[PD38] 小・中学生の教科別学習観(5)
4因子モデル・2次因子モデルの比較
Keywords:学習観, 2次因子, 教科
問題と目的
知識の獲得や利用を方向づけ,規定するメタ認知の重要な側面として,学習観があると考えられる(藤村, 2008)。鈴木(2013)などが小・中学生の学習観についての研究を行っているが,これまでの学習観に関する研究は,教科を指定しない学習一般に関する学習観を扱うか,数学などの特定の教科に着目した学習観を扱うものが多く,複数の教科についての差異や関連を検討したものは少ない。
鈴木・石橋・青柳(2018),石橋・鈴木・青柳(2018)は,小学5年~中学2年生を対象に,国語・算数/数学・社会・理科の4教科の学習観について尋ねる質問紙調査を行い,教科間や学年間に得点差が見られることを明らかにした。
学習観は,教科ごとに別々の変数である場合と,個人内で教科を超えて,共通の学習観がある場合とで,学習者への効果的なアプローチの方法が異なる可能性がある。そこで,本研究では,国語・社会・算数/数学・理科の4教科の学習観について,教科ごとの4つの1次因子からなるモデルと,教科間に共通の学習観として1つの2次因子を仮定したモデルとの比較を行う。
方 法
調査対象者と調査時期 静岡県内の公立小学校3校の5年生(N=416),6年生(N=380),同中学校2校の1年生(N=346),2年生(N=383)であった。
なお,A,B小学校とA,B中学校はそれぞれ同一学区に立地している。本稿で分析対象とするデータは,2学期の終わり頃に収集された。
調査内容と調査手続き 鈴木(2013)による学習一般に関する学習観尺度の項目から,意味理解志向学習観と暗記再生志向学習観の5項目ずつを採用し,それぞれの項目について,「国語の学習において~」などと文言を追加した。また,追加された文言に併せて若干の表現の修正を行った。1教科あたり10項目で,質問項目は合計で40項目であった。調査は,学級ごとに教科の順番を入れ替え,学級担任の指示のもと実施した。
結果と考察
意味理解志向学習観について,学年別に検討を行った。国語・社会・算数/数学・理科の4教科を1次因子とし,因子間に相関を仮定した因子分析のモデル(4因子モデル)と,教科共通の学習観として2次因子を1つ加え,2次因子が1次因子に影響すると仮定した,2次因子モデルとの間で比較を行った。主要な指標についてTable 1に示す。
意味理解志向学習観について,すべての学年において,4因子モデル,2次因子モデルとも適合度指標は,概ね許容できる範囲の値であった。一方で,モデル間の差異は小さく,積極的に2次因子モデルを採用すべきと言えるほどの差異はないと考えられる。
なお,暗記再生志向学習観については,意味理解志向学習観と同様の分析を行ったところ,不適解となった。尺度得点の教科間の相関係数が高い(尺度得点の相関がrs=.69~.85)ことが一因と考えられる。
本研究で測定した範囲では,相関係数の高さから,暗記再生志向学習観については,教科によらずある程度,一貫していると考えられる。また意味理解志向学習観については,教科間に共通する学習観を2次因子として仮定するモデルについては,2次因子を仮定しない4因子モデルと,適合度指標等では大きな差異は見られなかった。
ただし,相関係数では,意味理解志向学習観においても,尺度得点間には中程度の相関(rs=.42~.66)が見られるため,暗記再生志向学習観に比べると,関連は弱いものの,意味理解志向学習観についても教科間で一貫する傾向はあると考えられる。
付 記
本研究は,公益財団法人 博報児童教育振興会第12回児童教育実践についての研究助成を受けて実施された。
知識の獲得や利用を方向づけ,規定するメタ認知の重要な側面として,学習観があると考えられる(藤村, 2008)。鈴木(2013)などが小・中学生の学習観についての研究を行っているが,これまでの学習観に関する研究は,教科を指定しない学習一般に関する学習観を扱うか,数学などの特定の教科に着目した学習観を扱うものが多く,複数の教科についての差異や関連を検討したものは少ない。
鈴木・石橋・青柳(2018),石橋・鈴木・青柳(2018)は,小学5年~中学2年生を対象に,国語・算数/数学・社会・理科の4教科の学習観について尋ねる質問紙調査を行い,教科間や学年間に得点差が見られることを明らかにした。
学習観は,教科ごとに別々の変数である場合と,個人内で教科を超えて,共通の学習観がある場合とで,学習者への効果的なアプローチの方法が異なる可能性がある。そこで,本研究では,国語・社会・算数/数学・理科の4教科の学習観について,教科ごとの4つの1次因子からなるモデルと,教科間に共通の学習観として1つの2次因子を仮定したモデルとの比較を行う。
方 法
調査対象者と調査時期 静岡県内の公立小学校3校の5年生(N=416),6年生(N=380),同中学校2校の1年生(N=346),2年生(N=383)であった。
なお,A,B小学校とA,B中学校はそれぞれ同一学区に立地している。本稿で分析対象とするデータは,2学期の終わり頃に収集された。
調査内容と調査手続き 鈴木(2013)による学習一般に関する学習観尺度の項目から,意味理解志向学習観と暗記再生志向学習観の5項目ずつを採用し,それぞれの項目について,「国語の学習において~」などと文言を追加した。また,追加された文言に併せて若干の表現の修正を行った。1教科あたり10項目で,質問項目は合計で40項目であった。調査は,学級ごとに教科の順番を入れ替え,学級担任の指示のもと実施した。
結果と考察
意味理解志向学習観について,学年別に検討を行った。国語・社会・算数/数学・理科の4教科を1次因子とし,因子間に相関を仮定した因子分析のモデル(4因子モデル)と,教科共通の学習観として2次因子を1つ加え,2次因子が1次因子に影響すると仮定した,2次因子モデルとの間で比較を行った。主要な指標についてTable 1に示す。
意味理解志向学習観について,すべての学年において,4因子モデル,2次因子モデルとも適合度指標は,概ね許容できる範囲の値であった。一方で,モデル間の差異は小さく,積極的に2次因子モデルを採用すべきと言えるほどの差異はないと考えられる。
なお,暗記再生志向学習観については,意味理解志向学習観と同様の分析を行ったところ,不適解となった。尺度得点の教科間の相関係数が高い(尺度得点の相関がrs=.69~.85)ことが一因と考えられる。
本研究で測定した範囲では,相関係数の高さから,暗記再生志向学習観については,教科によらずある程度,一貫していると考えられる。また意味理解志向学習観については,教科間に共通する学習観を2次因子として仮定するモデルについては,2次因子を仮定しない4因子モデルと,適合度指標等では大きな差異は見られなかった。
ただし,相関係数では,意味理解志向学習観においても,尺度得点間には中程度の相関(rs=.42~.66)が見られるため,暗記再生志向学習観に比べると,関連は弱いものの,意味理解志向学習観についても教科間で一貫する傾向はあると考えられる。
付 記
本研究は,公益財団法人 博報児童教育振興会第12回児童教育実践についての研究助成を受けて実施された。