[PD58] 教師が捉える児童・生徒の援助要請
Keywords:教師, 援助要請
問 題
児童・生徒は,日々の生活の中でさまざまな問題や悩みに直面する。児童・生徒は問題や悩みを解決するために,他者に相談し,援助を求めることが必要となる。自身の問題や悩みについて相談するという現象は援助要請行動(help-seeking behavior)として研究されてきた(本田, 2015)。これまでの研究では,児童・生徒の援助要請には社会的スキル(永井・松田, 2014)やコスト認知(永井他, 2016),ソーシャルサポート(永井・松田, 2014)や教師の指導スタイル(瀬尾, 2008)が影響することが明らかになっている。
これらの研究を含めた援助要請研究は,援助を受ける側つまり児童・生徒側に焦点が当てられている。一方で,援助者側でかつ重要なサポート源である教師が児童・生徒の援助要請をどのように捉えているかについてはあまり検討されてこなかった。教師は,日常的に子どもからの援助要請を受け,問題解決をサポートしている存在である。教師の捉えている子どもの援助要請を明らかにすることは,援助要請の実態をより明確にすることや援助要請を促進する環境づくりのヒントを得ることにつながると考える。そこで,本研究では児童・生徒の援助要請の実際を,教師の視点から明らかにすることを目的とする。
方 法
調査協力者 小中学校の現教職員(男性4名,女性4名,平均教職年数16.3年)から協力を得た。
調査の手続き 児童・生徒の援助要請の実態等を聞くためにインタビュー・ガイドを作成し,半構造化面接を行った。調査協力および依頼時前には,内容やプライバシー保護についての説明をし,同意書への記入を求めた。
分析の手続き 協力者の語りの中で共通していたものを抽出し,カテゴリを設定した。
結果と考察
面接時間は30~60分で,児童・生徒の援助要請について語られた部分を分析対象とした。語りの内容から共通の要素を抽出し,6つの大カテゴリを設定した。さらに,それぞれの大カテゴリの中に,語りの内容から複数の小カテゴリを設定した(以下,【】で示す)。
問題への気づき 【子ども側からの積極的要請】【他児からの要請】【教師の気づき・介入】【学校での取り組み】に関する語りが見られた。悩みを抱えている児童・生徒が自分で相談をするだけでなく,周りの子どものおかげで気づくこともあることが語られていた。児童・生徒は教師にあまり相談をしないことが指摘されている(永井, 2012;永井・新井, 2005)。教師はそのことを実感しており,自ら気づけるよう努めたり,学校全体で困難さに気づけるような取り組みを行っていることが考えられる。
相談内容 【友人関係】【勉強・進路関係】【家庭関係】【他の教師関係】に関する語りが見られた。友人関係の悩みはよく相談を受けるが,家庭関係の悩みはあまり相談を受けないことが語られた。家庭関係の悩みは深刻なものが多かった。深刻な悩みは援助要請の抵抗感が高い(後藤・廣岡, 2005)といった子ども側の結果と一致している。また,他の教師の指導等についての相談は対応しにくいことが語られた。
援助要請の必要性 【子どもが困っている問題すべて】【相談のタイミング】【自力解決の重要性】に関する語りが見られた。子どもが困っているのであれば,どんな悩みでも相談してほしいと思う一方で,自分の力で解決できるものはしてほしいということが語られていた。加えて,困ったらすぐに相談してほしい気持ちもあるが,まずは自分で解決を試みてほしいことも語られていた。
時間 【休み時間】【掃除の時間】【放課後】【教育相談期間】に関する語りが見られた。小学校では,放課後すぐに子どもを帰宅させなければいけないため,主に休み時間や掃除の時間を活用することが語られた。中学校では放課後が主だが,部活動の時間を確保するため教育相談の期間を大事にしていることが語られた。
対応 【傾聴】【アドバイス】【保護者への介入】【学内で共有】【他機関連携】に関する語りが見られた。基本的には子どもに対して傾聴やアドバイスを行うが,問題や悩みに応じて保護者や学内の他の教員,他機関といった他者の協力が得られるような働きかけをすることが語られていた。
子どもとの信頼関係 信頼関係が成り立っていないと児童・生徒は教師に悩みを話さないことや,悩みを話してもらえる関係を作るための実践等について語られていた。子どもの援助要請にはソーシャル・サポートが影響することが示されている(永井・松田, 2014)。教師の考えは子どもと一致していることが考えられる。
児童・生徒は,日々の生活の中でさまざまな問題や悩みに直面する。児童・生徒は問題や悩みを解決するために,他者に相談し,援助を求めることが必要となる。自身の問題や悩みについて相談するという現象は援助要請行動(help-seeking behavior)として研究されてきた(本田, 2015)。これまでの研究では,児童・生徒の援助要請には社会的スキル(永井・松田, 2014)やコスト認知(永井他, 2016),ソーシャルサポート(永井・松田, 2014)や教師の指導スタイル(瀬尾, 2008)が影響することが明らかになっている。
これらの研究を含めた援助要請研究は,援助を受ける側つまり児童・生徒側に焦点が当てられている。一方で,援助者側でかつ重要なサポート源である教師が児童・生徒の援助要請をどのように捉えているかについてはあまり検討されてこなかった。教師は,日常的に子どもからの援助要請を受け,問題解決をサポートしている存在である。教師の捉えている子どもの援助要請を明らかにすることは,援助要請の実態をより明確にすることや援助要請を促進する環境づくりのヒントを得ることにつながると考える。そこで,本研究では児童・生徒の援助要請の実際を,教師の視点から明らかにすることを目的とする。
方 法
調査協力者 小中学校の現教職員(男性4名,女性4名,平均教職年数16.3年)から協力を得た。
調査の手続き 児童・生徒の援助要請の実態等を聞くためにインタビュー・ガイドを作成し,半構造化面接を行った。調査協力および依頼時前には,内容やプライバシー保護についての説明をし,同意書への記入を求めた。
分析の手続き 協力者の語りの中で共通していたものを抽出し,カテゴリを設定した。
結果と考察
面接時間は30~60分で,児童・生徒の援助要請について語られた部分を分析対象とした。語りの内容から共通の要素を抽出し,6つの大カテゴリを設定した。さらに,それぞれの大カテゴリの中に,語りの内容から複数の小カテゴリを設定した(以下,【】で示す)。
問題への気づき 【子ども側からの積極的要請】【他児からの要請】【教師の気づき・介入】【学校での取り組み】に関する語りが見られた。悩みを抱えている児童・生徒が自分で相談をするだけでなく,周りの子どものおかげで気づくこともあることが語られていた。児童・生徒は教師にあまり相談をしないことが指摘されている(永井, 2012;永井・新井, 2005)。教師はそのことを実感しており,自ら気づけるよう努めたり,学校全体で困難さに気づけるような取り組みを行っていることが考えられる。
相談内容 【友人関係】【勉強・進路関係】【家庭関係】【他の教師関係】に関する語りが見られた。友人関係の悩みはよく相談を受けるが,家庭関係の悩みはあまり相談を受けないことが語られた。家庭関係の悩みは深刻なものが多かった。深刻な悩みは援助要請の抵抗感が高い(後藤・廣岡, 2005)といった子ども側の結果と一致している。また,他の教師の指導等についての相談は対応しにくいことが語られた。
援助要請の必要性 【子どもが困っている問題すべて】【相談のタイミング】【自力解決の重要性】に関する語りが見られた。子どもが困っているのであれば,どんな悩みでも相談してほしいと思う一方で,自分の力で解決できるものはしてほしいということが語られていた。加えて,困ったらすぐに相談してほしい気持ちもあるが,まずは自分で解決を試みてほしいことも語られていた。
時間 【休み時間】【掃除の時間】【放課後】【教育相談期間】に関する語りが見られた。小学校では,放課後すぐに子どもを帰宅させなければいけないため,主に休み時間や掃除の時間を活用することが語られた。中学校では放課後が主だが,部活動の時間を確保するため教育相談の期間を大事にしていることが語られた。
対応 【傾聴】【アドバイス】【保護者への介入】【学内で共有】【他機関連携】に関する語りが見られた。基本的には子どもに対して傾聴やアドバイスを行うが,問題や悩みに応じて保護者や学内の他の教員,他機関といった他者の協力が得られるような働きかけをすることが語られていた。
子どもとの信頼関係 信頼関係が成り立っていないと児童・生徒は教師に悩みを話さないことや,悩みを話してもらえる関係を作るための実践等について語られていた。子どもの援助要請にはソーシャル・サポートが影響することが示されている(永井・松田, 2014)。教師の考えは子どもと一致していることが考えられる。