The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

Sun. Sep 16, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD33] レポート課題におけるモニタリングを構成する要素の検討

比較対象に着目して

黒住嶺1, 外山美樹2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

Keywords:モニタリング, 自己調整学習, レポート課題

問題と目的
 昨今の自己調整学習(Zimmerman & Shunk, 2011)に関する諸研究をはじめとして,目標遂行の過程や学業課題に取り組む過程で自身の現状を把握する行為(以下,モニタリング)の重要性が指摘されている。一方で,大学生がどのようにモニタリングを行っているか,その実態をつぶさに報告する研究は十分に実施されているとはいえない。
そこで本研究では,大学生になじみ深く,その達成にモニタリングが有効といえるレポート課題に着目する。また,自己に注意が向く状況では様々な規範との比較が伴うという知見を踏まえ(押見,1998),モニタリングを“比較に基づく現状把握”と捉える。その上で,比較に用いられている対象を実証的に明らかにすることを目的とする。

方  法
調査時期・調査対象 2017年10月から2017年11月にかけ,関東圏内の国立大学の大学生を対象に質問紙調査を実施した。調査対象者は282名であった(男性132名,女性147名,不明3名,平均年齢20.02 ± 1.90歳)。
質問紙の構成 レポート課題の内容について回顧を求めたのち,当該の課題に取り組んでいた期間における「自身の課題の進行が“遅れている”と感じた経験」として,モニタリングを行った体験の回顧を求めた。1人3つの体験まで回答可能とし,各体験の内容について,次の2項目により回答を求めた。1)状況の回顧:体験を鮮明に思い出してもらう目的で,当時の状況について回答を求めた。2)比較対象の回顧:レポート課題の進み具合について「何と比べて“遅れている”と感じましたか」という教示により,比較対象の回答を求めた。

結果と考察
カテゴリーの作成 モニタリングの体験として238件が報告された。各体験の比較対象に関する回答に対して,KJ法(川喜田,1986)を援用し,心理学を専攻する大学院生3人の協議により分類を行った。不適切な回答の除外,複数の比較対象を含んだ回答の細分化を行い,236件の有効回答が抽出された。これらの有効回答を,類似度の評価に基づき分類し,5つのカテゴリー(同じ課題に取り組む他者,自分の理想(ペース,質),規定された条件,自身の経験,教員の基準)を得た。詳細な結果をTable 1に示す。
カテゴリーの再現性の確認 カテゴリーの作成に携わっていない心理学を専攻する大学院生1人に対し,各カテゴリーの定義を説明した上で,有効回答の再分類を依頼した。算出された一致率(92.63%)およびカッパ係数(κ = .90)より,カテゴリーの再現性は良好であることが示された。
示唆と展望 本研究によって,大学生がモニタリングに用いる多様な比較対象が明らかになった。各比較対象を用いた状況下で,行為者への適応的な効果や,目標達成につながる行動の促進効果の有無を検討することで,大学生の計画的な課題遂行の向上に寄与することができると考えられる。