[PD36] 小・中学生の教科別学習観(3)
1学期から2学期にかけての意味理解志向学習観の得点変化
Keywords:学習観, 学年比較, 縦断研究
問題と目的
知識の獲得や利用を方向づけ規定するメタ認知の重要な側面として,学習観があると考えられる(藤村, 2008)。鈴木(2013)などが小・中学生の学習観についての研究を行っているが,これまでの学習観に関する研究は,教科を指定しない学習一般に関する学習観を扱うか,数学などの特定の教科に着目した学習観を扱うものが多く,複数の教科についての差異や関連を検討したものは少ない。
鈴木・石橋・青柳(2018),石橋・鈴木・青柳(2018)は,小学5年~中学2年生を対象に,国語・算数/数学・社会・理科の4教科の学習観について尋ねる質問紙調査を行い,教科間や学年間に得点差が見られることを明らかにした。本研究では,それらの教科別の学習観の得点が1学期~2学期の間に変化するのかを検討する。
方 法
調査対象者と調査時期 静岡県内の公立小学校3校(A, B, C)の5年生(N=416),6年生(N=380),同中学校2校(A, B)の1年生(N=346),2年生(N=383)であった。
なお,A,B小学校とA,B中学校はそれぞれ同一学区に立地している。調査時期は,1,2学期の終わり頃であった。
調査内容と調査手続き 鈴木(2013)による学習一般に関する学習観尺度の項目から,意味理解志向学習観と暗記再生志向学習観の5項目ずつを採用し,それぞれの項目について,「国語の学習において~」などと文言を追加した。また,追加された文言に併せて若干の表現の修正を行った。1教科あたり10項目で,質問項目は合計で40項目であった。調査は,学級ごとに学級担任の指示のもと実施された。また,学級ごとに教科の順番を入れ替えた。
結果と考察
本稿では,意味理解志向学習観の得点について報告する。Table 1に学年別の平均値(標準偏差)を示す。1,2学期の両時期ともに回答した児童・生徒を分析対象とし,学年ごとに教科(4)×学期(2)の2要因参加者内要因計画の分散分析を行った。学年別の結果を以下に示す。
小5では,学期の主効果は有意でなく(F(1, 347)=0.13, n.s.),教科の主効果が有意だった(F(3, 1041)=23.14, p<.001)。交互作用は有意でなかった(F(3, 1041)=1.87, n.s.)。
小6では,学期の主効果は有意でなく(F(1, 331)=0.78, n.s.),教科の主効果が有意だった(F(3, 993)=13.60, p<.001)。交互作用は有意だった(F(3, 993)=3.02, p<.05)。学期の単純主効果を検討したところ,算数のみが有意であり,2学期の方が高得点だった(p<.05)。
中1では,学期の主効果は有意であり(F(1, 311)=36.53, p<.001,教科の主効果が有意だった(F(3, 933)=4.12, p<.01)。交互作用は有意でなかった(F(3, 933)=1.68, n.s.)。
中2では,学期の主効果は有意であり(F(1, 344)=4.50, p<.05),教科の主効果が有意だった(F(3, 1032)=4.12, p<.001)。交互作用も有意だった(F(3, 1032)=4.07, p<.01)。学期の単純主効果を検討したところ,国語と数学で有意であり,1学期の方が高得点だった(p<.05)。
以上の結果から,本研究で用いた意味理解志向学習観尺度の得点は,中1において,1~2学期の間に4教科の得点が共通して低下していた。また,中2では,国語と数学について低下が見られた。要因としては様々なものが考えられるが,特に中1での変化においては,小学校から中学校に進学したことによる学習内容や学習環境変化の影響が1学期から2学期にかけてより明確に現れるようになった可能性がある。今後は,どのような要因がより学習観の変容に影響を及ぼすのかさらに精緻な検討が必要になるだろう。
付 記
本研究は,公益財団法人 博報児童教育振興会第12回児童教育実践についての研究助成を受けて実施された。
知識の獲得や利用を方向づけ規定するメタ認知の重要な側面として,学習観があると考えられる(藤村, 2008)。鈴木(2013)などが小・中学生の学習観についての研究を行っているが,これまでの学習観に関する研究は,教科を指定しない学習一般に関する学習観を扱うか,数学などの特定の教科に着目した学習観を扱うものが多く,複数の教科についての差異や関連を検討したものは少ない。
鈴木・石橋・青柳(2018),石橋・鈴木・青柳(2018)は,小学5年~中学2年生を対象に,国語・算数/数学・社会・理科の4教科の学習観について尋ねる質問紙調査を行い,教科間や学年間に得点差が見られることを明らかにした。本研究では,それらの教科別の学習観の得点が1学期~2学期の間に変化するのかを検討する。
方 法
調査対象者と調査時期 静岡県内の公立小学校3校(A, B, C)の5年生(N=416),6年生(N=380),同中学校2校(A, B)の1年生(N=346),2年生(N=383)であった。
なお,A,B小学校とA,B中学校はそれぞれ同一学区に立地している。調査時期は,1,2学期の終わり頃であった。
調査内容と調査手続き 鈴木(2013)による学習一般に関する学習観尺度の項目から,意味理解志向学習観と暗記再生志向学習観の5項目ずつを採用し,それぞれの項目について,「国語の学習において~」などと文言を追加した。また,追加された文言に併せて若干の表現の修正を行った。1教科あたり10項目で,質問項目は合計で40項目であった。調査は,学級ごとに学級担任の指示のもと実施された。また,学級ごとに教科の順番を入れ替えた。
結果と考察
本稿では,意味理解志向学習観の得点について報告する。Table 1に学年別の平均値(標準偏差)を示す。1,2学期の両時期ともに回答した児童・生徒を分析対象とし,学年ごとに教科(4)×学期(2)の2要因参加者内要因計画の分散分析を行った。学年別の結果を以下に示す。
小5では,学期の主効果は有意でなく(F(1, 347)=0.13, n.s.),教科の主効果が有意だった(F(3, 1041)=23.14, p<.001)。交互作用は有意でなかった(F(3, 1041)=1.87, n.s.)。
小6では,学期の主効果は有意でなく(F(1, 331)=0.78, n.s.),教科の主効果が有意だった(F(3, 993)=13.60, p<.001)。交互作用は有意だった(F(3, 993)=3.02, p<.05)。学期の単純主効果を検討したところ,算数のみが有意であり,2学期の方が高得点だった(p<.05)。
中1では,学期の主効果は有意であり(F(1, 311)=36.53, p<.001,教科の主効果が有意だった(F(3, 933)=4.12, p<.01)。交互作用は有意でなかった(F(3, 933)=1.68, n.s.)。
中2では,学期の主効果は有意であり(F(1, 344)=4.50, p<.05),教科の主効果が有意だった(F(3, 1032)=4.12, p<.001)。交互作用も有意だった(F(3, 1032)=4.07, p<.01)。学期の単純主効果を検討したところ,国語と数学で有意であり,1学期の方が高得点だった(p<.05)。
以上の結果から,本研究で用いた意味理解志向学習観尺度の得点は,中1において,1~2学期の間に4教科の得点が共通して低下していた。また,中2では,国語と数学について低下が見られた。要因としては様々なものが考えられるが,特に中1での変化においては,小学校から中学校に進学したことによる学習内容や学習環境変化の影響が1学期から2学期にかけてより明確に現れるようになった可能性がある。今後は,どのような要因がより学習観の変容に影響を及ぼすのかさらに精緻な検討が必要になるだろう。
付 記
本研究は,公益財団法人 博報児童教育振興会第12回児童教育実践についての研究助成を受けて実施された。