The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 1:30 PM - 3:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:30~14:30 偶数番号14:30~15:30

[PE14] 幼児教育番組における2次元と3次元の混合の実態

人間とアニメが会話する場面の発達的意義

村野井均1, 藤井とし子#2 (1.茨城大学, 2.茨城大学)

Keywords:テレビ理解, 映像認知, メディア・リテラシー

 テレビの画面は平面である。視聴者は平面を見ながら,そこに映っているものを立体と認識している。視聴者は,俳優の顔を見て,彫の深い顔だとか平らな顔だと判断し,また,殺人鬼が被害者の後ろから襲う場面も理解できる。つまり視聴者は,画面を3次元変換しながらテレビを見ているのである。
 学校では,2次元を3次元に読みとらせる課題は,「つみきかぞえ」(小学1年生,さんすう)で扱われている。児童は,それ以前に,2次元を3次元に変換する能力を身につけているのである。
 幼児に次元を意識化させるものとして,NHK教育テレビ(Eテレ)が考えられる。アニメ番組(2次元)と実写番組(3次元)という次元の切り替えが頻繁に生じる。それだけでなく,アニメと人間が会話する次元の混合が現れるためである。

目  的
 Eテレの幼児向け番組に次元の切り替えと次元の混合がどれくらい現れるか分析し,その特徴を調査する。

方  法
 2016年6月13日から30日の間の10日間,平日夕方4時から6時の「幼児・子どもゾーン」で放送された22タイトル(119番組),20時間を分析した。
 指標と定義は以下である。
「2次元」とは,アニメや絵本,紙芝居など2次元で構成されている番組やコーナーである。
「3次元」とは,スタジオやロケあるいは人形劇などの実写で構成されている番組やコーナーである。
「2次元へ3次元が混合する」とは,2次元のアニメや絵本などへ実写の人や着ぐるみが入ることである。
「3次元へ2次元が混合する」とは,逆に実写や着ぐるみへ2次元のアニメが入ることである。
 次元の切り替えは,2次元から3次元へ切り替わった時,あるいは3次元から2次元へ変わった時を1回と数えた。
次元の混合は,次元が混じった時を1回と数えた。次元が混じっているかどうかの判断は,1カットに2秒以上混合している時とした。一瞬しか混じらない場合もあるが,2秒以上続かないと視聴者には,認識できないと考えこの基準とした。

結果と考察
(1)次元の切り替えと混合の現れ方
 119番組に次元の切り替えは659回,次元の混合は278回現れた。両者を合計した次元の変化は937回あった。分析時間は20時間なため,次元の変化は1時間あたり平均46.9回生じていたことになる。
 その中で次元の混合は,278回と次元の変化全体の29.6%に現れていた。内訳は,2次元に3次元が混合することが123回(13.1%),3次元に2次元が混合することが155回(16.5%)であった。
 一般の番組では,放送中に次元の切り替えや次元の混合が生じることはめったにない。特異な映像表現をしているといえよう。
(2)切り替え・混合がある番組とない番組
 次元の切り替えや混合は,「幼児・子どもゾーン」のどの番組でも生じるわけではない。「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」,「ニャンちゅうワールド放送局ミニ」,「みいつけた!」,「にほんごであそぼ」など8タイトルに集中して生じていた。
 次元の切り替えは,8タイトルで538回あり,番組全体(659回)の81.6%を占めていた。次元の混合は251回あり,番組全体(278回)の90.3%を占めていた。
 「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」などの番組は,4歳児以上を視聴対象としている。つまり,次元の切り替えや次元の混合は,4歳児以上の幼児向け番組で集中的に現れるのである。
 Eテレは特異な番組作りをしていることが示された。Eテレの幼児向け番組が,次元に気づかせる役割をしていると考えられる。

引用文献
村野井 均, 藤井とし子, 2016, 「幼児向け番組におけるテレビを3次元に見る手がかりの分析」, 『茨城大学教育実践研究』35, 279-287.
村野井 均, 2016,「平らなテレビを立体に見る  -2次元の3次元変換」,『子どもはテレビをどう見ているか‐テレビ理解の心理学』, 第5章,勁草書房.
村野井 均,2014,「子どものテレビ視聴能力の発達-画面の3次元変換と教育-」,『茨城大学教育学部紀要』(教育総合)増刊号,茨城大学教育学部,379-388.