The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

Sun. Sep 16, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD46] ローゼンバーグ自尊感情尺度の2側面と自己愛人格傾向

クラスター分析による検討

福留広大1, 森永康子2 (1.広島大学, 2.広島大学)

Keywords:自尊感情, 自己愛

 本稿は,ローゼンバーグ自尊感情尺度に対して,逆転項目群因子 (Negative Self-Esteem; NSE) と順項目群因子 (Positive Self-Esteem; PSE) を仮定した場合に,それら2因子と自己愛の関係性において如何なる個人の存在を想定できるか探求するものである。福留他 (2015) では,クラスタ分析 (N = 177) を行い,PSE < NSEの関係性が成立したクラスタ群の (誇大性) 自己愛は低く,これを健全な自己評価群とした。しかし,サンプル数が少ない上,自己愛については誇大性の側面と脆弱性の側面が存在している。そこで,新たにサンプル数と自己愛を測定する尺度の種類を増やして分析を行う。

方  法
 2014年~2018年にかけて収集した次の各データセットに対してクラスタ分析 (k-means++法, R 3.4.3を用いてLICORS 0.2.0パッケージのkmeanspp関数を使用) を行った。全てのデータセットに自尊感情尺度 (清水, 2001; 山本他, 1982) が含まれる。データ1:以下の全てのデータセットについて自尊感情尺度の部分を併合したもの (N = 5337)。データ2:中学生 (N = 430)。データ3:大学生 (N = 177)。 データ4:ネット調査による日本全国の18歳~25歳 (N = 400) 自己愛人格傾向尺度NPI-35 (小西他, 2006) を5件法で使用。データ5:ネット調査15歳~69歳 (N = 2830) DTDD-J (田村他, 2015) よりナルシシズム因子項目。データ6:ネット調査18歳~25歳 (N = 600) 自己愛的脆弱性尺度 (上地・宮下, 2009)。データ7: ネット調査15歳~69歳 (N = 900) 評価過敏性-誇大性自己愛尺度 (中山・中谷, 2006)。

結果と考察
 計5回のクラスタ分析の結果をFig.1に示した。なお、解釈可能性から,全て5クラスタを指定して分析を行い,重要と思われるクラスタを抜粋した。データ1では自尊感情について,P中N中群,P高N高群,N高P低 (N優勢) 群,P高N低 (P優勢) 群,P低N低群に分かれた。以下,P優勢群とN優勢群を優先して結果を抜粋する。データ4では,N優勢群では自己愛が低いのに対して,P優勢群では自己愛が最も高かった。データ5では,N優勢群でナルシシズムは低く,P優勢群でナルシシズムは高かった。データ6では,N優勢群で自己愛的脆弱性は低く,P優勢群で自己愛的脆弱性が高かった。データ7では,N優勢群で誇大性・評価過敏性ともに低く,P優勢群で誇大性・評価過敏性ともに高かった。これらの結果は,福留他 (2015) を支持する。また,程度の差はあるものの,自尊感情の2側面が不健全な意味でアンバランス (P優勢群) な個人が数%から20%ほど存在する可能性がある。高自尊感情であることが自己愛を意味するのではなく,自尊感情の2側面の関係性によって自己愛を推測できる可能性がある。

付  記
JSPS科研費 (研究課題JP16J03013)