The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

Sun. Sep 16, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD41] 大学生における授業への取り組みとラーニングアウトカムとの関連(2)

松島るみ1, 尾崎仁美2 (1.京都ノートルダム女子大学, 2.京都ノートルダム女子大学)

Keywords:大学教育, ラーニングアウトカム, 授業観

問題と目的
 研究(1)で述べた問題意識を背景に,本研究では,大学生が授業をどの様に捉えているかによって,授業への取り組み方がラーニングアウトカムに及ぼす影響に差異がみられるのか検討することを目的とする。これを明らかにすることで,学習や授業に対する意欲が低い学生への支援や働きかけといった介入方法に関する具体的な示唆が得られるものと考えられる。

方  法
調査対象者:研究(1)と同様に,近畿圏内の大学生237名であった。
調査内容:尾崎・松島(2009)による大学授業観尺度(39項目)より20項目,ベネッセ教育総合研究所(2012)による「大学での授業への取り組み」に関する26項目および森・山田(2010)の大学生の汎用的技能に関する尺度より28項目を使用した。

結  果
 研究(1)で行った授業観のクラスタ分析により,3クラスタ(義務退屈型・知的好奇心型・授業積極型)が抽出されているが,これらのクラスタごとに,授業に対する取り組みがラーニングアウトカムに及ぼす影響について検討するため,強制投入法による重回帰分析を行った(Table 1)。
 この結果,義務退屈型については,ディスカッションや授業外学習への積極的な取り組みが自己主張力や自律性の他,複数のラーニングアウトカム獲得に関連していることが示された。次に,知的好奇心型については,授業での誠実な取り組みが,社会的関係形成力や情報リテラシーおよび自律性の獲得に,授業外学習が科学的知識の理解,外国語運用力の獲得に影響を及ぼすことが示された。授業積極型については,発展的な学習への取り組みが自己主張力や自律性,問題解決力の獲得に影響していることが示された。

考  察
 3つのクラスタに共通する特徴としては,授業での積極的なディスカッションへの取り組みが問題解決力を高め,また授業外学習が自然や社会的事象について分析する力や科学的知識の理解を深めるという2点が挙げられる。
 一方,授業の捉え方によって,ラーニングアウトカムに影響する授業の取り組み方には差異があることも示唆された。具体的には,大学の授業を義務・退屈なものと捉える学生については,ディスカッション中心の能動的な授業方法および授業外学習の取り組みがラーニングアウトカムの獲得につながりやすいことが示された。一方,大学の授業が知的好奇心を高めるだけでなく,自分の将来につながったり,出会いや交流の場である等,様々な積極的意義を授業に対して見出している学生については,授業にただ真面目に参加するだけではなく,興味があることは自ら調べる等,自律的に学ぶことによって,ラーニングアウトカムを獲得する傾向があることが明らかになった。また,授業は知的好奇心を高めるものだという考えを持つ学生は,他のクラスタに比べて,誠実な授業への取り組みがラーニングアウトカムを高める傾向が示唆された。
 以上,授業の捉え方によってラーニングアウトカムに及ぼす授業の取り組み方に差異があることが示され,今後学生の個人特性に応じた介入のあり方について検討する必要があると考えられる。