The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

Sun. Sep 16, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD55] 特別支援教育における連携に関する予備的検討

中学校教師の語りから

竹村洋子 (独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)

Keywords:発達障害, 担任教師, インタビュー調査

問題と目的
 通常学級における発達障害児への教育的対応について,教師と児童の接近的相互作用の成立の重要性が指摘されており,校内や専門機関,保護者と教師との良好な連携は支援効果を高める条件となる(竹村,2011)。小学校教師が連携を対応として選択し児童の様子が「改善した」とする事例も報告されているが,学級での対応の困難や連携の課題は依然としてある(竹村,2016;2017)。本発表では,「通常学級における特別支援教育に関する状況調査」として中学校教師を対象に行ったインタビュー調査の結果から,生徒の様子,学級での対応や他者との連携,それらの関連を検討する。

方  法
 対象:東京都公立中学校教師8名(教職経験年数は平均12.5年,範囲6~21年)による語りを分析対象とした。対象者1名が2~4ケースを挙げ,計19ケースについての語りがあった。
 方法:発表者が各学校を訪問し,対象者1名につき1時間程度の半構造化面接を実施した。実施は2016年で,面接の質問項目はカッコ内の通り準備した(うまくいった事例・うまくいかなかった事例について,生徒の概況,学級での対応とその効果,連携の内容や方法,それらの連携が学級でのかかわりに及ぼす影響)。事例の選択は過去3年を目安として対象者に委ねた。特別支援教育についての思いや考えも語っていただいた。
 面接の内容は録音し,録音データを逐語録に起こした。逐語記録を内容毎に区切り,生徒の様子,学級での対応,校内連携,保護者との連携,外部との連携に分けて内容を検討した。
 倫理的配慮:研究及び匿名性の確保について文書を用いて学校長に説明した。協力への同意の得られた学校に協力者の抽出を依頼し,各協力者にインタビューの開始時に改めて説明して同意を得た。録音についても了解を得た。発表者の当時の所属機関で倫理審査を経た。

結果と考察
 うまくいった事例,うまくいかなかった事例が8事例ずつ,どちらともいえない事例が3事例であった。教師が気になるとしていた生徒の様子についての内容を8項目に分類し,項目毎に挙げられたケースのべ数をFigureに示した。
「不登校」と「集団に入れない」については,うまくいかなかった事例でのみ語られたが,他の分類項目はうまくいった事例,うまくいかなかった事例の両方で語られた。「対人関係」を挙げた9ケース中7ケース,「暴力・暴言」を挙げた4ケース中3ケースがうまくいかなかった事例であった。どちらともいえないという事例は「生活面」が2ケース,「学習面」が3ケースであった。「学習面」は19ケース中14ケースで語られ,うまくいった事例でも「勉強は難しい」などの語りがあった。
 うまくいった事例では,周囲の生徒の理解により学級に溶け込めたことや,保護者との連携や本人の希望により通級などの手立てが功を奏したこと,外部機関との連携が行えたこと,生徒と向き合えたことなどが語られた。うまくいかなかった事例では,本人が周囲の生徒や大人との関係を築けない様子,取り出し指導などへの本人や保護者の拒否,進路に関することなどが語られた。双方で,進路や取り出し指導について保護者に話しづらいこと,校内外連携を工夫して保護者との連携を進めていることが語られた。
 また,保護者との連携や本人の自己理解には小学校までの積み重ねや保護者の気持ちを受け止める体制が必要であること,校内連携について,他の教師との方針共有の難しさがあること,管理職やSCとの連携に教師自身が支えられたことなども語られた。

引用文献
竹村(2011)特殊教育学研究49,415-424.
竹村(2016)教心第58回総会発表論文集,457.
竹村(2017)特教第55回大会発表論文集,P2-66.

付  記
本発表はJSPS科研費JP17K04956の助成を受けた。