも認められる問題行動であるという指摘もある(龍ら,2013)。そこで本研究においては,対象を中学生とし,学習先延ばし行動に関連する要因として,環境としての「学級の雰囲気」に着目をした。本研究は,学習先延ばし行動に学級の雰囲気が影響するかを明らかにし,加えて先行研究より完全主義,達成目標が影響するかを再検討することを目的とする。

方  法
 調査対象 関東地方の公立中学校の第1学年から第3学年の男女,計287名。
 調査内容 以下の4つの尺度から構成した質問紙で行った。(1)中学生用学習課題先延ばし行動測定尺度(藤田・仲澤,2013)9項目4件法。(2)学級の雰囲気尺度(原山・高橋,2009)24項目4件法。6因子から構成されているが,そのうち(本研究では扱わない)教師への評価が含まれる因子を除く,3因子「生徒同士の仲の良さ」「学習への取り組み」「学級としてのまとまり」の尺度得点を使用した。(3)自己志向的完全主義尺度(桜井・大谷,1997)5項目6件法。3因子から構成されるが,中学生に好ましくない表現が見られたため,「完全でありたい欲求」の1因子のみ使用した。(4)達成目標尺度(藤田・仲澤,2013)3因子「学習自体」「他者承認」「成績向上」から構成される22項目4件法。
 手続き 質問紙の配布と回収は,中学校の学級担任に依頼した。各クラスごとに,空き時間を利用し,集団実施で行った。
 倫理的配慮 本研究は,第一著者の所属する大学のヒューマンスタディに関する倫理審査委員会の審査を受け認められた。

結  果
1.学習先延ばし行動における学年差と性差 二要因分散分析の結果,学習先延ばし行動における男女差は有意傾向であり(F(1,250)=3.29,p<.10),学年差は有意であった(F(2,250)=5.60,p<.05)。また多重比較(HSD法)の結果(MSe=26.87,p<.05),第1学年と第2学年,第1学年と第3学年の間で,有意な差がみられた。Table 1に各変数の学年別の平均とSDを示す。
2.学級の雰囲気,自己志向的完全主義,達成目標,学年と学習先延ばし行動の関連 学習先延ばし行動測定尺度得点を従属変数とし,学級の雰囲気尺度得点,自己志向的完全主義尺度得点,達成目標尺度の各下位尺度得点,学年を独立変数とし,強制投入法による重回帰分析を行った。学級の雰囲気尺度の3つの下位尺度得点は,互いに高い相関(r=.534**,.731**,.698**)であったため,それらの合計点を使用した。重回帰分析の結果をTable 2に示す。

考  察
 中学生における学習先延ばし行動を抑制する要因は,学級の雰囲気,完全でありたい欲求,達成目標のうちの学習自体と成績向上であった。本研究では,特に学級の雰囲気に着目し,学級の雰囲気が学習先延ばし行動を抑制する要因の一つであることを見出すことができた。