[PD30] ルーブリック活用講義の利点と問題点
学習動機づけの観点から
Keywords:ルーブリック, 学習評価, 学習動機づけ
目 的
近年,学校教育の場で,学習者が具体的な目標とそれぞれの達成レベルを理解し学習するために,また教育者が学習者の目標達成度を客観的に評価するためにルーブリック評価が活用されている。今回,ルーブリックを作成し,グループ発表形式の演習講義を実施した。学生がルーブリックの評価尺度のどのレベルを目指して学習するのか,また学生が目指した評価尺度と学習成果が一致するのか,教員評価と学生の自己評価が一致するのかを検証し,ルーブリック活用の利点や問題点を見出したので報告する。
方 法
対象は理学療法士養成大学の3回生69名である。小児理学療法学演習の講義において実施した。演習は10グループに分け,各グループに1疾患の担当疾患を与えた。各グループには模擬症例の想定を課題とした。疾患の特徴や症状,障害像を明確に提示し,考えられる理学療法評価,理学療法治療について実技も交え説明することを求めた。加えて,国家試験問題も関連させた発表とした。ルーブリックは「評価観点」を発表内容・表現方法・協調性の3大項目とし,計13の下位項目に設定した。「評価尺度」は秀・優・良・可・不可・不適とした。これをグループ発表の準備に活用し,グループ発表後にも教員・発表学生各々で学習評価に用いた。教員評価,学生自己評価ともに,秀(5点)・優(4点)・良(3点)・可(2点)・不可(1点)・不適(0点)として得点化し合計点を算出した。またすべてのグループ発表終了後,グループ発表の準備や発表の際,ルーブリックのどこを学習目標にしてきたのか,学習動機づけ(自己決定理論によりタイプ分類されたもの:外的調整,取り入れ的調整,同一化的調整,内発的動機づけ)はどのようなものかを質問紙によって調査した。本調査は大和大学 倫理委員会の承認を得たうえで実施した。
結果と考察
学習動機づけタイプによって,学習目標設定レベルに差が生じた。『外的調整』で『優』を目指した学生が有意に多く,『取り入れ的調整』で『秀』を目指した学生が有意に多かった。取り入れ的調整は,学習に対して仕方なくというような消極的な理由であり,「不安だから勉強する」「恥をかきたくないから勉強する」タイプであり,ルーブリックにより評価基準を初めから提示される学習は効果的であることが示唆された。
また,学習目標の設定レベルと学生自己評価の関係では,『秀』『優』『良』と目指した順に学生の自己評価も高く,合致していた。しかし教員評価は学生が目指した目標通りとはならなかった。学生と教員とで評価が一致しなかったことについては,作成したルーブリックに客観性・再現性の乏しさが考えられる。学生は臨床に出ていないため難しい問題ではあるが,教員と学生が同じ評価基準を共有できるルーブリックに修正が必要である。
次いで,学習動機づけタイプ別での学生自己評価はタイプによって差は生じず,同じような評価点数であった。しかし学習動機づけタイプ別での教員評価点数は取り入れ的調整や外的調整のような統制的動機づけ学生の方が良い評価となった。内発的動機づけや同一化的調整のような自律的動機づけ学生は,自己評価は高いが教員評価が低いため,グループワークを好まない可能性が考えられる。自分一人の評価ではなく,グループとして評価されることで点数が下がってしまうことに懸念することも考えられる。これとは逆に統制的動機づけ学生の教員評価が高いということは,ルーブリックを使用することにより学習のレールが敷かれ,学習動機づけが低い学生でも学習成果が発揮しやすくなるということであり,これが最大の利点であると考える。
近年,学校教育の場で,学習者が具体的な目標とそれぞれの達成レベルを理解し学習するために,また教育者が学習者の目標達成度を客観的に評価するためにルーブリック評価が活用されている。今回,ルーブリックを作成し,グループ発表形式の演習講義を実施した。学生がルーブリックの評価尺度のどのレベルを目指して学習するのか,また学生が目指した評価尺度と学習成果が一致するのか,教員評価と学生の自己評価が一致するのかを検証し,ルーブリック活用の利点や問題点を見出したので報告する。
方 法
対象は理学療法士養成大学の3回生69名である。小児理学療法学演習の講義において実施した。演習は10グループに分け,各グループに1疾患の担当疾患を与えた。各グループには模擬症例の想定を課題とした。疾患の特徴や症状,障害像を明確に提示し,考えられる理学療法評価,理学療法治療について実技も交え説明することを求めた。加えて,国家試験問題も関連させた発表とした。ルーブリックは「評価観点」を発表内容・表現方法・協調性の3大項目とし,計13の下位項目に設定した。「評価尺度」は秀・優・良・可・不可・不適とした。これをグループ発表の準備に活用し,グループ発表後にも教員・発表学生各々で学習評価に用いた。教員評価,学生自己評価ともに,秀(5点)・優(4点)・良(3点)・可(2点)・不可(1点)・不適(0点)として得点化し合計点を算出した。またすべてのグループ発表終了後,グループ発表の準備や発表の際,ルーブリックのどこを学習目標にしてきたのか,学習動機づけ(自己決定理論によりタイプ分類されたもの:外的調整,取り入れ的調整,同一化的調整,内発的動機づけ)はどのようなものかを質問紙によって調査した。本調査は大和大学 倫理委員会の承認を得たうえで実施した。
結果と考察
学習動機づけタイプによって,学習目標設定レベルに差が生じた。『外的調整』で『優』を目指した学生が有意に多く,『取り入れ的調整』で『秀』を目指した学生が有意に多かった。取り入れ的調整は,学習に対して仕方なくというような消極的な理由であり,「不安だから勉強する」「恥をかきたくないから勉強する」タイプであり,ルーブリックにより評価基準を初めから提示される学習は効果的であることが示唆された。
また,学習目標の設定レベルと学生自己評価の関係では,『秀』『優』『良』と目指した順に学生の自己評価も高く,合致していた。しかし教員評価は学生が目指した目標通りとはならなかった。学生と教員とで評価が一致しなかったことについては,作成したルーブリックに客観性・再現性の乏しさが考えられる。学生は臨床に出ていないため難しい問題ではあるが,教員と学生が同じ評価基準を共有できるルーブリックに修正が必要である。
次いで,学習動機づけタイプ別での学生自己評価はタイプによって差は生じず,同じような評価点数であった。しかし学習動機づけタイプ別での教員評価点数は取り入れ的調整や外的調整のような統制的動機づけ学生の方が良い評価となった。内発的動機づけや同一化的調整のような自律的動機づけ学生は,自己評価は高いが教員評価が低いため,グループワークを好まない可能性が考えられる。自分一人の評価ではなく,グループとして評価されることで点数が下がってしまうことに懸念することも考えられる。これとは逆に統制的動機づけ学生の教員評価が高いということは,ルーブリックを使用することにより学習のレールが敷かれ,学習動機づけが低い学生でも学習成果が発揮しやすくなるということであり,これが最大の利点であると考える。