The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

Sun. Sep 16, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD65] グループ活動が学生の自己理解及びやる気に与える影響

コンセンサスの有無に着目して

稲田達也1, 鈴木由美2 (1.豊岡短期大学, 2.聖徳大学)

Keywords:グループ活動, 自己理解

問題と目的
 現代社会において,大学生の対人関係形成の能力やコミュニケーション能力の低下が各方面で指摘されている。このような能力は従来,大人への成長の過程の中で自然に身につくものであったと考えられるが,社会環境の変化により,社会に出る前に十分に身に付けることができない学生も多くいる。学生が社会に出る前段階である大学時代に,様々な活動を通して必要な力を身に付けるための取り組みは経済産業省主催の社会人基礎力育成グランプリなどを含め全国で数多く行われている。稲田・鈴木(2017)は,グループ活動が大学生の社会人基礎力向上に一定の効果を上げることを示唆したが,グループ活動自体の内容や,学生の取り組み方といった要素がどのように作用するかについては検討していなかった。グループ活動といっても,活動のゴールの設定や,取り組む際のルール,また人数やグループ内でのかかわり方,かかわりの程度によって活動から得られる効果は変わってくると考えられる。また,参加する学生の側の意識やどの程度本気で取り組んだかといった要因によっても得られる効果は変わってくると考えられる。そこで本研究では,グループ活動において,最終的にグループとしての意見・結論を一つに集約し合意形成するかどうか,すなわちコンセンサスの有無に着目しながら,グループ活動に繰り返し参加することが学生の自己理解及びやる気にどのような影響を与えるか検討することを目的とする。なお,本研究では,コンセンサス形成を行わないゲームを,心を通わすゲームと呼称する。

実施方法
対象者
 A大学の大学1年生175名(男子89名,女子86名)であった。
グループ活動内容 
 活動の実施期間は2016年10月から2017年1月の約3か月間で,友だちづくりの授業の一環として,グループ活動を毎週行った。1セッションは90分からなり,12セッション実施した。
12回のうち,コンセンサスゲームは「バンガロー殺人事件」「SOS砂漠でサバイバル」「ストロータワー」「なぞなぞ」の計4回実施した。心を通わすゲームは「グループ分け自己紹介」「飼いたい動物」「私の欲しいもの」「二者択一ゲーム」「森のなんでも屋さん」「コラージュ」「タイムマシーンに乗って」「明日の羽」の計8回実施した。
調査内容 
「活動が楽しかったか」「自己理解が進んだか」「やる気が出たか」の3項目について,5件法で毎回回答を求めた。
倫理的配慮
 インフォームド・コンセントを行い,本研究への協力に同意した者を調査対象とした。回答の拒否や中断は可能であり,そのことによる不利益は生じないことを口頭で伝えた。

結果と考察
 アンケートを実施した3項目について,得点に男女差が無いかをt検定により確認したところ,いずれも有意差は見られなかった。よって,本研究において,男女差は検討しないこととする。
 3項目の,コンセンサスゲーム実施時の平均得点と心を通わすゲーム実施時の平均得点についてt検定により比較した(Table1)ところ,「活動が楽しかったか」については,コンセンサスゲーム実施時の得点が有意に高かった(t=7.26,p<.01)。「自己理解が進んだか」については心を通わすゲーム実施時の得点が有意に高かった(t=6.25,p<.01)。「やる気が出たか」についてはコンセンサスゲーム実施時の得点が有意に高かった(t=5.31,p<.01)。このことから,グループのメンバーと協議し,結論を一つに定めるコンセンサスゲームの方が学生のやる気を引き出し,また楽しさを感じながら取り組むことができているが,一方で,自分の内面を見つめ直し,気づきを得る自己理解という点では,心を通わすゲームの方が効果的である可能性が示唆された。一方で,コンセンサスゲームについては,明確な一つの正解があるものと,正解が存在しないものがあり,それらの違いを検討することや,自己理解ややる気の向上以外の効果についてもより幅広く検討することも必要であると考えられる。