The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 1:30 PM - 3:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:30~14:30 偶数番号14:30~15:30

[PE06] バウムテストと幼児期の発達

早期型と男女差に着目して

小林佐知子 (静岡県立大学短期大学部)

Keywords:幼児, 描画, バウムテスト

問題と目的
 投映描画法の一つであるバウムテスト(Koch, 1949/1954)は,パーソナリティの測定ツールとして心理アセスメントの場面等で広く用いられている。描画は幼児にとって親しみやすい活動の一つであり、言葉を用いないという利点もある。バウムテストで描かれる木は,加齢とともに発達すると考えられており,幼児期に特有の表現は「早期型」と呼ばれる。早期型は文化の影響を受けることがあり(中島, 2016),たとえば欧米では早期型の一つ,「多数の木を描くこと」は,本邦ではほとんどみられない。本研究では,年中児である4~5歳児の早期型の出現率や男女差等を検討し,本邦の幼児の描画発達における基礎的知見を提供する。

方  法
(1) 分析対象者 A県内のこども園年中クラスに在籍する(4~5歳)272名(男児130名,女児142名)。
(2) 手続き 調査は園で実施した。調査者が幼児にA4サイズの画用紙を配布し,鉛筆で木の絵を描いてもらった。バウムテストの教示には諸説あるが,本研究では「実のなる木を一本,描いてください。」という教示を用いた。5名前後のグループにて実施し,終了後に調査者が回収した。早期型の評価は,Koch(1954)の日本語版(岸本ら,2010)と中島(2016)をもとに,調査者および臨床心理学を専攻する大学院生3名の計4名にて行った。不一致がある場合
は協議を行った。

結果と考察
(1) 早期型の出現率
 早期型は2歳から6歳にかけてみられ,その後は加齢とともに消失する表現型である。早期型の指標の出現率は,「一線幹(幹が一本線)」6.3%,「全一線枝(幹が一本線)」8.8%,「水平な型(一線幹と一線枝が直交)」1.1%,「十字型(左右に同じ高さの水平な側枝)」2.2%,「直線枝(まっすぐな一本線の枝)」3.7%,「全直行分枝(主枝に対して分枝が直角)」0%,「モミ型(すべての主枝が幹の側方に向かって伸びる)」3.3%,「日輪型・花型(ヒマワリや花様)」2.9%,「空間倒置(実や葉の空間配置が不自然)」25.0%,「幹・幹と付属の枝(幹と樹冠が未分化)」17.3%,「幹の中の実や葉」5.5%,「幹上直(幹先端が直線で閉じている)」」40.8%,「全水平枝(枝が全て水平)」2.9%,「一部水平枝」4.0%,「小さい樹冠のある長すぎる幹」16.9%,「小さい樹冠のある短く長い幹上直」7.4%,「暗く塗られた幹」10.3%,「暗く塗られた枝」1.1%,「まっすぐな根元」33.5%,「幹下縁立(幹の下端が用紙の下端と接する)」14.7%,「ステレオタイプ(枝、葉などが規則的に繰り返される)」0.7%,「多くの風景(山や太陽などが描かれる)」2.2%,「大きすぎる実や葉」4.0%であった。Koch(1954)の出現率と比べて全体的に低く,幼稚園児で40%以上出現するとされる指標のうち、「全一線枝」「「大きすぎる実や葉」「幹下縁立」についは15%未満であった。
 早期型の中で最も多くみられたのは,幹の上端が水平線で閉じられている「幹上直」,次に根元の広がりがみられない「まっすぐな根元」,実や葉の付き方が不自然な「空間倒置」であった。4~5歳時点では木の捉え方がまだ図式的であり,実や葉の空間配置が不明瞭であることが示唆される。今後は加齢に伴い,また,学校教育等の環境的要因によって, 根元の広がりが現れる,実・葉・枝の位置関係が適切になる等,早期型の特徴は消失していくであろう。
(2) 男女差
 それぞれの指標の男女差についてχ2検定とFisherの直接法を用いて調べたところ,有意性が示されたのは「二線幹(幹に輪郭がある)」(χ2=14.32***),「幹上直」(χ2=13.63**),「幹,幹と付属の枝」(χ2=7.38**),「まっすぐな根元」(χ2=4.79*),「球形樹冠(輪郭が円のように閉じる)」(χ2=6.82**),「陰影手法の樹冠(輪郭線がなく内部が塗りつぶされる)」(p=.024*),「カール状樹冠(カールした髪のような動きがある)」(p=.051*),「小さい樹冠のある短くて太い幹上直」(χ2=6.74**)であった。「幹,幹と付属の枝」は女児より男児の方が多く,それ以外の指標は女児の方が多かった。「幹,幹と付属の枝」は未熟な表現で幹と樹冠へと分化するまでの移行過程であること,女児の方が二線幹が多いことを踏まえると,4~5歳の時点で女児の方がより成熟していることが示唆される。また,女児は男児に比べて輪郭が直線的に表現されること,樹冠が閉じた形が多く複雑に表現する傾向があることから,木の内部と外部の境界がより明確であり,自己と環境との区別が進んでいる様子がうかがわれる。