[PD63] 学習面の援助要請における教師の働きかけの効果
Keywords:援助要請, 教師の働きかけ, 援助要請風土
問題と目的
学習領域の援助要請研究では,授業中における教師への援助要請(質問)を促す教師の働きかけによって,援助要請(質問)が促進されることが指摘されてきた(Butler & Shibaz, 2008,2014)。しかし近年,教師が生徒に対して情緒的で支援的な働きかけをしていると,その教師の働きかけが学級ですべき行動のモデルとして捉えられ,生徒たちが他生徒に同様の行動をとることが示されている(Gest & Rodkin, 2011;Luckner & Pianta, 2011)。これらより,教師が生徒同士での援助要請を促す働きかけをすることで,生徒同士での援助要請が学級で求められていることを多くの生徒が共有し,生徒たちがお互いに援助要請を行いやすくなることが考えられる。このような生徒同士の援助要請に対する教師の働きかけの影響を検討した研究は国内外で見当たらない。本研究では,生徒―生徒間の援助要請を促す教師の働きかけを新たに捉え,教師―生徒間の援助要請を促す働きかけとともに,中学生の教師及び同じ学級の生徒への援助要請と援助要請風土への影響を検討する。
方 法
調査参加者と手続き 中学校3校28学級の1-2年生834名(男子410名,女子424名)の回答を分析対象とした。平均年齢は13.40歳(SD=0.59)であった。2017年2月に調査を実施した。
測定項目 1. 教師―生徒間・生徒―生徒間の援助要請を促す働きかけ:Karabenick & Sharma(1994)による授業中における教師への質問を促すサポート尺度を参考に,教師の働きかけ尺度(各15項目5件法)を作成した。2. 援助要請風土:学級雰囲気尺度(伊藤・宇佐美,2017)を参考に尺度(6項目5件法)を作成した。3. 学習面の援助要請:後藤・平石(2013)の援助要請意図尺度(3項目5件法)を用いた。4. 内発的動機づけ:田中・山内(2009)の内発的興味尺度(6項目6件法)を用いた。
結果と考察
尺度の構成
教師―生徒間の援助要請を促す働きかけ及び生生徒―生徒間の援助要請を促す働きかけを反映する項目群,援助要請風土を反映すると考えられる項目群,に対して,探索的因子分析(最尤法)の結果,因子の解釈可能性と妥当性の判断に基づき,1因子解を採用した(α=.92, 93, 87)。
教師の働きかけが教師及び同じ学級の生徒への援助要請と援助要請風土に及ぼす影響の検討
学習面の援助要請には内発的動機づけが関わることから(岡田他,2013),内発的動機づけの高さによる変数間の影響を検討するため,構造方程式モデリングを用い,多母集団同時分析を行った(Figure 1)。内発的動機づけ高群・低群ともに,生徒―生徒間の援助要請を促す働きかけが援助要請風土を媒介し,生徒への援助要請を促進することが示された。内発的動機づけ低群のみ,生徒―生徒間の援助要請を促す働きかけから生徒への援助要請への直接効果も見出された。一方,教師―生徒間の援助要請を促す働きかけは,内発的動機づけ低群では教師への援助要請への直接効果が,高群では援助要請風土への影響が見出された。生徒個人の内発的動機づけの高低によって,教師及び生徒への援助要請を促すために有効な働きかけが異なる可能性が考えられた。
学習領域の援助要請研究では,授業中における教師への援助要請(質問)を促す教師の働きかけによって,援助要請(質問)が促進されることが指摘されてきた(Butler & Shibaz, 2008,2014)。しかし近年,教師が生徒に対して情緒的で支援的な働きかけをしていると,その教師の働きかけが学級ですべき行動のモデルとして捉えられ,生徒たちが他生徒に同様の行動をとることが示されている(Gest & Rodkin, 2011;Luckner & Pianta, 2011)。これらより,教師が生徒同士での援助要請を促す働きかけをすることで,生徒同士での援助要請が学級で求められていることを多くの生徒が共有し,生徒たちがお互いに援助要請を行いやすくなることが考えられる。このような生徒同士の援助要請に対する教師の働きかけの影響を検討した研究は国内外で見当たらない。本研究では,生徒―生徒間の援助要請を促す教師の働きかけを新たに捉え,教師―生徒間の援助要請を促す働きかけとともに,中学生の教師及び同じ学級の生徒への援助要請と援助要請風土への影響を検討する。
方 法
調査参加者と手続き 中学校3校28学級の1-2年生834名(男子410名,女子424名)の回答を分析対象とした。平均年齢は13.40歳(SD=0.59)であった。2017年2月に調査を実施した。
測定項目 1. 教師―生徒間・生徒―生徒間の援助要請を促す働きかけ:Karabenick & Sharma(1994)による授業中における教師への質問を促すサポート尺度を参考に,教師の働きかけ尺度(各15項目5件法)を作成した。2. 援助要請風土:学級雰囲気尺度(伊藤・宇佐美,2017)を参考に尺度(6項目5件法)を作成した。3. 学習面の援助要請:後藤・平石(2013)の援助要請意図尺度(3項目5件法)を用いた。4. 内発的動機づけ:田中・山内(2009)の内発的興味尺度(6項目6件法)を用いた。
結果と考察
尺度の構成
教師―生徒間の援助要請を促す働きかけ及び生生徒―生徒間の援助要請を促す働きかけを反映する項目群,援助要請風土を反映すると考えられる項目群,に対して,探索的因子分析(最尤法)の結果,因子の解釈可能性と妥当性の判断に基づき,1因子解を採用した(α=.92, 93, 87)。
教師の働きかけが教師及び同じ学級の生徒への援助要請と援助要請風土に及ぼす影響の検討
学習面の援助要請には内発的動機づけが関わることから(岡田他,2013),内発的動機づけの高さによる変数間の影響を検討するため,構造方程式モデリングを用い,多母集団同時分析を行った(Figure 1)。内発的動機づけ高群・低群ともに,生徒―生徒間の援助要請を促す働きかけが援助要請風土を媒介し,生徒への援助要請を促進することが示された。内発的動機づけ低群のみ,生徒―生徒間の援助要請を促す働きかけから生徒への援助要請への直接効果も見出された。一方,教師―生徒間の援助要請を促す働きかけは,内発的動機づけ低群では教師への援助要請への直接効果が,高群では援助要請風土への影響が見出された。生徒個人の内発的動機づけの高低によって,教師及び生徒への援助要請を促すために有効な働きかけが異なる可能性が考えられた。