The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

Sun. Sep 16, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD32] 高校生における高齢者疑似体験前後のイメージの変化

藤田和加子1, 石井あゆみ2 (1.大阪信愛学院短期大学, 2.千里金蘭大学)

Keywords:高齢者, 高齢者疑似体験, イメージ

研究目的
 医療の進歩に伴い平均寿命が長くなり,平成25年には高齢者率が25.1%と過去最高になり(内閣府),今後もわが国の高齢化はさらに加速する。そのため医療現場において高齢化社会に対応できる看護師が必要になってくるが,看護師を目指す学生は老いを経験していない若者達が多く,加齢による身体の不具合を想像することが困難である。
 また,看護を目指す学生と高齢者の歩んできた時代の生活背景が大きく異なるため,高齢者の信条や価値観を理解することは難しい。本研究の目的は,将来看護師を目指す高校生が,高齢者疑似体験により加齢に伴う高齢者の身体的・心理的特徴をイメージでき,高齢者理解を深めることである。看護師養成所への入学前から高齢者を理解することは,高齢者の立場になって考え,行動できるための人格を形成する一助となる。

研究方法
研究対象 A高校看護コースの2年生で,同意が得られた29名
研究期間 平成30年1月~3月
研究方法 対象者に対し高齢者の身体的特徴
の講義後,高齢者疑似体験(手足首に重りで負荷,固定ベルトで肘,膝,腰の動きを抑制,手指感覚を鈍磨する手袋,視野欠損と白内障の視覚機能の変化を想定したゴーグルおよび耳栓を装着して杖を持って歩く)をした。体験前後に「高齢者のイメージ」について無記名にて自由記述してもらった。内容の解析にはフリーソフトウェアKH-Coderを使用した。分析に直接関係のない助詞や句読点を削除し,意味が共通する単語に置き換え,データクリーニングをした。調査結果の中で,頻回に出現した上位100語を頻出語とした。頻出語の出現パターンの似通った語の組み合わせを検討するために,出現回数3回以上のもののうち,名詞,サ変名詞,形容動詞,ナイ形容,副詞可能,タグ,名詞C,を用いてWard法による階層的クラスター分析を行った。

倫理的配慮
 大阪信愛学院短期大学研究倫理審査委員会の承認を得た後,対象者には文書と口頭で研究の趣旨を説明した。研究参加に対して自由意思の尊重と匿名性の厳守を保障すること,また随時撤回することが可能であり,その場合でも何ら不利益を被ることがないこと,研究及び学会発表後は,全てのデータを破棄することを説明した。

結  果
1.単語頻度分析
 高齢者疑似体験前の総抽出語数は1183語で,
上位10位以内の頻出語は,「人」「身体」「生活」「目」「腰」「散歩」「病気」「高齢」「家」「好き」であった。体験後の総抽出語数は1376語で,上位10位以内の頻出語は「身体」「大変」「高齢」「人」「目」「今」「体験」「不自由」「耳」「行動」であった。
2.クラスター分析
Table 1
Table 2

考  察
 高齢者疑似体験前は,「趣味を持っている」「体操をしている」など健康的な高齢者のイメージもあるが,体験後は,生活の大変さ,身体の負担や不自由さなど,身体的・心理的負担を多く感じ,マイナスイメージが多かった。しかし,体験後の自由記述の中に,「困っている高齢者に声をかける必要がある」「高齢者が過ごしやすい環境を増やすべき」「動きにくいから周りの助けが必要」などとあり,視覚,聴覚,身体の重さなどの体験から,高齢者への支援の必要性に気づくことができ,高齢者看護に対する関心を深めることに繋がったと考える。