The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 1:30 PM - 3:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:30~14:30 偶数番号14:30~15:30

[PE25] 達成目標促進と授業実践型相互教授の効果(5)

児童のグループ内発話の事例解釈的分析から

町岳1, 橘春菜2, 中谷素之3 (1.静岡大学, 2.名古屋大学, 3.名古屋大学大学院)

Keywords:授業実践型相互教授, 達成目標, 発話の事例解釈的分析

問題と目的
 児童が学習場面においてどのような目標志向性をもつかは,課題の達成に重要な影響をもつ。町・橘・中谷(2016)は,2つの達成目標促進を加えた授業実践型相互教授(Reciprocal Teaching in the Classroom; 以下RTC)の,算数グループ学習への介入効果を,グループ内発話のカテゴリー分析により示した。本研究では,それに事例解釈的分析を加えることで,両群の学習の理解の深まりや思考深化の文脈を質的に検討する。

方  法
 対象と時期 都内公立小学校6年生A学級40名(男子23名,女子17名),B学級39名(男子21名,女18名)の,計79名(男子44名,女子35名)の児童を対象に,2015年9月に実施した。A学級を熟達目標促進型RTCを行う熟達目標群,B学級を遂行目標促進型RTCを行う遂行目標群とした。
授業デザイン 6年生の算数「拡大図と縮図」(8時間扱い)の単元で,4回RTC介入を行った。グループ学習は,約15分間の集団検討場面で取り入れ,説明役と質問役の役割を交替した。
達成目標介入 熟達目標群では,誤答モデルを示し,「〇〇さんが次に間違えないようにするためのアドバイスを考えよう」とした。遂行目標群では,「早く正確に答を求めよう」とした。
発話事例の抽出 両群よりランダムに抽出した各4グループから,ビデオカメラ・集音マイクで発話を採取し,学習課題達成度や質問紙調査など(町・橘・中谷, 2015, 2016)の結果を踏まえ,両群の特徴を表す発話プロセスを抽出した。

結果と考察
 グループ学習開始直後は,両群とも学習問題に対する各自の回答の「答え合わせ」を行なっていることが多かったが,その後熟達目標群では,なぜその答えになるかを重視した発話プロセスが多く見られた。例えばTable 1では,友達の最初の提案(61,63)が,それに対して表出された疑問(64,65)により深まり,「長さが決まっている辺の両端の角」という表現にたどり着く(74)。ここまで話し合いにあまり参加できなかった遠藤も,その提案に「覚えやすい」と賛同する(77)。これは説明や質問を繰り返す中で,グループ全体の思考が深化した発話プロセスといえる。一方遂行目標群では,答えの正誤を重視した発話プロセスが多く見られた。例えばTable 2では,質問(17)やグループのまとめを促す発話(21)が生成されても,それを起点として展開されるのは,単に回答の正誤を確認しあう発話プロセス(18~20, 22~25)であった。