The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 1:30 PM - 3:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:30~14:30 偶数番号14:30~15:30

[PE09] なりたい親についての研究

完全主義との関係

櫻井登世子1, 櫻井茂男2 (1.法政大学, 2.筑波大学)

Keywords:なりたい親, 完全主義, 性差

問題と目的
 櫻井(2016)は女子大学生および男子大学生がどのような親になりたいと思っているか調査し,女子大学生のほうが子育てに対する思いが強く,従来のように家庭の役割分担として「子育て」は母親が担うものであると認識していることが示唆された。また,櫻井(2017)は「なりたい親」と内的要因の1つである「共感性」との関係について検討した。その結果,「なりたい親」と「共感性」との間には女子大学生にのみ関係性が見られ,「なりたい親」に及ぼす内的要因についても性差が見られた。本研究では「なりたい親」と内的要因としての「完全主義」に着目し,その関係性について検討する。

方  法
調査協力者:東京都内の大学に通う大学生232名(男子92名,女子140名)。
質問紙:「なりたい親」について,櫻井(2003)が作成した4因子構造からなる質問紙を使用した。質問紙は40項目からなっており,「全くそう思わない」から「非常にそう思う」までの7段階評定となっている。「完全主義」について,大谷・桜井(1995)が作成した3因子構造からなる質問紙を使用した。質問紙は45項目からなっており,「全くあてはまらない」から「非常にあてはまる」までの7段階評定となっている。
手続き:授業中に質問紙を配布し,学生の同意のもと集団で実施した。

結果と考察
 「なりたい親」についての質問紙は,支配,寛容,均衡,溺愛の4因子構造になっている。尚,櫻井(2003)では第3因子を「放任」と命名していたが,因子を構成する質問項目は,ワークライフバランスに関する内容であるため,本研究では「均衡」と命名した。
 「なりたい親」と「完全主義」との関係について男女をこみにした全体では,支配因子と自己志向的完全主義との間に有意な弱い正の相関が見られた(r=.31,p<.01)。性別に検討した結果,男子大学生にのみ「なりたい親」の支配因子と「完全主義」の3因子との間に有意な中程度の正の相関が見られた(自己志向的完全主義 r=.41,p<.01,他者志向的完全主義 r=.41,p<.01,社会規定的完全主義 r=.41,p<.01)。さらに男子大学生について専門領域ごとに検討した。その結果,「なりたい親」と「完全主義」との関係は国際文化を専門としている学生に顕著であり,「なりたい親」の4因子と「完全主義」の3因子のすべてにおいて有意な中程度以上の正の相関が見られた。なかでも「なりたい親」の支配因子と「完全主義」の3因子との間に有意な強い正の相関が見られた(自己志向的完全主義 r=.71,p<.01,他者志向的完全主義 r=.74,p<.01,社会規定的完全主義 r=.80,p<.01)。また,「なりたい親」の均衡因子と「完全主義」の自己志向的完全主義との間にも有意な強い正の相関が見られた(r=.80,p<.01)。
 本研究の結果は,「なりたい親」と「完全主義」との関係は男子大学生においてのみ顕著であることを示唆している。特に「なりたい親」の支配因子との関係が強く,「完全主義」傾向が強い男子学生は「子どもから尊敬され,目標にされたい」「子どもが自慢したくなるような親でありたい」「子どもには良い親と思われたい」という項目が表しているように,子どもから完全な親と認識されたいという思いが強いと考えられる。
 共感性に続き,「完全主義」という内的要因が「なりたい親」とどのような関係にあるのか明らかになり,それには性差があることも示唆された。子育てに対する姿勢・考え方にどのような要因が関係しているのか,更なる探求が求められる。