The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 1:30 PM - 3:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:30~14:30 偶数番号14:30~15:30

[PE01] 他児の向社会的特性についての幼児の理解に表情が及ぼす影響

芝崎美和1, 芝崎良典2, 湯澤美紀3 (1.新見公立短期大学, 2.四国大学, 3.ノートルダム清心女子大学)

Keywords:向社会的特性, 表情, 幼児

問題と目的
 感情表出が困難である幼児の場合,ポジティブな行動と表情が一致せず,向社会的に振る舞ったとしても被援助者や第3者に共感的感情が伝達されにくい可能性がある。感情表出の困難さが,特性についての幼児の正確な理解を阻むならば,それは他児についての肯定的見方を阻害する要素となり得る。そこで本研究では,幼児の向社会的特性理解に表情が及ぼす影響について検討する。

方  法
対象児:年中児36名,年長児30名であった。
材料:指人形男女用各4体,表情図版(笑い・泣き・怒り・驚き)と大中小の円を描いた図版各1枚を用いた。
手続き:1人につき2課題(一致条件・不一致条件)を実施した。課題文には,主人公が他児におもちゃを貸与する場面を採用した。一致条件では貸与者の行動と表情が合致しており(ポジティブな表情),反対に不一致条件では両者が合致していない(ネガティブな表情)。課題文提示後,①被貸与者による貸与者の特性理解(やさしい,意地悪)について3件法で尋ね,②貸与者の感情について表情図版を用いて4択で求めた。最後に,③関係維持(被貸与者は貸与者と遊びたいか)について3件法で求めた。

結  果
1. 表情が特性理解に及ぼす影響
 貸与者の特性について「やさしい」「意地悪」と回答した程度に応じて0~3点を与え,それぞれポジティブ特性得点,ネガティブ特性得点とした。各得点に表情が与える影響について,年齢(2:年中,年長児)×条件(2:一致,不一致)の2要因分散分析を実施した。結果をTable 1に示す。分析の結果,ポジティブ特性得点(F(1, 64) = 93.81, p < .01),ネガティブ特性得点(F(1, 64) = 60.03, p < .01)ともに,表情の主効果が有意であり,ポジティブ特性得点では不一致条件より一致条件の得点の方が,反対にネガティブ特性得点では一致条件よりも不一致条件の得点が有意に高かった。
2. 表情と感情理解との関連
 次に,貸与者の感情についての幼児の理解が貸与者の表情によって異なるかについて,年齢および条件別にχ2検定を実施した(Table 2)。一致条件では,年中児(χ2(3) = 55.07, p < .01),年長児(χ2(3) = 92.67, p < .01)ともに泣き,怒り,驚きよりも笑いの表情図を選択する者の残差がプラスに有意であった。他方,不一致条件に関しては,年中児では笑い,泣き,驚きよりも怒りを選択した者の残差がプラスに有意であり(χ2(3) = 16.13, p < .01),年長児では泣き,驚きよりも怒りを選択した者の残差がプラスに有意であった(χ2(3) = 16.22, p < .01)。
3. 表情が関係維持欲求に及ぼす影響
 被貸与者が貸与者と遊びたいかという関係維持欲求に関する質問への回答から,対象児に0~3点を与え,関係維持得点とした。貸与者の表情と関係維持得点との関連性について,年齢(2:年中,年長児)×条件(2:一致,不一致)の2要因分散分析を実施したところ,条件の主効果が有意であり,不一致条件よりも一致条件の得点が有意に高かった(F(1, 64) = 31.18, p < .01)。
以上のことから,同じように向社会的に振る舞ったとしても,貸与者の表情によって,貸与者の特性についての幼児の理解は異なり,幼児は貸与者の表情がポジティブなときには「やさしい子」と,ネガティブなときには「意地悪な子」と認識することが示された。貸与者の感情理解に関しても表情の影響を受け,幼児は,貸与者の表情がポジティブな場合はポジティブな感情を,ネガティブな場合はネガティブな感情を認識していると判断していた。また,貸与を受けたとしても貸与者の表情がネガティブな場合は,貸与者と遊びたくないと判断することから,関係維持欲求についても貸与者の表情による影響が確認された。さらに,これらの認識は,年中児だけでなく年長児においても見られることが明らかになった。